男女共同参画の実践
−少子高齢社会への戦略−
冨士谷あつ子
塚本利幸
明石書店 2007年

 男女共同参画社会の実現を目指すということが、これまでは女性のエンパワーメントや意志決定機関への参加について語られることが多く、肝心の男女共同参画の進め方についてあまりにも触れられ実践されることが少なかったのではないか。男女共同参画ということは、男女が対等な立場に立ち、自由闊達に意見を述べ合い、ものごとの決定に臨む営為を指す。近年、グローバルな目標となったジェンダー平等社会の実現には的確な人類史理解の上で、この目標がいかなる意義を持つかを国民も為政者も認識する必要がある。そうでなければ、国民は不当な格差に苦しみ、政治家は政権を投げ出さなければならない。私たちは、それを目の当たりにしている。とりわけ少子高齢化に伴う深刻な諸問題を克服しなければならないが、これには戦略が必要だ。
 男女共同参画社会基本法が謳う「男女共同参画」という営為は、ジェンダー平等実現のための戦略である。今、各方面において「男女共同参画」を実践する学習や活動のあり方を検討する人々が増えているが、筆者らは長年にわたるさまざまな領域での男女共同参画型の学習支援や社会活動の経験を踏まえ、ここに「男女共同参画」の必要性を述べ、豊富な事例を紹介する。男女両性が共に人間的な生活を送ることのできる社会を目指すすべての人々に、この本をぜひ読んでいただきたい。
著者略歴

 冨士谷 あつ子(ふじたに あつこ)
 評論家、京都生涯教育研究所所長。日本ペンクラブ会員、日本文芸 家協会会員。京都大学農学部卒業、農学博士(京都大学)。
 武庫川女子大学及び福井県立大学教授を経て現職。(財)京都国際文化協会理事。日本ジェンダー学会名誉会長。第24回読売教育 賞(成人教育部門)受賞(1975)。
 著書:『三十歳からの出発』(読売新聞社)、『生涯学習への出発』 (朱鷺書房)、『女性学入門』(編著、サイマル出版会)、『長寿社会を 拓く−いきいき市民の時代』(共編著、ミネルヴァ書房)他多数。
 塚本 利幸(つかもと としゆき)
 福井県立大学准教授。日本ジェンダー学会常務理事、京都生涯教育研究所評議員。京都大学文学部卒業。同大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学
 専門は、環境社会学、社会問題、社会調査。
 主な論文:『男女間の家事分担と地域特性に関する考察−女性就業率上位の福井県を事例として」(「日本ジェンダー研究」第7号、2004)


はじめに
第1章 いま、なぜ男女共同参画か
   1 暮らしのなかの日本事情
      少子化問題のとらえかた/高齢化問題のとらえかた/立ちなおれるか男たち
   2 ジェンダー平等を目指す世界の流れと日本
      ジェンダー平等を目指す世界の流れ/ジェンダー平等への日本の取り組み
第2章 地域特性と環境・労働・福祉
   1 滋賀県の環境問題と市民活動
   2 社会活動、社会参加としてのボランティア活動
      環境問題の多様性/ボランティア活動の多様性/ボランティア活動を活性化するために
   3 福井県の地域特性と労働・福祉にみるジェンダー問題
   4 家事分担の実態
   5 夫婦間の家事分担の規定要因
第3章 男女共同参画学習と活動への招待
   1 学習計画担当者・推進者の課題
      男女共同参画型学習及び活動の留意点/成人教育の留意点
   2 ライフステージ別男女共同参画学習と活動
      乳幼児期・学齢期の学びと実践/青年期の学びと実践/成人期の学びと実践
      高齢期の学びと実践
   3 男女共同参画実践のプロセス
      学校における男女平等教育の徹底/市民活動の場を作る/ジェンダー平等を支えるアカデミアの役割

おわりに