========地域経済研究所 eメールマガジン=========

     VOL.43/ 2 0 0 8.10 .31 (FRI) 発行

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            リスクキャピタルの視点
       〜米国の金融危機、となりの芝生は青い!?〜


 サブプライムローンに端を発した米国金融危機は、証券会社リーマンブ
ラザーズの経営破たん、保険持株会社 AIGの巨額損失を引き起こした。金
融市場は世界規模の混乱に陥り、金利の協調引き下げや新たな資本注入が
行われた。しかしながら株価は回復の兆しを見せず、今や資産の時価会計
の凍結にまで論議が及んでいる。
 この現象は我々の家計に置き換えると理解が早い。多額の住宅ローンを
組み、退職金を投資信託に注ぎ込む。結果、不動産の価値は下がり、虎の
子の退職金も目減りした。さて、どうするか?それは自己資本を投入する
しかない。自己資本が足りなければ家計は破たんする。
 そもそも高額な住宅ローンを組み、なけなしの退職金を投資信託に注ぎ
込む動機は何であろうか。それは“住宅価格は必ず値上がりし、投資信託
は必ず利益を生み出す”という単なる思い込みである。そこには当然リス
クが伴う。
 リスクキャピタル(Risk Capital)とは文字通り“リスクに備える資本”
のことであるが、その意味するところは“キャッシュ以外の資産はすべて
リスクがある”ということである。

 金融の自由化は世界的な富の分散をもたらすと同時にリスクを拡散した。
後進国の経済発展により、今や銀座は外国人観光客がブランド製品を買い
漁る市場になっている。他方これまで銀座には無縁であった若者目当てに
焼鳥屋やラーメン屋が並んでいる。しかし今回の金融危機を契機に往年の
落ち着きを取り戻す日はそう遠くない。
 となりの芝生は青い。しかし自分の庭に“より青い芝生”を敷く必要は
ない。キャッシュがなければそのままにしておけばよいだけである。個人
の価値観は多種多様であり、人の真似をすることはない。自分にとって本
当に価値のあるものを見つけ、リスクに備える資本の範囲内で必要な投資
を行うことが肝要である。これは家計も企業も同じことが言える。



                 (地域経済研究所准教授 岩瀬泰弘)



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