【研究内容】
私たち人間の諸活動にともない、都市排水、工場排水や農業排水に含まれる栄養塩が河川、湖沼、やがては沿岸海域に流れ込み、「富栄養化」をもたらしています。富栄養化になると、その栄養源を利用して、有害な微生物が異常増殖し、あるいは有機・無機物質を酸化することにより現場水域が貧酸素化して、そこに生息する他の生物や人間に悪影響を及ぼすことがあります。私たちは、これらの有害・有毒微生物の検出・定量を行なって現場水域を監視するとともにこれら微生物の防除方法を考案しています。
一方、海洋における有機物の分解に関しては、細菌類とともに真核微生物(菌類や菌様原生生物)も重要であると考えられていますが、その生態は殆ど解明されていません。そこで、沿岸域に分解者として広く分布するラビリンチュラ類などの真核微生物について、その生理生態学的な研究を行っています。
1. 環境問題に関与する微生物
1)有害アオコの生態と環境保全に関する研究(担当 広石、高尾)
@ アオコを溶かすウイルスの研究
収縮時 伸長時
アオコを溶かすウイルスの電子顕微鏡
有毒アオコ
アオコが溶ける
対照
ウイルスによって溶けて透明になったアオコ
A アオコを溶かす細菌の研究
2)有害赤潮プランクトンの生態と環境保全に関する研究(担当 広石、高尾)
正常なアコヤ貝(2mm) ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマによって斃死したアコヤ貝 有害渦鞭毛藻ヘテロカプサ・ サーキュラリスカーマ
2. 有機物分解を担う真核微生物に関する研究(担当 高尾、広石)
水圏生態系におけるラビリンチュラ類の役割
ラビリンチュラ類
【卒業論文・修士論文・博士論文のテーマ】
卒業論文
・ Microcystis
aeruginosaにおける複製と協調した細胞分裂の制御機構
・ Microcystis aeruginosaのftsZ翻訳開始点近傍に認められた転写制御エレメントの推定
・ 天然環境中のMa-LMM01の鞘構造遺伝子を保有するファージ粒子の定量的検出
・ 有害ラフィド藻働Chattonella属に対する溶藻因子の分離および性状解析
・ 有害渦鞭毛藻Heterocapsa circularisquama におけるPCNA遺伝子の転写解析
・ 有害ラフィド藻Chattonella属に対する溶藻印紙の分離および性状解析
・ 小浜湾におけるラビリンチュラ類の動態
修士論文
・ 天然環境中のMicrocystis
aeruginosaに及ぼすシアノファージの生態学的影響
・ Microcystis
aeruginosa のftsZ翻訳開始点近傍に結合する未知タンパク質の精製法の検討
・ Microcystis
aeruginosa感染症シアノファージMa-LMM01のコードするファミリー19キチナーゼに認められた溶菌活性
・ 有害渦鞭毛藻Heterocapsa
circularisquamaにおけるPCNA遺伝子の転写解析
博士論文
・ 分子生物学的手法による有毒Microcystis属の識別定量法の開発に関する研究
・ 三方湖におけるアオコ原因ラン藻Microcystis
aeruginosaの有毒個体群の動態
・ 有毒アオコMicrocystis
aeruginosaに感染するファージの分子生物学的性状ならびに
その環境動態