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     VOL.45/ 2 0 0 8.12 .26 (FRI) 発行

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 ▽女性の労働力率と合計特殊出生率


 福井県は女性がよく働くことで知られている。女性の労働力人口比率53.1
%、女性の月間平均実労働時間177時間、共働き世帯率 39.1%は、いずれも全
国第 1位である。勤労者世帯における1世帯あたりの実収入(623,2千円で全
国第4位)や 1世帯あたりの貯蓄現残高(16,135千円で全国第1位)に示され
る「豊かさ」は女性就労の成果であるといえる。
 合計特殊出生率(女性が一生の間に生む子どもの数)では、平成17年に全
国で唯一前年を上回り、順位でも沖縄に次いで 2位となり注目を集めたこと
が記憶に新しい。福井県は合計特殊出生率でも優等生で、ここ10年間 8位前
後の順位をキープしている。
 OECD参加24か国のデータ(2000年)では、女性の労働力率と合計特殊出生
率は正の相関関係を示している。先進国の間では、女性の労働力率が高い国
ほど合計特殊出生率も高くなっている。少子化抑止のためには、仕事と子育
てが両立できる環境を整えることが重要になってきている。
 日本国内の比較において、福井県は、女性の労働力率と合計特殊出生率が
ともに高い事例ということになる。どのような要因によって、仕事と子育て
の両立が可能になっているのだろうか。「ふくい3人っ子応援プロジェクト」
をはじめとして数々の育児サポート施策が展開されており、全国的にも注目
を集めているが、もう一つの見逃せない要因として家族形態がある。
 福井県は 3世代同居が多いこと(全国第2位)でも知られているが、3世代
同居世帯の割合そのものは2割に過ぎない(8割の世帯は3世代同居ではない)。
福井型の修正拡大家族とでも呼ぶべき居住形態に注目する必要がある。平成
19年に実施した調査では、回答者の 6割近くが「30分程度で行ける範囲に自
分や配偶者の親あるいは自分の子どもが住んでいる」と答えている。こうし
た居住形態によって、子ども世代が、育児に関して、親世代からの支援(急
用や病気の時のサポートや保育所や幼稚園への送迎など)を受けやすい環境
が形作られている。
 親世代からの支援を含めて育児の中心的な担い手は女性である。平成15年
に実施した家事分担に関する調査では、世話を必要とする乳幼児がいるケー
スで、世話を「いつもする」と答えた女性が20〜39歳で 96.4%、40〜59歳で
72.3%、60歳以上で42.9%なのに対して、男性ではそれぞれ25.0%、9.3%、8.0
% にとどまる(父親よりも祖母の実施頻度が高い)。その他の家事でも男性
の実施頻度は女性を大きく下回る。
 福井県における仕事と子育ての両立は、家族形態におけるプレモダンな条
件と女性の頑張りによって 支えられている側面が大きい。 その一方で、政
策等の意志決定機会への女性の参画が進んでいるとはいいがたい(福井は全
国で唯一女性の県議会議員がいない県である)。こうしたギャップをどのよ
うに解消していくかも福井県の大きな課題であるといえよう。


            (看護福祉学部社会福祉学科准教授 塚本 利幸)



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