========地域経済研究所 eメールマガジン========

  VOL.6/2005.9.29(THU)発行

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▽ 特集1  予想外価値を創造する 〜亀田メディカルセンター〜
(特集で連載しております「中国の現場」はお休みします。)

 千葉県鴨川市(人口約3万人)にある亀田メディカルセンターで
は、顧客価値レベルを「基本価値」「期待価値」「願望価値」「予
想外価値」の4段階に設定している。
 顧客価値には、顧客が企業に対して下す評価、つまり「Customer 
Value」としての顧客価値や、顧客が企業にもたらす価値、つまり
「Customer Equity」としての顧客価値がある。
 一方、亀田メディカルセンターの顧客価値とは、顧客が財・サー
ビスを受けた際に得られる満足感、安心感であり、例えば、入院患
者の食事面でいうと「基本価値」が『食事がでる』、「期待価値」
が『好きな時間に食べられる』、「願望価値」が『好きなものを選
択できる』そして「予想外価値」が『アルコールが飲める(当然医
師の判断のもとであるが)』といった具合であり、患者が喜びや感
動を受ける価値レベルを指している。
 常に「予想外価値」の提供を主眼に、病室の完全個室化や消灯時
間の廃止、24時間面会可能、カルテの電子化、病室での出産、さら
には最上階に展望フランス料理レストランを構えるなど、病院の概
念を破壊し「患者(その家族)第一主義」に徹することで、患者や
その家族と長期的な関係を構築・維持する結果「もう一度入院した
くなる病院」とまで称される。がしかし、苦悩もまた多い。長期的
な関係を構築・維持することで、当院を支持する患者の価値レベル
が高まり、かつて「予想外価値」であった財・サービスが時間と共
に「基本価値」になってしまうのである。
 だが、それに屈することなく、新たな「予想外価値」を創造し、
提供し続けることで顧客価値を一層高めている。ちなみに、今後は、
臨床分野に特化させた大学院大学の設置や、患者が娘や息子、孫の
晴れ姿が見られるよう敷地内にチャペルを設けることも計画してい
るという。
 マーケティングの手法に「CRM(Customer Relationship 
Management)」なるものがあるが、これこそが真の「CRM」では
ないだろうか。「CRM」に取り組んでも成果が出ない企業も少な
くない。一般的に「CRM」は「情報システムを応用することによ
り顧客と長期的な関係を築くこと」であるが、情報システムの整備
や応用は、顧客情報の効率的・効果的収集、顧客との関係維持を低
コストで簡便に行う仕組みのひとつであり、もう一度、自社の取り
組みが「Customer Value」や「Customer Equity」の獲得・維持・
拡大を目的としたものになっていないかを確かめてみて欲しいもの
である。

※当院HP:http://www.kameda.or.jp/
                               (地域経済研究所 杉山友城)
							   

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