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 VOL.25 / 2 0 0 7. 4 .26 (THU) 発行

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▽ 広がる地域間格差と中小企業

  内閣府が 4月16日公表した月例経済報告によると国内景気は「生産の一
部に弱さがみられるものの、回復している」とし、2002年 1月をボトムに
始まった戦後最長の景気拡張局面がいまだ続いていることを裏付ける結果
となっている。 
 ただ、今回の景気回復を過去のそれと比較すると、幾つかの特徴を持ち
合わせている。例えば、これまでの最長記録(57か月)を保持する「いざ
なぎ景気」と比べて成長率が極めて低いことや、賃金の増加幅が小さく家
計部門で回復の実感に乏しいこと、さらに労働人口の減少の中での景気回
復であることなど枚挙に暇がない。そして、最大の特徴を挙げるとすれば、
それは各地域間で回復のテンポに格差が広がっていることであろう。
  その事実として、地域別有効求人倍率の推移をみると、今回の景気回復
が始まった2002年当時(全国:0.54倍)、最高で東海地域の0.74倍に対し、
最低が九州・沖縄地域の0.41倍と、その格差は0.33ポイントであったが、
2006年10月(全国:1.06倍)には最高の東海地域 1.57 倍から最低の北海
道地域0.61倍まで、その格差は 0.96 ポイントと約 3倍にまで広がってい
る。また、日本銀行の「地域経済報告」(2007年 1月)をみても地域間での
格差は明白である。ちなみに、同報告から全国 9地域別に景況感(業況判
断DI)をみると、3 大都市圏が存する関東・甲信越、東海、近畿の上位に
対し、北陸、九州・沖縄、中国の中位、北海道、東北、四国の下位が明ら
かなものとなっている。
  では、このような地域格差はなぜ起きたのか、これには様々な要因が考
えられる。その背景を挙げれば、第一に、各地域内を構成する企業規模格
差の問題が挙げられよう。例えば、全国的に大企業立地が多い地域、或い
は域内で相対的に大企業立地ウエイトの高い地域で景況感が良好であるの
に対し、域内で中小企業のウエイトが高い地域では不良といった現実があ
ること。第二は、各地域における産業構造の違いからくる景況感の優劣と
いった側面も見逃せない。今回の地域格差を産業構造面から眺めてみると、
景気の回復テンポが遅い地域は、総じて産業活動から生まれる付加価値生
産性が低い地域であり、産業別では農林水産業、建設業での依存度が高く、
製造業の依存度が比較的低い地域であること。これとは逆に、景気の回復
テンポが速い地域は、製造業の業種構成から言えば、現在元気印のIT関連、
デジタル関連等電気機械や自動車を代表とする輸送機械などのウエイトが
高い地域であることが指摘できる。第三の背景は各地域における産業(工
場)立地の動向も地域経済に影響を与えている。事実、産業(工場)立地
の盛んな地域は現在景況感の最も良い地域(関東・甲信越)であり、以下、
景況感の中位地域(北陸、九州・沖縄、中国)、下位(北海道、東北、四
国)地域になるにつれ産業(工場)立地が少なく、こうした事実は産業立
地と地域経済との相関関係が深いことを裏付けている。
  そのほか地域格差を生む背景には、開廃業率、地域の需要、域内企業の
取引構造、地域のイノベーション、質の高い労働力の保有など様々な要因
が考えられるが、こうした地域格差の影響を真正面か受けるのが大多数を
占める中小企業であり、今後は中小企業の経営スタンスがこれまで以上に
問われる時代を向かえるものと思われる。

                               南保


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