「福井県における在宅福祉サービスコーディネートシステムにおける在宅介護支援センターの役割と機能に関する研究(中間報告)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

福井県立大学看護福祉学部 久常 良

福井県立大学看護福祉学部 舟木紳介   

 

 

 

 

 

目  次

T調査の目的と視点                 

1.  調査の視点                                2                        

2.  調査の構成と本調査の目的                         3

3.  第1次調査の対象と方法                          3

4.  在宅介護支援センターの政策動向及び先行研究の概要             5

 

U調査結果の概要と分析                       

1.  調査結果の分析方法                            14       

2.  対象者の基本属性                             14

3.  支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度                   14

4.  支援センターについての理解度                                             15

5.  相談協力員の役割と機能に対する意識度および実施度                         17

6.  支援センタースタッフへの訪問聞き取り調査結果

/相談協力員アンケート調査自由記述                                       20

7.ケーススタディ1 東京都東久留米市                    21 

 

V調査結果の考察                                         

1.  介護保険制度におけるの相談機能の変化                   24

2.  支援センター及び相談協力員の役割の不明確化                              24

3.  地域における予防につながる支援センターの課題                             25

                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

T 調査の目的と視点    

             

1.調査の視点

 1989年(H1)に創設された在宅介護支援センター(以下「支援センター」と略記)は、在宅で生活する高齢者やその家族等からの介護に関する相談に応じ、多様なニーズに対応した各種保健福祉サービスが総合的に受けられるよう、地域の保健・医療・福祉サービス実施機関との連絡調整などを行うことを目的として整備されてきた。さらに支援センターは、中学校区域という小地域で要援護者やその家族に関する状況を常時調査し実態把握を行うと同時に、相談協力員との連携・協力をはじめとして、近隣のボランティア等を含めた小地域ネットワークの形成を図る地域福祉機能持った社会資源としても重要になっていった。

20004月の介護保険制度導入に伴い、支援センターの設置基準は変更され、原則として各市町村に1ヶ所の「基幹型支援センター」および各中学校区域に1ヶ所の「地域型支援センター」が設置されることとなった。これまで各支援センターには医療・保健職および福祉職の2名を配置基準としていたが、地域型支援センターにおいては1名分に満たない運営費に削減され、その他の経費に関しては、実態把握加算や介護保険制度上の居宅介護支援事業に対して事業費補助されることになった。この政策変更によって支援センターは介護保険において限定された対象者への居宅支援事業機関としての役割を一層強めている。これまで区市町村より委託を受け、担当地域での公的総合相談、アウトリーチによる地域把握、相談協力員を中心とした地域ネットワーク形成といった支援センターが本来果たすべき固有の役割と機能が曖昧になっていく可能性がある。 

厚生労働省は地域型センターにおける介護予防機能の充実のために介護保険対象者以外の要援護となるおそれのある高齢者又はその家族のために「介護予防・生活支援事業」(平成12年度)、「介護予防プラン作成事業」(平成13年度)を開始しているが、これらの事業が支援センターの地域における予防機能、特に第1次的発生予防の活性化につながっているかどうか実情を検討する必要がある。

介護保険制度において申請していない人及び申請後自立と判定された人を合わせると高齢者全体の約9割になる。つまり、この制度は高齢者全体の約1割のみを対象とし、サービスもあらかじめ決められた内容に限定されているため、高齢者一人一人の地域生活を総合的にサポートすることは困難である。本調査において、高齢者の地域生活の権利保障を目的とした支援センターの相談援助機能およびネットワーク形成機能の福井県における現状と今後の変化を分析、考察を通して、支援センターの地域における予防機能を中心とする地域生活支援システムの重要性を明らかにしたい。

 

 

 

 

 

 

2.調査の構成と本調査の目的

本調査は、4つの調査を含む総合調査の第3次調査を中心とした中間報告である。本研究開始前に地域住民の支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度・理解度調査(1999年度)[1]、福井県内の全支援センター(52ヶ所)の実態把握調査(2000年度)[2]を実施した。本調査より貴基金特定地域研究助成を2年間受託することになったため、本研究助成においては本調査を第1次調査としている。

本調査(第1次調査)の目的は、介護保険導入後の地域生活支援システムおける支援センターの役割と機能の実態把握に向けた継続研究として、支援センターの地域ネットワーク形成において中心的な役割を担う地域人的資源である相談協力員及び民生委員の活動実態を把握することである。本報告では本調査結果の分析を通した実態について報告し、地域福祉における予防機能の理論的考察については論じないこととする。

 2次調査では、2002年度には県内のいくつかの支援センター担当地域において40歳以上を3段階(40〜64歳、65歳〜74歳、75歳以上)に分け、選挙人名簿から無作為抽出した高齢者に対して、訪問による聞き取り調査を実施する。調査項目としては、支援センターおよび関連する社会福祉施設・機関に対する認知度・理解度およびその方法、生活実態と地域社会との関わり等を予定している。

