======地域経済研究所 eメールマガジン===========

 VOL.29 / 2 0 0 7. 8 .31(FRI) 発行

=================================

▽「地域資源」とは
  
 近年、「地域資源」の活用が、地域づくりに向けた取り組みだけでなく、
産業・企業においても新たな差別化戦略として注目を集めている。その一
例を挙げると、今年に入り、経済産業省では中小企業地域資源活用プログ
ラムを創設し、地域の強みである地域資源(産地の技術、地域の農林水産
品、観光資源)を活かした中小企業の新商品・新サービスの開発・市場化
を総合的に支援する施策が講じられた。具体的には、本プログラムのベー
スとなる中小企業地域資源活用促進法の基本方針に基づき都道府県が基本
構想を策定、そこで指定された地域資源を活用して進める中小企業の事業
計画を国が認定するとともに、認定事業に対して補助金や各種アドバイス
等の支援措置を行うというものである。その狙いは、地域の中小企業が「
地域資源」を活用した新たなビジネスモデルを構築することで他地域企業
との差別化につながるとともに、こうした中小企業が地域に数多く発生す
ることで相乗効果が生まれ、地域経済が活性化することにある。
  このように地域づくりの方策としてだけでなく産業・企業の戦略として
も「地域資源」が注目されている背景としては、多くの論者により数多く
の理由付けがなされている。
  その一つを述べれば、経済のグローバル化・ボーダレス化によって、市
場での競争が重視されるようになって、効率化、画一化した商品が社会に
あふれる中、どこでも作れるもの、どこでもあるようなものに対するアン
チテーゼとして地域固有のもの、個性を持った商品やサービスに対して新
たな価値が求められるようになったことが挙げられよう。市場が成熟化す
るにつれ、消費者は既存の商品・サービスでは満足しない。そのため、企
業は地域固有の財・サービスに新たな価値を付加し、我が社の差別化戦略
として打ち出すことが求められるようになったのである。
  とは言うものの、ここでいう「地域資源」とはいったいどのようなもの
なのであろうか。この件に関し、明海大学の森巖夫教授は、こんなことを
言っている。「地域資源とは、ナンバーワンではなくオンリーワン」だと。
つまり「日本一ではなく、日本唯一」。実に、分かりやすい。だから、全
国どこにでもあるものは、「地域資源」とは呼ばない。「自然、景観、歴
史・文化遺産、特産品のようにその所在が地域に限定されるか、利活用が
特定地域と結び付き地域個性の形成に役立っている場合」に限られる。地
域固有の資源だから、あえて地域資源というらしい。また、この森教授に
よれば、「地域資源とは単に有形の物的な素材ばかりでなく、気象、風景、
民俗、芸能、伝説、歴史、人物といった無形ないし人文的な要素」をも含
んでいるという。ということは、いかなる地域にもなんらかの地域資源が
包蔵されていることを意味する。換言すれば、「地域資源」をもたない地
域はないということである。そのため、企業は「地域資源」に立脚する限
り、全国どこでもビジネスとして成功の可能性を秘めていることになる。
ただし、森教授、最後にこんなことを付け加えた。「地域資源をビジネス
に活かしうるか否かは、これに取り組む主体の能力いかんにかかっている。
どんなに美しい玉でも、磨かなければ光らない、反対に、砂を金に化すこ
ともできる、」と。何事も、それを扱う“人が要”ということであろう。

                           (南保 勝)
									  
         このウィンドウを閉じる