========地域経済研究所 eメールマガジン========= VOL.40/ 2 0 0 8. 7 .31 (THU) 発行 ================================= ▽中心市街地活性化基本計画認定都市の動向 新しい「まちづくり三法」の一つである中心市街地活性化法に基づく「 中心市街地活性化基本計画」が7月9日に22都市(地区)が内閣府で認定され、 全国で54の基本計画が認定された。福井県ではすでに福井市、越前市が認 定を受けており、今回大野市の認定で3市になった。北陸3県では最も多く なった。第1号として 2007年2月8日に富山市と青森市の基本計画が認定さ れ 1年半経過した。果たして認定を受けた都市の中心市街地は活性化でき ているのであろうか。基本計画の中の数値目標は認定後 2年経ってから検 証が始まるので、まだその評価は早いが、認定を受けた各都市は中心市街 地の活性化は計画どおりできるのであろうか。 全国で最も早く認定され、注目されている同じ北陸の富山市について中 心市街地の状況に関する調査結果を紹介しておく。富山商工会議所では、 2008年 4月に中心市街地の事業所の経営動向について調査結果について発 表した 1。客数や売り上げがどのくらい増えたか、またそのときの販売促 進は何をしたかという結果である。 全体で客数が「増えた」2 とする回 答は12.4%であるのに対して、「減った」とする回答は39.9%で「増えた」 事業所の 3倍ほどにもなっている。商店街別に見ると「総曲輪」商店街の 「増えた」が38.7%で、「減った」とする回答が16.2%である。それ以外の 商店街ではいずれも「減った」という割合が高い。また、業態別では「小 売店」よりも「飲食店」の減少が大きい。 売上高についてもほぼ同様の傾向にあり、「総曲輪フェリオ」の効果は 総曲輪通りに集中していて、広がりが少なかったという結果である。ただ、 「総曲輪フェリオ」に開業に際して何らかの販売促進を実施した店と何も しなかった店では売上高に増減に違いがあった。「10%以上増えた」「 5 〜10%増えた」と回答した事業所は、明らかに販売促進を実施したところ が多く、逆に「10%以上減った」回答した事業所は販売促進しなかったと いう割合が、販売促進を実施した事業所の約 2倍である。富山市の中心市 街地といえども環境変化に対してどのような活動をしたかということに影 響されたといえる。 中心市街地活性化のための重視している活性化事業である「街なか感謝 デー」は、市民にほぼ認知され、定着したとみられる。「街なか感謝デー」 事業は「街なか感謝デー実行委員会」が実施し、年間 5回実施している。 おもな内容は中心市街地内の11カ所の駐車場の無料開放である。実施始め た当時は普段よりも 1.5倍くらいの集客増であったが、最近は、集客数自 体が比較的高水準を維持し、発足当時よりも差が小さい。効果が持続され、 固定的に利用する顧客に利用されているといえよう。 また、北陸銀行の全面支援で、落語家立川志の輔氏による落語、演芸の 常設小屋「てるてる亭」が中央通りに6月7日にオープンした。国等の支援 でなく自主財源による開業であるが、新たなる集客、話題づくりに大きな 効果が期待される。成果を期待したい。 消費者購買動向調査報告書 3 によると、富山商業の商圏人口は726,756 人である。その調査では全品目の購買による流入人口で見ている。 1次商 圏(流入比率30%以上)471,604人、第2次商圏(流入比率10%以上30%未 満)123,264人、第3次商圏(流入比率5%以上10%未満)131,888人、合計 で726,756人である。中心市街地活性化基本計画が第1号で認定され、2007 年に開業した新「大和」が中核施設である「総曲輪フェリオ」が開業した あとどのように変化したかは調査がない。富山の中心市街地商業がどのく らいの集客力を持ったかについて今後の調査を待つことになる。 福井県においても福井市をはじめとする基本計画の認定を受けた越前市、 大野市についてのまちづくりはこれから正念場を迎えることになる。 (地域経済研究所准教授 小川 雅人) 1 富山商工会議所(2008)『中心市街地における最近の状況に関する調査結果』調 査時期は「総曲輪フェリオ」が開業して半年ほど経った2008年4月9日〜18日で ある。対象は、中央通り、総曲輪通り、西町、上本町、太田口通り、千石町通 りの中心市街地内の6商店街の小売店、飲食店で回答数は178である。 2 「増えた」とする回答は「 5〜10%増えた」と「10%以上増えた」とする回答 の合計である。「減った」とする回答は「 5〜10%減った」と「10%以上減った」 とする回答の合計である。 3 富山商工会議所(2002)『平成14年度 消費者購買動向調査報告書』消費者を総 合的に調査する「消費動向調査」はこの調査を最後に実施していない。この調 査以降はテーマや消費者層を絞った調査を実施している。 従って商圏調査は 2002年調査によるしかない。 このウィンドウを閉じる