======地域経済研究所 eメールマガジン===========

 VOL.27 / 2 0 0 7. 6 .29(FRI) 発行

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▽ 「知的技術資産と主観的視点の経営研究」


  4月から兼担教員になりました徳前です。よろしくお願いします。
会計が専門ですが、会計を「企業や組織の中に、光を当て、実態を把握し、
統制や管理に活用するためのシステム」と、考えています。つまり、組織
の中が「見えている」管理者は問題がありませんが、「見えにくくなって
いる」管理者に「よく見えるように」手助けすることを考えています。そ
こでの組織の会計の動因が研究テーマです。
 現在は、「知的技術資産のマネジメント」の研究プロジェクトを立ち上
げています。
「誰が作るのか」、「何を作るのか」という特許権や実用新案権といった
知的財産権が問題となっていますが、我々はそれを進めて「どのように作
るのか」という知的技術資産に着目しています。「誰が、何を」以外に、
「どのように作るのか」という知的技術資産については従来、あまり重視
されておらず、「不可視」とされてきました。しかし、ご存知のように定
式化された技術だけでは、実践的な生産も管理も成り立ちません。自社の
担当者すらも気づきにくい「見えにくい」非定式の技術や管理方法こそが、
企業価値増大の鍵を握っているといえます。つまり、「知的技術資産のマ
ネジメント」は、自社においても十分に認識されていない「強み」を再認識
することが目的です。何しろ、「見えないもの」は管理も保全もできませ
んから。
 この知的技術資産を十分に認識し、管理に活用しなかったために、優れ
た技能保持者の退職とともに「自社の強み」を失った企業も多いでしょう。
技術に強い管理者や、経営に強い技術者の存在は、それだけでも強みとい
えるでしょう。
 加えて、会計数値など主観性から独立した客観的・分析的データによる
「客観的視点」だけではなく、自ら現場に出向き、実際の行動を直に観察
し、現場の担当者と会話しながら、その本質を自分の言葉で概念化する「
主観的な視点」も研究プロジェクトでは重視しています。例えば、知識経
営の第一人者の野中郁次郎氏は、「バッターボックスに立った視点から投
手の投げる球を主観的に推論して打つイチロー」と、「自己の打撃フォー
ムのあり方を分析的に反省するもう一人のイチロー」が、両方の視点をス
パイラルに連動させながら、理想の方を磨き続けていると指摘しています。
こうした客観的視点と主観的視点をダイナミックに連動させ綜合していく
ための、切り口として知的技術資産マネジメントを考えています。
 福井の企業や組織の皆さんと交流することで、強みの再認識を通じて、
地域活性化のお手伝いができれば幸いです。

             (地域経済研究所 兼担教員 徳前 元信)


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