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     VOL.61/ 2 0 1 0.4 .30 (FRI) 発行

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 ▽事業仕分けと電源三法交付金

 民主党連立政権の成立を受けて、事業仕分けが行われている。現在は第
二弾として独立行政法人を対象に仕分けの模様が連日報道され、天下りの
実情などが次々に国民の前にさらけ出されている。沖縄の普天間基地移設
や「政治とカネ」問題などで鳩山政権の支持率が低迷する中、事業仕分け
は国民から概ね高い評価を得ていると言えるだろう。
 事業仕分けの第一弾は昨年11月に行われ、 449事業の予算が対象とされ
た。対象事業は多岐にわたり、電源三法交付金の中核をなす電源立地地域
対策交付金もその 1つである。これは注目度こそ低かったものの、福井県
や県内市町村にとっては重要な財源である。原子力発電所などの立地によ
り、福井県内では年間 200億円前後の電源三法交付金を受けている。交付
金が万一廃止などされたら、県内に与える打撃は計り知れない。
 仕分けの結果は、むしろ地元にとって望ましいものであった。簡単に言
えば「自由に使える交付金に改正すべき」ということである。電源三法交
付金は国から県や市町村に交付される際、使い道で制約を受ける。例えば
借金の返済や施設(図書館や福祉施設など)以外の職員の人件費などに使
うことは認められていない。こうした制約を取り除くべきだ、というのが
多数の仕分け人から出された意見であった。
 現在、電源三法交付金を所管する経済産業省では、いくつかの制度改正
をすでに行い、さらに制約を緩和することについて検討中と聞く。仕分け
の結論がその後の改革に反映されていないとの批判も出ているなかで、電
源立地地域対策交付金の制度改正が進められている点は高く評価したい。
 しかし、改正は簡単ではない。電源三法交付金は立地地域の振興を目的
に、国民全体が支払う税金(電気料金に含まれる電源開発促進税)によっ
て賄われているからである。借金の返済は、すでに整備が済んだ施設の費
用であり、地域振興には直接結びつくものではない。また職員の人件費も、
住民票の発行や税金の徴収などを行う職員は地域振興と直接関連しないだ
ろう。これらの費用に電源三法交付金を充てることには、国民の理解を得
ることは難しいかもしれない。
 それでも、事業仕分けもまた国民の意思を反映しているはずである。実
は電源三法交付金は、これまで何度も使い道の拡大が認められてきた。県
や関係市町村からも改正の要望が繰り返し行われている。また国でも「ひ
もつき補助金」の一括交付金化が議論され始めた。電源三法交付金は、改
正の余地が残されているのではないだろうか。
 事業仕分けの意義を重く受け止め、電源三法交付金制度のさらなる改正
を期待したい。

               (地域経済研究所 講師 井上 武史)





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