 上記の2つの調査結果の分析、考察を基に、アクションリサーチとして調査データを支援センタースタッフ、相談協力員、地域住民、関連する社会福祉施設・機関専門職に可能な限り公表し、積極的な情報交換および研究交流を呼びかけ、地域住民の地域福祉への参加・交流を図ることで、2年後の介護保険制度見直しに向けて、研究機関、市町村行政を含めた社会福祉の現場、地域住民が共に自分たちの地域福祉政策を自分たちで創るためのシステムづくりの基礎資料としたい。

 

3.第1次調査の対象と方法

☆支援センタースタッフへの訪問聞き取り調査

福井県内6つの地域の支援センタースタッフおよび1市の基幹型支援センタースタッフへの訪問聞き取り調査を実施した。3の@は訪問機関の概要と訪問時期である。併せて県および関係市町村の支援センター担当者への電話による聞き取りを行った。各支援センターの相談援助方法・システム作りの現状と課題、相談協力員の活動状況、地域における予防について実態把握と分析をした。

期間:2001年7月〜9月

3の@ 訪問機関の概要

機関名

聞き取り対象者

時期

   A市高齢福祉課

支援センター担当者

7月下旬

   A市基幹型支援センター

保健婦

8月初旬

   G支援センター       

社協職員、介護福祉士

8月中旬

   E支援センター   

社協職員2名

8月中旬

   B支援センター   

ソーシャルワーカー

8月下旬

   D支援センター   

ソーシャルワーカー

9月初旬

   C支援センター   

ソーシャルワーカー

9月初旬

   F支援センター 

看護婦

9月初旬

 

☆支援センターに関する地域人的資源についての実態調査

県内9つの支援センター担当地域の相談協力員(一部の地域では民生委員のみ)に対しての郵送による全数アンケート調査を実施した。地域の人的資源の活動実態を明らかにするとともに、支援センターについての認知と理解の実態把握および1999年度住民理解調査、2000年度支援センター職員実態調査結果との比較検討を加えて、地域福祉における予防を促進させるための要因について分析した。3のAに調査対象地域を表した。調査地域に関しては地域特性を考慮して群としてまとめて分析を行った。#E,G,I地域では相談協力員の役割を民生委員に協力依頼している。

期間:2000年9月7日から9月26日

有効回答率:216人中159人(73.6%)

 

3のA 調査対象地域 平成13年4月1日現在

調査地域

地域名

地理的要因

母体組織要因

人口

高齢化率(%)

A群(N=41)

A,B

都市地域

A=老健(医療法人)

30725

21.8

 

 

 

B=病院(医療法人)

 

 

B群(N=53)

C,D,H

都市近郊農村地域

C,D,H=特養(社福法人)

36939

16.9

C群(N=65)

E,F,G,I

農村地域

E,G=社協(社福法人)

38196

18.8

 

 

 

F,I=特養(社福法人)

 

 

 

 

☆先進地訪問調査(東京都東久留米市)の概要

 他県において支援センターを中心とした介護保険制度で自立と判定された高齢者に対する地域生活支援システムを介護保険制度施行以前より構築し、実践している東京都東久留米市[3]にて支援センター、行政、その他関連機関に対して訪問聞き取り調査を実施した。調査対象機関及び質問事項は以下のとおりである。機関選定等については東久留米市市役所介護福祉課にご協力いただいた。

 

A.中部在宅介護支援センター(幸町4-6-15保健福祉センター内)

日時:3月19日(火)

質問事項

  職員体制について(資格・勤続年数・バックグラウンド等)

  基幹型・地域型、運営協議会、自立支援会議について

  相談業務について

    毎月の新規相談件数・継続相談件数の現状および変化

    相談方法(電話・来所・訪問)の現状および変化

  担当地域での地域における予防について

1次発生予防のための活動(発生予防)

 

 

 

 

B.東久留米市社会福祉協議会(中央町1-17-17 )

(民間福祉オンブズパーソン制度事務局含む))

日時:3月20日(水)

 質問事項

  組織体制

  自立支援会議での役割

  支援センターの関係

  地域生活支援システム作りのための施策

  予防効果を高める地域組織化活動

  民生委員・福祉委員・相談協力員、社協、その他地域社会資源との関係

  保健・医療的予防活動との関係(保健センター等)

 

C.東久留米市介護福祉課(本町3-3-1東久留米市役所健康福祉部)

日時:3月20日(水)「地域ケア会議」及び「市の取り組み」

質問事項

  自立支援会議の目的・構成・実情・今後の方向性

  在宅介護支援センターの役割と機能

担当地域での公的総合相談窓口とアウトリーチによる実態把握

相談協力員を中心とした地域ネットワーク形成

  地域における予防について(相談協力員・民生委員・社協の地域福祉活動・その他の社会資源との関係、連携、協働について)

