========地域経済研究所 eメールマガジン======== VOL.11/2006.2.28(TUE)発行 ================================
■特別寄稿 福井,2005年12月豪雪の原因は? 2005年12月の福井における平均気温は2.6度(平年は5.8度)で,1897 年の観測開始以来最も低かった。12月の降雪量は,福井は150cmで,これは 史上3位の記録(1953年以降のデータ,1位は1980年の「56豪雪」)。降雪 と降雨量を合わせた12月降水量は,1位だった。県内では除雪中などに14人 が死亡するという,大災害となった。 原因は何か? 強い寒波の南下は,中国の南部を中心とする異常に強い 高気圧と北海道北東部のオホーツク海低気圧によって偏西風が蛇行し,日 本上空は強い北西風で覆われたためである。そのために,シベリア南部か ら日本にかけては異常低温となった。何故寒気が強かったか? 北極の寒 気が南下し易い気圧パターンだったとの意見がある(北極振動という)。 しかし,このパターンが何故卓越したのかは不明である。 偏西風を蛇行させた強い高気圧の原因は,ベンガル湾からフイリピンに かけての海水温が異常に高く,そのため激しい対流活動が10月から持続し, 中国の南部が対流の下降域となったことによる。 福井の豪雪は,日本海の影響が重要である。平均海水温は,11月は平年 より2−3度高く,12月は平年並となったが,寒気との温度差が大きく,そ のために蒸発は例年になく激しくなり,雪雲の発達を活発化した。雪質も 重く,例年より3倍程密度が大きいといわれた。12月13日から15日にかけて, 福井の降雪は激しかった。このときの衛星の雲画像は,白頭山(北朝鮮と 中国国境,標高2,700m)風下に続く雪雲の列は,福井直撃コースだった。 この効果が福井の降雪を一層強めた。 まとめれば,中国の南部付近の強い高気圧がなければ,すなわちベンガ ル湾域の熱帯海水温が高くなければ,福井に豪雪はなかったといえる。海 水温の高い原因は,長期的には地球温暖化によるが,短期的には温暖化に 加え「ラ・ニーニャ」の影響もあった。2004年の夏,台風上陸数が異常に 多かったのは,インドンネシア海域の海水温の上昇により,太平洋高気圧 が平年より強くなったことによる。一方,今回の冬の熱帯海水温の上昇も, 高気圧を強めて偏西風を大きく蛇行させて,日本へ大雪をもたらした。 気象庁によれば,2005年の世界の年平均気温は,1891年以降では1998年 に次いで2番目に高い値だった(3位が2003年と2002年,5位が2004年と2001 年)。最近の温暖化は加速しであり,熱帯海水温の異常な上昇も不思議で はない。 (学術教養センター 川平 浩二) このウィンドウを閉じる