========地域経済研究所 eメールマガジン=========

     VOL.57/ 2 0 0 9.12 .28 (MON) 発行

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 ▽福井県経済、この一年を振り返って

 昨年 9月のリーマンショックを契機に急速に悪化した日本経済は、年初
から厳しい展開を強いられた。ちなみに、企業部門では輸出企業を中心に
設備投資が大幅に減少、家計部門でも雇用・所得環境のさらなる悪化、こ
れに伴う消費マインドの冷え込みにより調整色を強める展開が続いた。し
かし、春先以降は、在庫調整の進展による生産活動の回復、中国向けを中
心とする輸出の減少幅縮小、エコカー減税などの経済対策などが奏功し、
基調としては持ち直しつつある。ただ、現状での回復基調は、金融危機後
の急落に対する反動増と景気対策の効果に起因したものであり、自律的な
需要の伸びに裏打ちされたものではない。
 一方、この間の福井県経済を振り返ると、需要部門では、雇用・所得環
境の改善が遅れる中で消費マインドの冷え込みが続き、個人消費が総じて
低調に推移、投資活動も民間需要の不冴えから精彩を欠く展開を強いられ
た。また、企業部門では、繊維、眼鏡などの地場産業を除いて、電子部品
・デバイス、輸送機械などの輸出依存型産業が、 4月以降、在庫調整の進
展などから持ち直したほか、これに伴い企業マインドも低水準ながら改善
傾向を示した。つまり、本年の福井県経済は、全国同様に持ち直しつつあ
るものの、その水準が極めて低いため実感に乏しいものであったといえる。
 こうした状況下、来年の本県経済を展望すると、企業部門では、景気感
応度の高いセクター、特に製造業で外需依存型の産業・企業では、世界経
済の回復に伴い緩やかながら持ち直しの動きが続くものと考える。ただ、
大きく落ち込んだ水準からの回復であるため、収益水準の回復にはなお時
間が必要で、景況感の改善は緩慢にならざるを得ない。また、運輸、卸・
小売、建設など内需中心の産業・企業では、人口減少などの構造問題に加
え、需要減に伴う取引先からのコストカットの要請、さらにデフレ圧力の
中で収益環境は厳しく、回復の足取りは鈍いとみるべきであろう。一方、
需要部門では、企業部門の動向に伴う所得環境の改善の遅れやデフレ圧力
により、精彩を欠く展開が続くものと思われる。ただ、労働市場について
は、生産活動の持ち直しからもわかるように、タイムラグを伴いつつも底
入れしていく可能性が高い。
 いずれにしても、自律的な回復力は弱く、よって経済を再生するための
カンフル剤として、企業の投資を促し雇用を創出するための経済対策が一
刻も早く打ち出されることを望みたい。
                 (地域経済研究所教授 南保 勝)





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