  介護サービス事業者協議会(介護予防・生活支援事業の供給主体について)

福祉政策に対する市民参加の状況

 

4.在宅介護支援センターの政策動向及び先行研究の概要

 創設から12年が経過した支援センター事業は、上記で既に述べたように地域の総合相談援助機関として全国的に展開され、高齢者地域ケアにおいて中心的な役割と機能を発展させてきた。相談協力員制度においても地域住民と支援センターのネットワークを形成する重要な地域人的資源として全国的に設置が推進されてきた。地域型支援センタ―10000か所の目標には達していないが、(1999年末全国6648か所)ゴールドプラン21において予算措置は講じている。支援センターの数が増加する一方で、介護保険制度施行に伴う政策動向の変化によりその役割と機能は大きく揺れ動いている。そして、介護保険制度がスタートするにあたって、対象とする高齢者の限定性の問題、ケアマネージャーの要援護者への専門的相談援助と母団体サービスの利用者確保という2面性の問題[4]等を解決するために支援センターの地域における「予防」機能の重要性は早くから指摘されてきた。

 1992年に設立した全国支援センター協議会は、1991,92,94、96、99年に全国の支援センター実態調査を実施し、支援センターの地域での相談援助活動の実情を明らかにし、社会状況の変化に対応しながら支援センター本来の役割と機能を模索してきた。1996年の全社協「支援センター機能のあり方検討委員会報告書においては、支援センターの機能を@相談援助機能、A地域把握機能、Bネットワーク形成機能、Cサービス提供機能の4つに分類し、地域で唯一のケアマネジメント機関として中心的な役割と機能を果たしていくことを確認した。しかし、その後の介護保険制度構想において、厚生省(現厚生労働省)は支援センターを予防活動機関および総合的保健福祉施策の中心として期待しているものの、現実には介護保険制度上のケアプラン作成機関としての業務を中心に他の居宅介護支援事業所と競争しながら事業展開をしなければならないような予算体制としている。

 一方、支援センターの介護保険制度対象外の高齢者に対する総合相談援助機関としての役割はますます大きくなってきている。なぜなら介護保険制度がスタートしても、現在高齢者全体の約9割は、申請をしない人又は自立と判定されている人であり、居宅介護支援事業を中心とした支援システムは、その9割の高齢者とつながりを持ち、日常的に社会的心理的にサポート可能な状況にない。1999年に実施された介護保険制度以前の相談業務における介護保険給付対象とそれ以外に該当する相談内容とその割合についての調査結果[5]をみると、介護保険給付対象外の利用者に対する業務の割合が全体の相談業務の中で少なくとも3割、多ければ5割の比率を占めることが明らかになっている。しかし、現在の支援センター運営に係る予算は、支援センターの業務の多くが介護保険給付対象になるだろうという厚生省の想定のもとに大幅に削減された。この制度・政策的問題は現場職員の努力のみでは現実的に対応が困難であるといえよう。

その他、介護保険制度施行後の政策変更による支援センターの役割と機能への影響については様々な問題が指摘されている。第一に、介護保険制度上の支援センターは、居宅介護支援事業におけるケアプラン作成機能に業務が集中することで、これまでの業務で中心的な総合相談援助機能を果たすことが困難になることが予想されてきた。労働科学研究所が19981999年に行った「在宅介護支援センターの地域ネットワークの形成等に関する調査」[6]は、支援センターの「地域把握機能」を前提とした「地域内の保健、医療、福祉のネットワーク、地域住民のネットワーク形成」の実態の解明と今後の在り方について検討を目的として、全国支援センターの50%に対するアンケート調査及び15支援センターの典型事例のケーススタディ調査を実施した。調査結果では、支援センター職員の約60%が介護保険給付外の相談やサービス提供まで対応したいと答えているが、約25%が対応したいが、居宅介護支援業務等を考慮すると現実には難しいと答えている。また、担当区域内の要援護老人等の実態把握において、独自の訪問活動があるのは約33%のみ、高齢者台帳を整備しているのは43%、情報をデータベース化したのは20%以下であった。常勤2人体制においてでさえ、約50%の職員が高齢者の実態把握に困難を感じていた。報告書は、ケアマネジメント機関として特化するのではなく、公平・中立的な第一線の総合相談援助機関としての存在意義を重視すべきであり、住民参加(民生委員、老人クラブ、相談協力員等)による地域ネットワークの形成を提言している。 

藤原氏は、1997年、2000年に兵庫県内にてアンケート郵送による支援センター実態調査[7]を実施し、介護保険制度導入により、居宅介護支援事業業務の集中による支援センター本来の機能(保険給付対象外のサービス等)の縮小化の弊害が起こっていると論じている。1997年と2000年との職員意識の変化では「本来の機能よりもケアプラン作成機能に傾注する傾向にある。」「業務増加で人員が足りない。」「一つのケースに深く関わる時間がない。」「保険給付対象外のサービスが手薄になる」という結果がでている。

