平成17年度には、日本ジェンダー学会第9回大会が、
「いま、ジェンダーを問う」を統一テーマとして、
2005年9月10日(土)に東洋英和女学院大学で開催されました。
日本ジェンダー学会第9回大会予告
テーマ:いま、ジェンダーを問う
大会実行委員長:進藤久美子(東洋英和女学院大学)
日時:2005年9月10日(土)、9:30〜17:00 懇親会:17:30〜19:30
場所:東洋英和女学院大学六本木公舎小学部講堂
〒106-0032 東京都港区六本木5-6-14
п@03-5411-1322
(詳しい交通アクセスに関しては、下記の東洋英和女学院大学のホームページをご覧ください)
http://www.toyoeiwa.ac.jp/gakuin/campus_f/campus.html
参加費:1,500円(学生:1,000円) 昼弁当(希望者):1,000円 懇親会費:6,000円
(大会参加費、弁当代、懇親会費は、振り込み用紙の通信欄に参加されるものをご記入の上、一括してお振り込みください。)
参加申し込み期限:8月30日 (期限後の参加問い合わせ:進藤メールまで)
問い合わせ先:東洋英和女学院大学進藤研究室
〒226-0015横浜市緑区美保町32
E-mail:kshindo@toyoeiwa.ac.jp
日本ジェンダー学会第9回(2005年度)大会のご案内
2005年7月23日
日本ジェンダー学会会員各位
毎日暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、きたる9月10日(土)に、第9回日本ジェンダー学会大会を開催いたします。
今回の学会テーマは、「いま、ジェンダーを問う」です。ここ数年、ジェンダー・バッシングのうねりが厳しさを増す中で、比較史的視座から「ジェンダー」の果たした役割を検討し、そうした後ろ向きの流れに抗するきっかけを模索したいという願いがこめられています。
実際、ジェンダーの概念は、20世紀最後の四半世紀に国際社会を大きく変容させ、ジェンダー・イクオリティは、21世紀国際社会がめざす最重要課題となっています。アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ、そしてヨーロッパで、ジェンダーの新しい価値はどのような進展をみせているのでしょうか。午前の部「グローバルにジェンダーを問う」では、それぞれの地域で女性たちの置かれている社会・文化的立場から、そして午後の部「ジェンダーと労働に関する比較研究」では、労働問題に焦点を当て、検討したいとおもいます。
午後の部では、男女共同参画の実践に向けて活発な活動と提言をされていらっしゃる赤松良子元文部大臣をお招きし、日本の「ジェンダー状況」についてのお話しを伺います。
みなさまの奮ってのご参加をおまちしております。
日本ジェンダー学会大会実行委員長 進藤久美子
午前の部「グローバルにジェンダーを問う」 9:30〜12:00
開会の挨拶 | 冨士谷あつ子(日本ジェンダー学会会長、京都生涯教育研究所) |
報告1 | 「オペラ≪カヴァレリア・ルスティカーナ≫のジェンダーに関する考察」 武田好(神戸女学院大学) |
報告2 | 「セネガルの総合村落開発とジェンダー問題」 小縣早知子(オーバーシーズアグロフィッシャリーズコンサルタンツ株式会社) |
報告3 | 「ラテンアメリカ 自立を目指す先住民女性たち」 山本厚子(作家) |
報告4 | 「韓国男性学の現状と課題」 佐々木正徳(九州大学) |
コーディネーター | 上杉孝實(京都大学名誉教授) |
−昼食−
総会:12:30〜13:30
午後の部「ジェンダーと労働に関する比較研究」13:30〜17:00
挨拶 | 赤松良子(元文部大臣、WINWIN代表) |
報告1 | 「女子学生の就業と課題」 福沢恵子(東京家政大学) |
