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     VOL.37/ 2 0 0 8. 4 .30 (WED) 発行

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 ▽最近の中国情勢

 今年 1月25日、財務省が発表した 2007年の貿易統計速報(通関ベース)
によると、我が国の対世界向け輸出額は、前年度比 11.6%増の83兆94百億
円、輸入額が同8.6%増の73兆11百億円で、輸出・輸入ともに過去最高を記
録した。なかでも対中貿易(香港を除く)の伸びがすさまじく、昨年の輸
入実績を除いて、2000年以降、輸出・輸入ともに二桁増が続いている。こ
の結果、2007年の日中間貿易総額は27兆87百億円となり、これまでトップ
だった米国を始めて抜き去り、中国が我が国最大の貿易相手国に浮上して
いる。この背景には、高成長を持続する中国が今年の北京オリンピックを
控えて需要を増加していることに加え、今もなお続く日本企業の中国進出
とそれに伴う我が国からの部品輸出、我が国への持ち帰り輸入が続いてい
るためである。思えば1985年、あのプラザ合意以降、急激な円高が日本企
業の海外シフトを促し、北陸 3県の域内企業でみても、約 300社が世界の
650 地域あまりに進出し、現在、その半数以上が中国に集中していると言
われている。
 ただ、最近の中国情勢を考慮すると、こうした日本企業の中国進出もこ
こに来て大きな転換点に差し掛かったように思われる。その理由は、中国
でこれまで外資導入のために行ってきた優遇政策が撤廃されつつあること
と、最低賃金制の導入や労働契約法の施行など労働者保護政策が打ち出さ
れているためである。例えば、これまで外資系企業に適用していた優遇税
率が撤廃されたこと。具体的には、中国地場企業で実質 33%、優遇策を受
けていた外資系企業で 15〜24%と異なっていた企業所得税率(法人税)を
一本化し、内外の企業を問わず一律25%に統一したこと。さらに、2免 3減
半(黒字化後2年間は企業所得税を全額免除、その後3年間は半減)の優遇
措置も撤廃したほか輸出増値税還付率の引き下げなど、これまで外資系企
業に与えていた税制面での優遇政策の多くが撤廃された。ただし、ハイテ
クや省エネなど、特定の外資企業に対しては、逆に優遇措置を拡大してい
る。
 こうした中国の外資に対する優遇政策撤廃の動きから読み取れることは、
第一に、前述した特定分野の外資には優遇政策が続けられることからも分
かるように、中国が既に誘導した産業分野に代わって、今後必要度が増す
分野、足りない分野を誘導しようとする選別政策の段階に入ったこと。第
二に、中央政府と地方政府の外資導入政策に対する温度差を利用し、いま
だ経済的に遅れをとる内陸部へ外資誘導を図っていること等がうかがえる。
 中国は、1978年の改革開放以来、これまで積極的な外資導入策を展開し、
日本企業もこれに乗り中国進出を進めた。しかし、今回の政策転換により、
これまで日本企業が目指したローコスト戦略のための中国進出というメリ
ットは近い将来薄らいでいくことは間違いない。

                (地域経済研究所准教授 南保 勝)




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