早くから支援センターのケアマネジメントの方法、組織要因について研究してきた副田氏[8]は、介護保険制度施行直前の支援センターの展開状況把握を目的として、1999年に支援センタースタッフへの訪問聞き取り調査(東京都25ヵ所、近県都市1か所)を実施している。調査結果は、エリア限定なしにケアマネジメントを行う居宅介護支援事業者としての支援センターの問題点を指摘し、十分なモニタリング、再アセスメントのためにはエリア限定は必要であり、支援センターとして期待される予防的生活支援や総合相談機能を果たすためにも重要であると論じている。上記で述べた労働科学研究所の調査結果においても、エリアを限定し、支援センター複数の支援センター間における活動区域の協定を実施している場合、勤務体制は週休2日が多くなる一方で、相談件数が増加している。つまり、エリア限定が相談活動の効率的な展開に影響しているのである。また、介護保険制度では要介護度に応じて利用可能なサービスとその上限を設定した上で利用者選択を強調しているが、ケアマネージャーとしての支援センター職員は事業者間の競争により、利用者・家族の意向や要望のままにケアプランを作成する「要望志向型サービス」のプラン作成を行う傾向にあることを指摘している。このことは、ケアマネージャーとしての支援センター職員は、高齢者のニーズのとおりに対応するだけのマネジメント志向の相談援助を行う傾向にあり、本来支援センターが持っていた高齢者一人一人の地域生活の権利を十分に保障するための総合的な相談援助機能を果たすことが制度上困難になっていることを表している。

次に、介護保険制度上の支援センターは上記に論じた公的総合相談援助機関としての役割と機能の減退に伴い、介護保険制度対象外の高齢者を含めた地域全体における地域把握機能、ネットワーク形成機能においても実践がより一層難しくなることが指摘されている[9]。これまでの施策としては相談協力員を中心とした地域福祉活動により地域把握及び地域ネットワーク形成をすることが期待されていたが、その整備率が上がらなかったことも要因となり、実際の相談協力員活動の状況やその効果について未整理であったともいえる。根本氏を中心とする研究グループは、「社会的孤立状態にある要介護独居高齢者へのソーシャルワーク実践に関する研究」[10]として、特に支援センターのアウトリーチ実践について訪問聞き取り調査(8か所)を実施した。この研究ではアウトリーチを1)ニーズの掘り起こし、2)情報提供、3)サービス提供、4)地域づくりに分類し、調査結果では効果が出るまでに相当の時間が必要ではあるが、地域づくりや他機関連携により住民や民生委員とのつながりが深まったことを示している。支援センターのアウトリーチの問題点として、まずニーズの掘り起こしに相談協力員制度のみが対応しており、特に精神障害、痴呆性高齢者、社会的孤立状態にある高齢者などは特別な介入の技術なしに訪問するだけで信頼関係を築くのは困難であると論じ、専門職としてのソーシャルワーカーによるアウトリーチが必要であることを指摘している。また、地域組織化の重要性が認められる一方で、支援センターの社会福祉機関としての歴史の浅く、さらに人員も不足しており、実践における状況は厳しい。しかし、公的に人件費を保証され、中学校区域という高齢者・家族にもっとも身近なソーシャルワーク相談援助機関としての役割は地域ケア全体において重要である。根本氏らは、アウトリーチとしての訪問ついては言及しているが、ニーズを把握し、サービスにつなげることを中心においており、(訪問を含めた)総合相談の重要性については詳しく論じていない。

 藤松氏は[11]1都市での職員等への訪問聞き取り調査を通して、地域総合ケアシステム構築における支援センターの役割と機能、特にニーズ把握機能を相談協力員という一般住民に委ねてしまうことの問題性を指摘している。介護保険制度上においてこれまで以上に高齢者のプライバシーの保護が必要であり、従来どおり地域住民相互の信頼関係の構築には力を注ぐべきであるが、ニーズ把握に際しては市町村の責任において専門のスタッフを増設し、相談援助機能の拡充をはかることの方が有効であると論じている。また、相談協力員制度の形骸化についても指摘し、協力員を設置しただけではニーズ把握に結びつかず、むしろ併設機関へのボランティア活動に参加している市民などから情報提供されることがあり、日常的な地域住民との交流が情報ルートを開拓していく確実な方法だと論じている。

しかし、実際に支援センターの相談経路に関する調査結果[12]をみると相談協力員からの相談、照会は5%に満たないが、60%を超える家族又は本人からの相談に相談協力員活動の影響がどれほどあるのかについてはこの結果からは把握することはできない。支援センターを協力員から知ることによる予防の効果の度合いにおいても同様である。この点については、相談協力員活動の実態と地域の高齢者との関係について調査する必要がある。