報告2 | 「EUの≪ジェンダーの主流化≫の展開」 柴山恵美子(元名古屋市立女子短期大学教授) |
報告3 | 「ベトナムの女性の地位−労働・家族・婚姻・相続」 香川孝三(ベトナム公使) |
コーディネーター | 冨士谷あつ子(京都生涯教育研究所) |
全体討論
閉会の挨拶:進藤久美子(大会実行委員長、東洋英和女学院大学)
懇親会:17:30〜19:30(場所:東洋英和女学院小学部講堂)
午前の部「グローバルにジェンダーを問う」 の発表概要
◆オペラ≪カヴァレリア・ルスティカーナ≫のジェンダーに関する考察◆ 報告者 武田好
シチリアの村で起きた事件を題材にしたこのオペラは、イタリア・ヴェリズモ・オペラの代表作として、
イタリアのみならず世界的に大成功を収めた。19世紀後半に統一されたイタリア国家の近代化への
波は、徴兵制という形でシチリアの村にも及び、これが事件の発端となる。村の掟が破られたとき、
男は名誉を守る手段として決闘を選択するが、決闘の前に別れを告げる存在は、恋人ではなく母親
であった。母親中心主義の風土における「男性性」と、村の社会規範と宗教倫理に規制される「女性
性」について、オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」のジェンダーに関する考察を試みたい。
◆セネガルの総合村落開発とジェンダー問題◆ 報告者 小縣早知子
比較的政情が安定し大きな紛争もないセネガル国では、生命にかかわるような極端な性差別は
みられないが、国内や地域、海外から多くの開発計画・援助が介入しており、こうした大小さまざまな
開発計画が地域のジェンダー環境に影響を及ぼしている。セネガルのジェンダー事情を踏まえた上で、
開発計画の中で自然発生的に誕生したある村の女性グループの自立を中心に開発計画におけるジェ
ンダー配慮の実例とその影響を考察し、開発計画におけるジェンダー配慮の重要性と必要性を再確認
し、私たち外部者のジェンダー意識が途上国の女性を取り巻く環境に影響することを改めて意識したい。
◆ラテンアメリカ 自立を目指す先住民女性たち◆ 報告者 山本厚子
ラテンアメリカという呼称は、南北アメリカ、カリブ海の独立国33ヶ国の地域を指す。この地域内で、
スペイン語公用語圏をイスパノ・アメリカという。その中でも中米のグアテマラ、エクアドル、ペルー、
ボリビアなどは人口の60パーセント以上が先住民・インディヘナの国である。人権、文化、習慣など
複雑で多様な社会を構成している。
コロンブスの新大陸到達から500年の1992年、中米・グアテマラのインディヘナ出身のリゴベルタ・
メンチュウ・トゥム女史がノーベル平和賞を受賞した。そして翌年、国連はその年を「世界先住民族年」
と定めた。
この地域には社会の底辺に生きる多くの先住民女性たちが存在する。ここではひとりの女性指導者
リゴベルタ・メンチュウ女史を通して、この地域の先住民女性たちの闘いの歴史・複雑な社会構造内で
の女性の地位・問題点などを明らかにしたい。
◆韓国男性学の現状と課題◆ 報告者 佐々木正徳
韓国では「ジェンダーに関する問題=女性問題」という認識が根強いものの、フェミニズムの影響を
受ける形で男性運動が生じ、男性学・男性研究を行う男性も少数ながら現れつつある。彼らの多くは、
子どもと接する時間を大切にし、子どもを性別に関係なく平等に大切に育てる「よい父親」になることを
目標として活動している。彼らは「父親」という役割を自明視している点で必ずしもジェンダーの規範から
自由な存在であるとはいえないが、「家父長的」「男尊女卑的」といった従来のステレオタイプな韓国の
男性観からは逸脱した存在であり、韓国男性の多様性を顕在化させてくれる存在である。グローバルと
ローカルの二つの視点を意識しながら、韓国の男性学・男性運動の現状と課題を把握し、今後の発展
可能性について検討したい。