========地域経済研究所 eメールマガジン=========

     VOL.44/ 2 0 0 8.11 .28 (FRI) 発行

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 ▽今後の日本経済 −いつまで続く国内不況−


 最近の日本経済を概観すると、2002年 1月をボトムに始まった戦後最大
の景気拡張局面も米国のマネーゲームのつけが日本の実体経済に悪影響を
及ぼす形で終焉をむかえた。今後、日本経済は円高、株安の中で本格的な
不況期に突入しようとしている。
 ちなみに、実体経済に目を向けると、企業部門では、これまでの資源価
格高騰によるマイナス影響が山場を越えつつあるものの、内外需の減少に
よるマイナス影響がさらに強まっていることから、業況はさらに悪化する
との見方が強い。すなわち、資源価格高騰の一巡や価格転嫁の進展により
企業の収益低下に歯止めがかかる一方で、 内外市場の冷え込みが深刻化。
とりわけ欧米景気の減速を受けて輸出が振るわず、業況悪化につながって
いる。また、家計部門でも、雇用者所得の下振れ、人件費削減の動きが強
まる中、消費者物価の上昇による支出面での負担増がさらに顕在化し、消
費マインドの冷え込みに拍車をかけている。その結果、国内景気は、全体
的に弱気が支配している。
 では、今回の不況はいったい何時まで続くのであろう。この件に関して
は多くのエコノミストの間で様々な見解がみられるものの、大きく分けて
以下の2つの見方が有力である。
 第一の見方は、資源価格の動向とストック調整の深度、さらに関係深ま
るアジア諸国の発展などから判断した楽観論である。具体的には、@今回
の景気後退は、その要因の 1つとして、原油価格の高騰をはじめとする資
源価格の高騰によりもたらされたものだが、現在、その圧力が弱まってい
ること、A現在でも高水準にある設備稼働率や設備過剰感の低さからみて、
これまで内需を牽引してきた設備投資がそう大きくは落ち込まないと予想
されること、B中国をはじめとする新興国経済が世界経済での存在感を増
している途上にあって、中長期的な期待成長率が急激に低下する可能性が
少ないことー等から、 今回の後退局面の長さが平均的なものにとどまり、
2009年の年央以降持ち直すという見方である。そして、第二の見方は、言
うまでも無く米国発の金融不安の趨勢によっては世界経済に予想以上のダ
メージを与え、不況が長期化するという見方の悲観論である。
 いずれにせよ米国発の金融危機を決して甘くは見られないが、希望とし
ては前者(楽観論)のシナリオに期待したいところである。

                (地域経済研究所准教授 南保 勝)



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