上記に論じてきた先行研究は、介護保険制度上の支援センターの人件費削減とケアマネ業務と本来の相談援助業務の二面性の現状と問題点を指摘し、支援センターの役割と機能における公的総合相談援助機能及び地域ネットワーク形成が重要であることを表している。しかし、地域生活支援システム全体の中で予防機能まで含めた支援センターの機能と役割に関する今後の方向性が十分に示されていない。2001年度からは介護予防プラン事業がスタートしたが、実施するかどうかは市町村の選択に任されており、たとえ実施したとしてもあくまでも介護保険制度対象外の在宅福祉サービスを補足的に支援するという役割を持っているにすぎない。現在の支援センターに関わる政府の政策は、相談援助機能を中心とした公的総合地域生活支援機関としての支援センター本来の機能を弱体化させ、発生予防まで含めた地域における予防を小地域において推進する可能性を引き下げているともいえるだろう。

 

4の@ 介護保険制度施行以前の政策動向

1989年(H1)

支援センターが各中学校区域に全国で1万ヶ所の整備目標でスタート。各センターに保健・医療職と福祉職の2名を運営費補助方式で市町村の委託により配置。

1992年(H4)

在宅介護支援センター実態調査 有効回答273(全社協)

1993年(H5)

在宅介護支援センター実態調査 有効回答576(全国支援センター協議会・全社協)

1994年(H6)

老人福祉法改正で「老人介護支援センター」として老人福祉施設として位置付け。

1994年(H6)

在宅介護支援センター実態調査 有効回答744(全国支援センター協議会・全社協)

1996年(H8)

介護保険制度におけるケアマネジメント機関として構想(高齢社会対策大綱)

 

在宅介護支援センター実態調査 有効回答1570(全国支援センター協議会)   

相談協力員設置率71%、78.5%が民生・児童委員と兼務         

1997年(H9)

介護保険制度における予防(保健サービス、独居老人見守り、住民活動組織化)活動機関および総合的保健福祉施策の中心として期待(厚生省)                   

 

在宅介護支援センターの機能強化と再構築をすすめるために−介護保険制度導入を展望して−支援センター機能強化検討委員会報告                                       @相談援助機能、A地域把握機能、Bネットワーク形成機能、Cサービス提供機能           2名の職員体制では地域に潜在している高齢者の状況把握は困難/相談協力員との連携強化/地域住民、町内会、自治会、ボランティア等との連携および情報の共有化が必要/65歳以上、以下の者に対する予防活動の検討/1名による地域型支援センターの容認

1998年(H10)

標準型に加えて基幹型、単独型支援センター設置。民間事業者への委託認可。事業費補助方式を導入。

 

 支援センターの地域人的資源とのネットワークの重要性、住民組織化の中心的役割、地域福祉計画上の総合生活相談機能を確認(基礎構造改革中間まとめについての意見交換会) 

 

在宅高齢者保健福祉推進支援事業

1999年(H11)

ゴールドプラン21 介護予防の推進、基幹型を中心とした地域ケア体制の構築         

 

在宅介護支援センター実態調査 有効回答835 8道県のみ(全国支援センター協議会)          3か月の相談実績調査を含む 

 

支援センター設置実績(全国6648か所)目標は10,000か所

2000年(H12)

大蔵省からの支援センター不要論

 

支援センター21宣言―倫理行動基準―公的人権擁護機関、公的地域生活支援機関、地域福祉活動機関としての役割と機能をアピール(全国支援センター協議会)

 

在宅介護支援センター運営検討特別委員会報告「これからの在宅介護支援センターの機能と役割について」 将来にわたる地域ケアにおける支援センターの重要性を確認

 

介護保険制度施行後の政策

 

介護保険制度スタート

 

基幹型―運営費1451.2万円、地域型―大幅削減され、276.7万円

 

実態把握加算@2700円、選択事業として介護サービス適性実施指導事業(福祉用具展示・紹介等)、介護予防・生活支援事業

 

運営費削減され、支援センター職員とケアマネージャーの兼務認める

 

支援センター実施要綱改正:支援センター対象者に「要援護老人」に加え、「要援護となるおそれのある高齢者又はその家族」を位置付ける

2001年(H13)

基幹型―運営費1498.5万円、地域型―運営費289万円 実態把握加算に加えて、介護予防プラン作成加算@2000円、住宅改修、福祉用具購入意見書作成加算@2000円、痴呆相談事業加算@30000円 その他介護予防教室事業、サービスマップ作成、ボランティアによる地域介護支援事業など

 

介護予防・生活支援事業実施要綱:各市町村保健センターと基幹型支援センターと機能的に一体化。居宅介護支援事業者も参画する地域ケア会議を開催。

 

 

 次に、支援センターの役割と機能に関する福井県における先行研究について論じたい。

私たちは、支援センターの実態を総合的に把握するために本調査以前に2つの先行調査を実施した。その調査結果について分析・考察の概要について説明したい。

 

