========地域経済研究所 eメールマガジン========= VOL.34 / 2 0 0 8. 1 .31 (THU) 発行 ================================= ▽ 食品・外食業界をおそう大波、偽装・値上げ・M&A 昨年2007年の食品・外食業界は、偽装・値上げ・ M&Aの大波におそわれ 続けた1年間であった。そういえば世相を表す漢字も「偽」だった。例年 12月に清水寺の貫首が揮毫して発表される、あの漢字一文字である。その 理由はご存じの食品偽装の相次ぐ発覚であることは言うまでもない。BS Eにかかわる産地偽装や雪印乳業などの事件・事故が多発してから小康状 態に入ったかにみえたが、昨年は再び多発してしまった。このような事件 の露呈により、残念ながら今回も氷山の一角にすぎないのではないかとい う疑念をもつ人がさらに増えてしまったのではないかと思われる。 昨年の食品の偽装は、不二家(1月)、ミートホープ(6月)、白い恋 人(8月)、赤福(10月)、船場吉兆(10月)などと連続した。商品に表 示された原材料、消費期限などに違法性があり、その事実は企業内部の者 にしかわかりにくいから、ほとんどが内部告発によって長年にわたって積 み重ねられた偽装の実態が明らかになっている。当該企業にとっては突然 に存続の危機に立つことになり従業員も大変だが、死者や病人が出ていな いのもこの問題の特徴であって食品にかかわる事件としては不幸中の幸い であろう。食品の表示や衛生管理についてルールを守らなければ企業が大 きな打撃を受けることは今となれば周知されているはずである。それでも、 これだけ多くの問題が発覚することから、それだけ根深いと言える。 赤福の一件を例にとってみよう。伊勢の地域名産品として知らぬものは ない赤福は、消費期限後の売れ残りを頻繁に回収していたが、実際には一 部は消費期限を書き換えられて再出荷され、一部は「あん」と「もち」に 分離されて冷凍保管され再加工されていたということである。再利用・再 加工すること自体は悪いことではない。消費期限切れでも直ちに腐敗する わけではないし、産地偽装もただちに健康被害をもたらすものではない。 また期限切れの商品を廃棄処分することは、コストがかかり実にもったい ない資源の浪費であることも事実である。しかし、だからと言って責任者 がこの問題を甘くみて、ルール違反の行為を正当化できるわけではないこ とは肝に銘ずるべきであろう。 偽装とともに昨年は値上げやM&Aも増えた。食品・外食業界だけに増 えたわけではないが、ついにこの業界にも波及したということだろう。国 際的な穀物相場の高騰による原材料価格の上昇が製品値上げを余儀なくし、 安定した業界だったはずの食品業界にもM&Aの対象になる例が増えてい るようにみえる。しかも友好的なM&Aばかりではなくて敵対的なM&A もみられるようになった。このような時代の潮流の中で個別の企業はいか にして時代を乗り切るのか、たくましく慎重にこの大波をのりこえてほし いものである。 (生物資源学部教授 加藤辰夫) このウィンドウを閉じる