========地域経済研究所 eメールマガジン========

 VOL.24 / 2 0 0 7. 4 .2 (MAN) 発行

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▽「雪の経済学」に向けて

  この 3月末日をもって、11年間お世話になった福井県立大学を退職す
ることになりました。同時に設立当初から関与させていただいた地域経
済研究所ともお別れです。研究所や地域の皆さんには大してお役に立て
なかったかと懸念しますが、私にとっては愛着の深い思い出を残させて
いただきました。お別れに当たって一言お礼とご挨拶をさせていただき
たいと思います。
 私の生まれ育ったところは九州で、職場も東京や外国など、ほとんど
雪の降らない地域でした。福井に着任して初めて雪に遭遇することにな
りました。もちろん、ニュースや映画などを通じて雪に関する知識はい
くらかは持っていましたが、知識は所詮知識に過ぎず、実感は伴なって
いませんでした。福井でも近年は雪が少なくなったと聞きますが、それ
でも雪のことを考えるようになりました。
 それにしても、今年の冬は、ここ10年のうちでも異例です。平地に雪
が降ったのは 2日だけ(この執筆時点現在)。雪がないことによって、
雪がもたらす生活上の悲喜劇を考えるきっかけになりました。一体、雪
は私たちの生活にどんな影響をもたらすのでしょうか。
 まず、雪による被害があります。雪は交通に支障をもたらし、鉄道や
航空がストップすることがあります。個人的に最も苦手だったのは毎日
の車の運転です。除雪作業は不可欠になり、それに要する費用は莫大。
道路等の融雪装置の設置・放水にもカネがかかります。交通事故の処理
も加わります。冬タイヤの装着はタイヤメーカーにとっては福音ですが
ドライバーには出費がかさみます。住宅の雪下ろしや樹木の雪つりにも
労働力や経費がかかります。冬の太平洋側は乾燥した日々が続き、晴天
が続くのに比べれば、人的・金銭的な負担は大きい。太平洋側に住む人
々には「太陽税」でも納めてもらいたいと思うくらいです。もっとも、
国からの地方交付金の算出には、このことも考慮されているらしいです
が。
 一方で、雪は恵みにもなります。雪景色はすばらしいし、雪つりも風
雅です。除雪作業で相当な収入を確保している人も多いでしょう。雪が
ちらつくと「お金が天から降ってくる」と喜ぶ人もいるそうで。スキー
場の経営者や一部の観光業者にも雪は天の恵みでしょう。何よりも、雪
は粘り強い人間を育ててくれるのかも知れません。
 プラス・マイナスの効果は他にも多々あるでしょうが、全体としての
バランスはどうなのでしょうか。ここはひとつ「雪の経済学」を立ち上
げて、その効果を検証し、国民全体で雪による損失を負担し、恵みを分
かち合う仕組を考えてみてはどうでしょうか。雪国に生まれ育った人々
には雪は活力の源なのかもしれませんが、私などには雪は「やっかいも
の」の側面ばかりが感じられます。雪のない南国と雪に閉ざされる北国
の経済を比較してみることも一案、しかし福井のような中間地帯にある
地域の問題が複雑だろうと思うことです。

                                                      (竹内規浩)   


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