========地域経済研究所 eメールマガジン========

  VOL.12/2006.3.31(FRI)発行

================================
■特集 「高齢者虐待防止法」成立と「介護保険法」改正

 2005年11月1日に「高齢者虐待防止法」が成立し、2006年4月1日から施行
される。これにより、それまで社会問題化していても、対応する窓口が確
定されず、保護・救済の体制が未整備だった高齢者虐待・放任に対応する
法的根拠のある体制ができた。同時に、介護保険法改正により2006年4月
から新たに設置される「地域包括支援センター」が、高齢者虐待・放任の
相談窓口となり、介護予防などのマネジメントと共に、高齢者の幅広い権
利擁護や生活支援に対応するしくみになった。
 高齢者虐待という言葉からは、身体的暴行を連想しがちであるが、言葉
の暴力や心理的冷遇、また経済的虐待・性的虐待も含まれる。食事を食べ
させてもらえない、医療や保健福祉サービスを受けさせてもらえないとい
う放任も該当する。年金・預貯金・不動産等の財産をめぐる経済的被害や
性的ハラスメントについても、早めの発見と通報が重要だ。これらの虐待・
放任に、秘密厳守で関係機関と連携しながら地域包括支援センターが対応
する。
 生命や身体に重大な危険が生じているおそれがある場合には、市町村は、
高齢者を特別養護老人ホーム等に一時保護や措置入所することもでき、立
ち入り調査も可能になった。警察も含めた関連する機関が連携して早期発
見・早期対応にあたるネットワーク体制もつくられることになっている。
 高齢者虐待・放任は、特に認知(痴呆)症の高齢者が被害に合うことが
多く、その加害者が家族であることも多い。しかし、その家族自体も介護
疲れやそれまでの人生や人間関係の軋轢から何らかの悩みを持っているこ
とが多い。したがって、介護の悩みや生活上の問題等も地域包括支援セン
ターにご相談いただくと、社会福祉士・保健師・ケアマネージャという保
健福祉の専門職がチームアプローチで対応する。
 各地域の地域包括支援センターがどこにあるかは、市町村や社会福祉協
議会にお問い合わせていただきたい。また、このような虐待・放任の被害
にあわないためには、高齢期になる前から、自らの生活をチェックし、自
立した生きがいある人生を築くことと心身の健康や社会性を保ち、認知症
予防や介護予防・生活習慣病予防に励むことをお勧めしたい。
                 
            (看護福祉学部社会福祉学科教授 大塩まゆみ)


         このウィンドウを閉じる