☆地域住民の支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度・理解度調査

調査対象は、福井県内の支援センター担当区域5か所において、40歳以上を3段階(40〜64歳、65歳〜74歳、75歳以上)に分け、1地区1段階から30人ずつを選挙人名簿から無作為抽出した計450人である。調査の方法は、郵送によるアンケート調査(期間:1999年10月14日から10月28日)によった。表4のA、Bに結果の概要を一部示した。

 本調査結果は、高齢者への相談援助を中心とした地域生活支援システムの中心であるはずの支援センターの認知度が他の社会福祉施設・機関と比較して低いことを示し、支援センターが地域の公共性の高い社会資源としての役割と機能を十分に発揮していないと考えられる。相談協力員の認知度も民生委員などの人的資源と比較して相当低かった。理解度調査結果をみると、支援センターのもっとも基本的な機能である相談機能についてはおおむね理解されているといえるが、24時間相談できることへの認知が低かった。また、在宅福祉サービス推進においてもっとも重要なアウトリーチ的相談援助活動である安否確認や訪問活動が地域住民に十分に理解されていないという現状であった。相談援助活動の中心である訪問活動(安否確認を含む)や地域ネットワーク形成を通して、それぞれの担当地域でのアウトリーチから地域把握を行い、相談面接へつなげ、的確な社会福祉サービスに連携していくという支援センターを中心とする地域生活支援システムが十分に機能していない可能性がある。

また、在宅福祉サービスの認知度を地域別に分析すると影響している要因として社協、人的資源が浮かび上がり、在宅福祉サービスの認知において地域福祉活動の重要性が示された。つまり、支援センターの中心的機能である相談援助機能、ネットワーク形成機能を地域で向上させるためには、社協、人的資源等との連携・協力を強めるとともに、支援センターの持つ地域での予防的役割と機能に対する住民認知・理解を促進させる活動を進めていかなければならないだろう。

 

 

4のA 社会福祉サービスの認知度(%)

#知っている又は相談したことがある対象者の割合

 

住民認知調査(1999)

市町村又は役場

96.2

町内会長

93.3

民生委員  

85.8

特別養護老人ホーム

82.9

保健センター

80.8

社会福祉協議会

71.5

デイサービス・デイケア

70.0

ホームヘルプ

67.3

老人保健施設

59.9

訪問看護ステーション

53.6

ショートステイ 

52.4

在宅介護支援センター 

46.9

福祉委員  

43.3

福祉ボランティアグループ

38.9

相談協力員

33.0

福祉公社

22.2

平均

62.4

 

 

 

 

 

 

4のB 支援センターについての理解度(%)

支援センターは

そう思う

そう思わない

わからない

介護者も相談できる

74.9

0.5

24.6

福祉用具を紹介してくれる

67.3

6.4

26.2

相談は無料である

66.2

4.4

29.4

在宅福祉サービスを紹介してくれる

65.2

4.4

30.4

福祉の専門家が相談にのってくれる

59.1

8.9

32.0

介護の専門家が相談にのってくれる

56.9

9.9

33.2

おおむね65歳以上が相談できる

56.6

19.0

24.4

訪問してくれる

55.1

12.7

32.2

ボランティアの相談ができる

51.0

10.7

38.3

行政手続きをしてくれる

48.8

20.9

30.3

住宅増改築相談ができる

41.3

17.9

40.8

調査などもしている

40.0

16.0

44.0

安否確認もする

36.3

20.4

43.3

独立した機関である

30.7

24.8

44.6

24時間相談できる

27.7

27.7

44.6

 

 

 

 


☆福井県内の全支援センター(2000年度52ヶ所)の実態把握調査

アンケートによって機関の業務概要、職員体制を把握するとともに、今日の地域福祉の展開に、支援センターの機能と役割がいかに必要であるか、現場実務者に対して意識度・理解度調査を実施した。実態調査は郵送によるアンケート調査(期間:2000年4月28日から5月16日)によった。本報告では結果の簡単なまとめのみを掲載する(表4のC)。

 

4のC 支援センター職員の意識・実態調査(機能別・実施度順)

 

#重要群=(どちらかといえば重要+重要+とても重要)と意識している #あてはまる=実際の状況・実態にあてはまる

 

n=73 %

重要群

あてはまる

 

相談援助機能

 

 

