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  VOL.8/2005.11.28(MON)発行

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特集 中国訪問記 中国最大の流通拠点都市"義烏(ぎう)"を訪ねて

 上海から南西部に向けて車で約3時間(300Km)走ると、近年、世界
の流通拠点都市として注目を集めている「義烏(ギウ)市」(浙江省の
中央部)に到着する。同市は人口150万人あまりで、1千600万人を擁す
る上海市と比較すれば、決して大都市とは言いがたい。しかし、「義烏」
の市内に入るや否や見たこともない巨大な流通市場が目に飛び込み、
その規模の大きさに驚嘆する人々も多い。
市内には10あまりの専門流通市場があり、雑貨や身の回り品、アクセ
サリー、化粧品、文具、衣料、家具、農産物など取り扱い品目ごとに
特化した市場が点在し、各市場のブースをひとつひとつ見て回るだけ
で2週間以上を要するという。これら10大市場の営業面積は合計150万
uといわれ、東京ドーム32個分に相当する。営業店舗は約8万店を数え、
取り扱い品目は32万種類にも及ぶらしい。現在、「義烏」には国内外
の4千社を超える有名企業が販売代理店や総代理店を設置しているほか、
1千社以上の外国企業及び貿易機関が事務所を置き、中東や韓国を中心
に1日1万トン以上の商品が取引されているという。ちなみに、日系企
業は現在18社が存在すると聞いた。
 我々日本人にとって中国の市場というと、やや悪いイメージがあり、
戦後の日本に存在した闇市(やみいち)のような風景を想像する。し
かし、私が訪れた福田市場では、近代的かつ想像を絶する巨大な建物が
3棟建設され、1棟当たり5〜10坪程度の営業店舗が8千件ぐらい入居し
ていた。まだまだ入居希望者が多いため、現在4棟目の建設が進められ
ている。
 さて、こうした状況にある「義烏」ではあるが、同市場の最大の特徴
を挙げるとすれば、それは一商品当たりの単価がとてつもなく安いこと
であろう。日本の百円ショップで扱われる商品でたとえるなら、販売価
格のおおよそ10分の1程度、いや20分の1程度の価格で取引されている。
ちなみに、紳士カッターシャツが20元〜30元、日本円で300円〜450円
という安さである。ただ、1ロット当たり最低でも1万〜2万個の世界で
あり、1ケース、2ケースの感覚ではとても買い付けできないという悩み
もある。それともう一つ、「義烏」から仕入れ日本に持ち込んだ場合を
想定すると、日本市場でビジネスとして成立する商品は、質やセンス、
デザインなどの面からみて一部を除き限界があるように思えた。100円
ショップ或いはノベリティー商品としての感覚であれば、成り立つかも
知れない。
 福田市場からの帰途、日本の貿易企業で働く一人の中国人青年に「儲
かりますか」と訪ねてみた。その答えは「儲かりますよ」であった。営
業店舗1件あたり、純利益だけで年間50万元は上げると話していた。こ
れを日本円に換算すると750万円となるが、上海市の平均賃金が3千元〜
4千元(日本円で4.5万円〜6万円)、つまり日本の5分の1程度であるこ
とを考えると、日本国内では4千万円ぐらいの価値に相当する金額とな
ろう。
 ところで、この「義烏」市場は、20年ほど前からボツボツと店舗が増
え、現在の巨大市場に成長した。しかし、今後の動きを予想すると、こ
れは一つの仮説だが、中国政府は、全土での平均的な経済発展を促すた
めに、今後10年間(2015年を目処として)で内陸部に向け8万キロの道
路整備を計画しているらしい。これは、地球2周を超える距離である。
となると、安さを売り物とする「義烏」での物価もあがり、コスト面で
の優位性も薄れてくるであろう。ひょっとして、「義烏」で一儲けする
のは今がチャンスなのかも知れない。
                       (研究所・南保勝)


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