========地域経済研究所 eメールマガジン=========

     VOL.73/ 2 0 1 1.4 .28 (THU) 発行

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東日本大震災から学ぶべきこと

  まずは、東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げ、一
日も早い被災地の復興をお祈り申し上げたい。
  今回の大震災は、日本にとって戦後最大の被害をもたらし、昨年11月以
降、緩やかな回復過程にあった国内景気も、急速な冷え込みをみせている。
  当面は、需要面で被災地の個人消費や固定資本投資の減少、全国的な自
粛ムードの高まりなどにより低迷が予想されるほか、供給面でも被災地の
工場操業停止の影響が全国的に広まり、電気機械、自動車関連産業を中心
に停滞感が強まるものと思われる。ただ、こうした下振れリスクは長続き
せず、復興需要、すなわち住宅投資や公共投資などの固定資本投資が大幅
に増加し、 GDPの押し上げに寄与するとの見方が支配的である。
  しかし、その場合、日本は、いったいどのような姿勢で経済再生に取り
組むべきなのであろうか。これには、以下の 3つの気概を共有することが
必要ではないか。
  第一に、日本経済の成長過程を振り返ると、バブル崩壊以降の今日まで、
“失われた20年”と呼ばれるように経済の低迷に喘ぎ、この間、構造改革
の名の下で進められた、所謂、市場原理主義の導入によって日本の経済シ
ステムそのものが傷つき、実感のない成長と需要の低迷が続いた。今回の
震災を機に、我々は壊れかけた日本の経済システムをリセットし再スター
トを切るという覚悟が必要ではなかろうか。日本経済にとっては、そのア
クションを起こす最後の機会を今回の震災が教えてくれたように思う。
  第二に、震災後の再生に向けての動きの中で感じることは、被災地の自
治体や住民、地元企業などの必死の動きが見て取れるものの、被災地の復
興対策や日本全体に向けての経済対策、すなわち日本政府の対応が十分と
は言えないように思える。こうした状況から学ぶべきことは、もはや地方
は中央政府の力の限界を認識し、何事も地方自らの手で行う意識を持つこ
とが必要な時代となったことであろう。そのために、地方は何をなすべき
か、今後は被災地のみならず地方圏全体が、独自の企画力、構想力、ビジ
ョン力を養い育てることが必要ではなかろうか。
  第三に、震災後、“絆”という言葉をよく耳にするようになった。その
理由は、“絆”の深い地域がいち早く再生に向け動き出す姿が見受けられ
たためであろう。つまり、この言葉は、地域の再生・維持・発展を目指す
上で重要なキーワードであり、言葉を換えれば、地域におけるネットワー
クの重要性を再認識させるものである。そのために、地域は失われつつあ
る地域の基盤、域内ネットワークの再構築を図らなければならない。
  今、世界中が日本の再生に向けての動きを注視している。だからこそ、
我々はここで示した 3つの気概を共有し、一刻も早く復活への筋道を立て
動き出すことが求められている。なぜなら、そうした動きが早ければ早い
ほど震災犠牲者への追悼、被災者の明日に向けての勇気につながっていく
ことが確信できるためである。
                 (地域経済研究所 教授 南保 勝)