========地域経済研究所 eメールマガジン=========

 VOL.31 / 2 0 0 7. 11 .1 (THU) 発行

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▽「雪の日の思い出」

  
  昨年より兼担教員となっております桑原美香と申します。宜しくお願い
いたします。間もなく福井で 3度目の冬を迎えようとしておりますが、長
いこと瀬戸内気候で育ってきたため、初年度の豪雪には驚かされました。
多分、これまでの人生で経験した総降雪量と平成17年度に福井で経験した
降雪量とが等しいのではないかと思っております。
 ただ、この豪雪の経験は研究対象である「地域」の視点を大きく変える
こととなりました。一晩で降り積もった雪のために億単位の除雪費用がか
かること、雪で閉ざされた地域にはヘリコプターで生活物資を運んでいる
ことや福井の道路からは雪を溶かす水が出てくること、またそれらの費用。
全てに驚きました。これまでは、国の誘導的な政策や税財政システムや依
存体質の強い地域が、ムダと借金を増加させてきたのだと考えていました。
また、目的が変容しつつある地方交付税制度に対しても懐疑的になってお
り、補正係数も科学的客観性に欠けるのではないかと考えていました。し
かし南北に長い日本においては、多様な地形・気候を持つ地域間の公平性
を考慮すべきかもしれません。
 私の郷土の詩人、金子みすずの詩「私と小鳥と鈴と」には、 「みんなち
がって、みんないい」という一節があります。地方分権型社会においては、
隣町の美術館や温水プールと同じものを自分の街に作る必要はないでしょ
う。むしろこれからは、地域に埋もれている魅力を掘り起こし、磨き続け
ることが重要なのではないでしょうか。隠れた観光地や産業・産品のブラ
ンド力だけではなく、地域住民の声や世代を超えたマンパワー、これまで
に建設・整備された社会資本も魅力の要素だと思います。「どうせ…」、
「所詮…」は禁句です。まずは、魅力資産を棚卸ししてみてはどうでしょ
うか。ただし、これは官公庁だけの仕事ではないと思います。これまでの
地方分権改革では、国と地方の構図を改める団体自治の拡充が企図されて
きました。これからの地方分権改革では、官と民の構図を改める住民自治
の拡充が進みます。多様な主体が街づくりに参加し協働することで、「す
みよい福井」が「すみたい福井」に変わるのではないでしょうか。それぞ
れが、まずは自分にできることから始めてみればよいと思います。たまに
は公共交通機関で駅前に行き歩いてみること、県外の友人に福井自慢をす
ること、自分のブログに毎日ひとつ福井の再発見を記すことなども、棚卸
し作業に繋がるのではないでしょうか。
  3年前の深夜、白に埋め尽くされた無音の世界を帰宅している時、月明
かりに照らされていた雪の色は神秘的なトルマリンブルーでした。雪の季
節が、ちょっぴり待ち遠しくなってきました。

            (福井県立大学 経済学部 講師 桑原 美香)
                    )

									  
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