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     VOL.51/ 2 0 0 9.6 .30 (TUE) 発行

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 ▽『景気の底打ち』に時期尚早の懸念

 政府は、 6月の月例経済報告で、雇用情勢の悪化や世界景気の下振れと
いった景気下押しリスクを注視する姿勢を維持しながらも、「一部に持ち
直しの動きがみられる」として「悪化」の表現を削除、主要先進国の中で
は最も早く「景気の底打ち」を宣言した。振り返れば、日本経済は、2008
年 9月のリーマンショック、その後の自動車不況以降、景気悪化のペース
が加速度的に進行、実質成長率が戦後最悪のマイナスを記録するなど深刻
な状況に陥っていた。しかし、今回の月例経済報告により、日本経済は約
半年あまりで景気の最悪期を脱したことになる。
 この理由としては、第 1に工業生産の持ち直しが挙げられる。企業の生
産活動を示す鉱工業生産指数は、本年4月に前月比5.2%の上昇と2か月連続
の増加となったほか、生産予測指数も5月が同+8.8%、6月が同+2.7%の見
込みで、このまま行けば4〜6月期の鉱工業生産指数は前期比+9.9%と大幅
に増加することが予測されていること。第 2に、生産の上振れを、中国向
けなどの輸出が支え始めたこと。第 3に、過去最大級の景気対策効果によ
り、内需の柱である個人消費面でエコカー減税による新車販売の増加など
耐久財消費が持ち直していることなどが挙げられる。
 しかし、過去の経験則から判断し、今回政府が出した景気底打ち宣言を
時期尚早とする見解も耳にする。その根拠は、一つ目に、広告業売上高が
回復していないこと。これまで広告業売上高と景気動向とは密接な関係が
あり、景気回復局面では広告業売上高の落ち込みが横ばいから縮小に転じ
た後に景気が回復するパターが多かった。しかし、現状では広告業売上高
の落ち込みが続いていること。二つ目に、鉱工業生産と大口電力需要の関
係を見ても、電力需要に減勢縮小の兆しは見られるものの、依然大幅なマ
イナスにあること。三つ目に、民間需要の柱である設備投資が未だ大幅な
減少にあること−等を理由として挙げている。
 さて、こうした中、福井県経済に目を向けると、一部業種で生産が上向
いたとの話も聞くが、総じて見れば、企業部門、家計部門ともに回復基調
から程遠いのが現状であろう。地方経済に春は訪れるのか。いずれにせよ、
一日も早く経済活動が安定し、夢と希望が抱ける国へと変身して欲しいも
のである。

                 (地域経済研究所教授 南保 勝)




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