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     VOL.90/ 2 0 1 2.9 .28 (FRI) 発行

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福井県も動き出した台湾企業とのビジネス連携支援

  昨今の世界経済はグローバル化の進展に伴いクロスボーダーで事業展開
を行う企業は急増し、その事業形態も多様化している。こうした中、自社
の弱みを相手の強みで補完するため企業連携(ビジネス・アライアンス)を
締結し、競争力とリスクマネジメントの双方を強化するという戦略的ツー
ルが注目されている。
 近年、日本企業も東アジアにおける経済統合が進化する中、ものづくり
のグローバル展開、特に中国・アジアでのビジネス展開に長け、かつ日本
企業及び日本人の信頼厚い台湾企業とビジネス・アライアンスを模索する
動きが相次いでいる。

<日台アライアンスの背景>
 こうした背景には、まず2008年5月に馬英九政権が誕生し、台湾と中国
との関係が急速に緊密化したことがあげられる。2010年9月には「両岸経
済協力枠組み協定(ECFA)」が発効し、日本企業にとって中国市場への優
先的アクセス権を取得した台湾企業とのアライアンスのインセンティブは
高まった。またリーマン・ショック後の日本経済の低迷と円高、それに続
く東日本大震災の発生と電力不足問題で日本では中小企業までが中国・ア
ジア進出を真剣に検討し始め、中国市場開拓に豊富な経験を有する台湾企
業が格好のアライアンス相手として浮上した。
 他方、台湾当局もECFA締結を受けた日台経済交流の活発化や東日本大震
災の発生や円高などの日本企業を取り巻くビジネス環境の変化を受け、台
湾企業と日本企業とのビジネス・アライアンス支援を強化している。2011
年8月末に行政院経済建設委員会主導による日本投資貿易訪問団(団員230
人)が来日し日本各地で投資誘致活動や商談を行ったほか、同年9月には
「日台民間投資取り決め」が締結され、「台日産業連携架け橋プロジェク
ト」と称した日本企業と台湾企業のビジネス・アライアンス支援も活発化
している。
 こうした中、福井県においても2012年2月に知事、県商工会議所連合会
会頭をはじめとする企業関係者約60人が台湾を訪問し、台湾側の台日商務
交流協進会等と業務協力に関する覚書(MOU)を締結した。これを受け、
本年10月中旬に開催される北陸技術交流テクノフェアに台湾企業が出展す
ることが決まったほか、11月には台北で技術商談会を企画するなど台湾企
業とのビジネス・アライアンスの機運が高まっている。

<日台アライアンスの戦略的価値>
 日本企業にとって台湾企業とアライアンスを締結する戦略的価値は、第
1に両者のビジネス展開・戦略面での相互補完関係である。日本企業は、
@基礎技術力、A品質管理力、Bブランド力、そしてC成熟市場でのビジ
ネス・ノウハウを有している。他方、台湾企業は、@製品化及び量産化能力、
A国際感覚かつスピードある経営力、B中華圏でのマーケッテング力とC
中華圏でのビジネス・ノウハウという面で優れている。両者が相互に互いの
メリットを補完し合えば、ウィン・ウィンの関係を構築できる。
 2つ目のメリットは、台湾企業及び台湾人のケミストリー(気質、相性)
である。過去に日本の植民地支配という不幸な歴史があったが、台湾は文
化的にも、歴史的にも日本に親しみを持っている。さらに台湾では中小企
業が主体となって経済発展を遂げてきたため、企業の大小をも問わず、技
術面で突出した企業を尊重する気風がある。したがって、優れた技術はあ
るが、マーケテッングで課題を抱える日本の中小企業にとって活用できる
場面は少なくない。ビジネス・アライアンスの最も重要なことは「信頼性」
であるといわれている。台湾企業のケミストリーが日本企業の提携相手と
してふさわしいという意見は多い。
 そしてもう1つのメリットは、台湾と中国本土とのECFA締結である。ECFA
は2010年6月に署名、同年9月に発効し、10月にはサービス貿易の開放(第
1段階)、そして2011年1月からアーリーハーベストとして物品貿易の関税
引き下げが始まった。ECFAは単に関税引き下げに留まらず、相互投資の緩
和と保護、知的財産権保護、審査基準統一なども含めた包括的な経済協力
に関する協定である。
 このため、台湾を仲介して中国とビジネスを行う日本企業にとってメリ
ットが大きい。台湾に生産拠点を持つ日系企業は中国向け輸出を拡大でき
る。また中国がサービス分野の投資を開放したことで、日台アライアンス
による中国事業展開の可能性も高まった。既に小学館(中国語学習教材開
発)、日本テレビ放送網(番組制作販売)、パナホーム(ビル・住宅内装等
一環サービス)、KDDI(アジア音楽配信)などが台湾進出を果たしている。

<日台アライアンスへの福井県の取り組み>
 日台アライアンスは台湾と日本の産業界の積極的な取り組みと台湾政府
の強力なバックアップもあって、日本の首都圏だけでなく、次第に地方に
も浸透しつつある。中でも地方自治体で先鞭をつけたのは福井県である。
既に述べたように、福井県商工会議所連合会は今後の福井県と台湾間の企
業連携に向け、2012年2月に台日商務交流協進会及び台日産業技術合作促進
会の2団体とMOUを締結。これを受け、今秋、台湾企業及び福井県企業が互
いに訪問し合い、展示会への出展あるいは商談会(ビジネス・マッチング)
を開催する。
 福井県立大学地域経済研究所はこうした福井県と台湾間のビジネス・アラ
イアンスを支援するため、福井県企業及び産業界向けに各種セミナーやシ
ンポジウムを開催するとともに、今年度末に報告書『福井県・台湾ビジネス・
アライアンス構築の手引き』を出版する。福井県(日本)企業の中国・ア
ジア事業展開に関心のある企業やビジネスマン、そして福井県経済のグロ
ーバル化に関心のある一般の方々のセミナー、シンポジウムへの参加を歓
迎します。以下、福井県と台湾間の戦略的ビジネス・アライアンス支援事業
の実施予定表を添付します。


福井県と台湾間の戦略的ビジネス・アライアンス支援事業
(実施予定)


10月17日(水) 台日商務交流協進会ミッションの福井市訪問
 〜19日(金)       (北陸技術交流テクノフェアへの参加)

10月下旬    台北でのビジネス商談会へ向けた研修セミナー
〜11月上旬     (主催:福井県立大学地域経済研究所、福井商工会議所)
          (場所:福井商工会議所会議室)
 
11月22日(木) 福井県・台湾ビジネス商談会(@台北市)
  〜23日(金)   (主催:福井県商工会議所連合会、台日商務交流協進会)

2013年1月   日台アライアンス・シンポジウム(@福井市)
    〜2月   (主催:福井県立大学地域経済研究所、福井商工会議所)
          (場所:福井商工会議所or福井県国際交流会館)
       
2013年3月    報告書『福井県・台湾ビジネスアライアンス構築の手引き』印刷製本


                              (地域経済研究所 教授 丸屋 豊二郎)


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