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 VOL.1 6 / 2 0 0 6. 7 .31 (MON) 発行

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■特集 グローバル・ガバナンスの新しい形態

 グローバル・ガバナンスとは、現代政治用語辞典(http://pol.cside4.
jp/)によると「国家・組織・個人などの多様な価値観の中で、利害調整の
枠組みを構築することによって、国際社会の統治を進めるという考え方。」
とある。つまり、「世界規模で物事を決定し、実施する仕組み」というこ
とができる。
 インターネットは、世界中のコンピュータが決められたルールに従って
接続されているコンピュータネットワークである。インターネットにおけ
る接続のためのルールは、IETF(Internet Engineering Task Force)と
いう標準技術策定のための組織が、RFC(Request for Comments)という
技術標準文書を作成し決定している。IETFは個人のボランティアベースで、
RFCを作成しているが、 この決定プロセスが、グローバル・ガバナンスの
新しい形態として注目されている。
 従来、世界的な技術標準の決め方には、デジュール標準(de jure 
standard)と、デファクト標準(de facto standard)の2種類があった。
デジュール標準は、JIS規格やISO規格がその例であるが、公的な標準化機
関により決められるものである。一方、デファクト標準は、VHSやWindows
がその例であるが、企業間競争の結果、市場で高いシェアを獲得すること
により決まるものである。しかし、IETFによる標準化は、このどちらにも
当てはまらない。IETFの標準化方法論を象徴するものは、米国MITのD.ク
ラークが提唱した「我々は王様も大統領も投票も拒否する。信じるものは
ラフコンセンサスとランニングコードだ」という考え方である。IETFにお
ける議論は、利害調整のために、決まった誰か(王様や大統領)が決する
わけでもなく、投票も行なわない。では、どうするかというと、関係する
ほとんどの人の合意(ラフコンセンサス)を取り付け、実際に動くプログ
ラム(ランニングコード)を作成することにより,利害調整を行なう、と
いう方式である.このために、メーリングリストなどを使い、誰でも参加
しうるところで、オープンかつ徹底的な議論を実施する。これは、IETFに
限らず、インターネットを現在まで構築してきた技術者が集まったインタ
ーネットコミュニティの意思 決定の方法論でもある。 
 グロコムの公文俊平は、IETFによるこのような標準化プロセスをデコン
センスス標準(合意による標準:de consensus standard)と呼ぶことを
提唱している。もちろん、この方法論を、グローバル・ガバナンスが必要
な他の分野に、直ちに適用するのは難しい場合も多いと思われるが、一つ
の可能性としての未来を示しているのかもしれない。
                      
                    (情報センター・山川 修)


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