1

相談は無料である。

98.6

100.0

2

訪問による相談をしている。

98.6

100.0

3

(母体施設以外の)在宅福祉サービスを利用者に紹介している。

95.9

100.0

4

行政手続きの代行をしている。

100.0

98.3

5

介護者が相談できる。

97.3

98.3

6

福祉用具を紹介している。

98.6

96.6

7

(母体施設の)在宅福祉サービスを利用者に紹介している。

91.8

94.8

8

24時間相談可能である

83.6

93.1

9

福祉の専門家が相談にのる。

97.3

88.1

10

おおむね65歳以上の方が相談できる。

82.2

86.4

11

看護の専門家が相談にのる。

97.3

84.7

12

ケアプラン作成をしている。

78.1

81.4

13

住宅増改築相談ができる。

93.2

81.0

14

一人暮らし高齢者に対して訪問活動をしている。

94.5

79.7

15

ボランティアに関する相談ができる。

86.3

53.4

16

要援護者に対して定期的に再アセスメントを実施している。

87.7

50.8

17

併設機関・施設からは独立した機関である。

80.8

25.9

 

平均

91.9

83.1

 

地域把握機能

 

 

1

安否確認のための訪問をしている。

90.4

79.7

2

センターについて地域にパンフレット等の広報誌を配布をしている。

84.9

78.0

3

地域に出向き、センターについての広報活動をしている。

90.4

72.9

4

安否確認のために電話をしている。

89.0

72.9

5

相談協力員を地域住民に委託している。

84.9

67.8

6

相談協力員に定期的に研修会を開催している。

84.9

50.8

7

担当地域の福祉ニーズや課題発見のための調査している。

91.8

44.1

8

相談協力員と定期的に懇話会をしている。

84.9

40.7

9

ボランティアのコーディネートを実施している。

46.6

12.1

10

利用者の権利擁護(虐待防止等)のための活動をしている。

69.9

6.8

 

平均

81.8

52.6

 

ネットワーク形成機能

 

 

1

市町村主管課担当者と定期的に情報交換している。

91.8

79.7

2

併設する母体施設との定期的な情報交換をしている。

91.8

69.5

3

(母団体以外の)他の在宅福祉サービス機関と定期的な情報交換をしている。

91.8

57.6

4

民生委員・児童委員・福祉委員と定期的に情報交換している。

90.4

55.9

5

高齢者調整サービスに参加している。

78.1

55.9

6

社会福祉協議会と定期的に情報交換している。

89.0

49.2

7

他の医療保険サービス機関と定期的に情報交換している。

86.3

49.2

8

他機関と定期的に事例研究会をしている。

82.2

47.5

9

センター内部で定期的に事例検討会をしている。 

86.3

40.7

10

担当地域住民と定期的に懇談会をしている。

76.7

15.3

11

地域ボランティアグループ等と定期的に情報交換をしている。

75.3

8.5

 

平均

85.4

48.1

 

支援センター職員実務者に対して、それぞれの項目(39項目)について重要と意識しているかどうか、実際に活動しているかどうかについて質問した。本調査結果では支援センターの事業内容の中でもっとも基本的で重要と思われる相談援助に関わる項目において、特に ‘併設施設から独立した機関である’、‘24時間相談可能である’の意識度が他の項目と比較して低く、その実態をみると‘併設施設から独立していない’と考える実務者が多い。また24時間相談の実態については逆に意識度よりも高い割合となっており、24時間相談の重要性が職員に十分に理解されていないことが推測できる。また、介護保険制度上の居宅介護支援事業に関する項目が含まれているが、ケアプラン作成についての実施度が意識度よりも高くなっている。介護保険制度上のケアプラン作成に意識と実際にずれを感じながら、業務の中心としているスタッフが多かった。

 次に、地域住民に対するアウトリーチ活動による地域把握に関する項目において、地域福祉活動の基本である調査について、意識度は高いが、実際の活動は十分にできていない。安否確認の項目についてはいずれも意識度は高いが、安否確認の実施度の低さからセンター側からの積極的なアウトリーチ活動が十分でないと推測できる。次に、支援センターの機関内部と地域の社会資源を含めた外部機関との連携・協力・ネットワークについての項目が含まれている。内部ネットワークについて意識度は高いが、実施度は相当低く、今後、施設・機関内の居宅介護支援事業を含めた内部ネットワークが重要になっていく上で大きな課題であろう。外部ネットワークの中で市町村担当者との情報交換はできているようだが、その他の機関については実施度が意識度よりも低かった。

 最後に、センターの活動実態と前記の住民のセンター機能に対する理解度調査の結果を若干比較したい。特に、支援センターの基本的機能(相談援助等)は実務者が考える実態と住民の理解度の差が大きく、このことは住民の理解不足というよりも、センター実務者の住民に対する情報提供不足が原因であると推測する

 本研究では、支援センターの地域生活支援システムにおける役割と機能の実態把握を試みた。アンケート調査方式という限界から、実際に介護を必要としている後期高齢者の在宅福祉サービス認知・理解度の実態把握および認知と理解の方法と方向の実態についてのデータは不十分であった。

