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 VOL.1 5 / 2 0 0 6. 6 .29 (THU) 発行

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■特集「景気回復」はいつまで続く(3つの懸念)

 6月13日、内閣府が発表した月例経済報告によると、原油価格の動向が
内外経済に与える影響等に留意する必要があるとしたうえで、景気の判断
基調を「景気は回復している」と4か月連続で据え置き、日本経済の景気
回復がいまだ底堅い事実を示した。
 思えば2002年2月から始まった今回の景気拡張局面は、今年5月で戦後2
番目の「バブル景気」(1986−91年)を抜き去り、11月には戦後最大、57
か月続いた「いざなぎ景気」(1865―70年)をも超えることになる。
確かに、各種の経済指標をみると、全体では企業収益の改善が続いている
ほか、設備投資の増加基調、個人消費も緩やかに増加。雇用情勢は一部に
厳しさが残るものの改善に広がりがみられ、輸出・生産も緩やかながら増
加傾向を示している。
 では、今回の景気回復はいったいいつまで続くのであろう。政府によれ
ば「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調で、悲観的材料は見
当たらない」としているが、実際には、現時点で以下の3つを懸念材料と
して挙げることができる。
  一つ目の懸念、それはやはり原油価格の動向であろう。1バレル70ドルを
超える原油価格の中で、日本のみならず世界的に堅調な足取りを示す要因
として、原油依存率の低下を指摘する向きもある。しかし、実際には企業
活動において少なからず負の影響をもたらしている事実を認識しなければ
ならない。例えば、国内で大半を占める中小企業の売上高変動比率がこの
ところ上昇基調にあり、このことは中小企業において原油高における原材
料アップ等を売上に転嫁できず、収益を圧迫していることを示唆している。
つまり、売上が伸びている時は良いが、それが一端止まると一気に落ち込
むリスクを秘めているのである。
 二つ目は、今回の景気拡張期間が、わが国の平均を大きく上回っている
こと。戦後、わが国の景気循環をみると、「バブル景気」や「いざなぎ景
気」のように拡張期間が50か月を超える循環もみられたが、これまで経験
した13回の景気循環の拡張期間が平均33か月であることを考慮すると、今
回の景気拡張局面も“もう、そろそろ終わりでは…”という思いも浮上す
る。
 三つ目が、昨今の株安傾向をどうみるか。株価は、景気を占う先行指標
であり、一般に景気の6−8か月先を示すといわれる。と考えれば、これか
ら最短半年後の年内いっぱいでターニングポイントを迎える可能性も意識
する必要がある。
 いずれにせよ、日本経済は今すこぶる健康であることに間違いない。こ
の景気回復局面が、永久に続いてくれることを願う次第である。
                   (地域経済研究所・南保 勝)


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