 2000年の介護保険制度導入直前後に実施されたものであり、限定的ではあるが、介護保険制度導入前の支援センターに対する地域住民の認知・理解の変化をタイムリーに把握することができた。今後さらなる支援センターを中心とした社会福祉施設・機関および人的資源についての調査を通して支援センターの地域福祉機能についてより多面的な視点から分析、考察したい。そして、あらためてこれまでの支援センターの地域福祉活動の意味やコーディネートの方法および地域住民の認知と理解について、現状と今後の変化を分析、考察することは、今日の高齢者地域生活支援システム全体の方向性を探る上でたいへん重要であろう。

 

 

 

 

 

 

 

U調査結果

 

1.調査結果の分析方法

本調査(第1次調査)は、支援センターを中心とする地域生活支援システムについてのスタッフへの訪問聞き取り調査及び支援センターに関する地域人的資源についての相談協力員に対するアンケート調査の2つの調査によって構成されている。本調査結果に分析においては、上記の支援センタースタッフに対する訪問聞き取り調査結果の内容と関連付け、協力員に対するアンケート調査結果を中心に分析したい。

 

2.対象者の基本属性

 対象者の性別、年齢階層、在住年数、居住地域、職業については表2の@表2のAに示した。主要な結果は以下の通りであった。.

 

表2の@ 対象者の基本属性

年齢

47〜83歳  (平均63.96歳)

在住年数

3〜74年   (平均48.75歳)

性別

男 46.5%  女 53.5%

職業

無職46.8% 農業22.0% 自営業17.6% 会社員6.3%

 

 

 

表2のA 地域別の基本属性

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体(N=159)

A群(N=41)

B群(N=53)

C群(N=65)

介護経験がある

58.0

70.0

49.1

57.8

民生委員をしている

91.2

84.9

93.8

91.2

福祉委員をしている

11.3

9.8

15.1

9.2

町内会長をしている

28.9

36.6

30.2

23.1

相談協力員をしている***

63.5

40.6

52.5

10.8

年齢が65歳以上である

50.3

52.5

52.8

46.9

 

平均年齢は約64歳、在住年数平均48.8年(3〜74年)であった。相談協力員の多くが高齢者であることが分かる。また、本調査では相談協力員を設置していないの地域があり、全体で相談協力員をしている人は63.5%であった。民生委員である割合は91.2%で、相談協力員のほとんどが民生委員を兼務していることが分かる。介護経験者は5割を超え、都市部のA群では7割を超えており、相談協力員の多くが個人的にも介護と関わったことがあると分かる。

 

3.支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度

支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度について表3の@に示した。性別、年齢階層別、在住年数別、地域別、介護経験別、人的資源別にクロス集計を行った。いずれも統計的な有意差がなかったので今回の結果分析では省略する。  

表3の@

社会福祉サービスの認知度(%)

 

全体(N=159)

1999年度    住民認知調査

特別養護老人ホーム

100.0

82.9

市町村又は役場

99.4

96.2

民生委員  

99.4

85.8

保健センター

99.4

80.8

社会福祉協議会

99.4

71.5

デイサービス・デイケア

99.4

70.0

在宅介護支援センター 

99.4

46.9

町内会長

98.7

93.3

ホームヘルプ

98.1

67.3

ショートステイ 

96.8

52.4

訪問看護ステーション

94.9

53.6

福祉委員  

92.9

43.3

老人保健施設

91.6

59.9

福祉ボランティアグループ

90.9

38.9

相談協力員

86.5

33.0

福祉公社

69.7

22.2

平均

94.8

62.4

 

全サービスについての平均認知度は94.8%であり、対象者の相談協力員(民生委員含む)のほとんどは社会福祉サービスについて認知していることが分かった。相談協力員及び福祉公社の平均認知度が他のサービスと比較して若干認知度が低くなっている理由は、いくつかの調査地域では相談協力員制度や福祉公社が存在しないためである。また、1999年住民調査の平均62.4%と比較しても、多くの項目において認知度がかなり高くなっている。

 

4.支援センターについての理解度

 理解度の単純集計を行い、表4の@に住民調査、職員実態調査との比較表を示し、表4のAに地域別、相談協力員別、介護経験別にクロス集計を示した。この調査結果については‘わからない’と答えた対象者については分析から除いた。

 

 

表4の@

支援センターについての理解度

(下記の事柄について‘そう思う’と答えた対象者(%)

 

全体(N=159)

1999年度    住民理解調査

2000年度     職員実態調査

介護者も相談できる

96.8

74.9

98.3

相談は無料である                       

95.6

66.2

100.0

在宅福祉サービスを紹介してくれる

95.5

65.2

94.8

福祉用具を紹介してくれる

94.9

67.3

96.6

ケアプランを作成している

89.2

 

81.4

福祉の専門家が相談にのる             

86.6

59.1

88.1

訪問相談している

80.9

55.1

100.0

要介護認定調査をしている

77.7

 

 

行政手続きをしてくれる                   

76.3

48.8

98.3

住宅増改築相談ができる

75.3

41.3

81.0

地域で広報活動をしている

74.8

 

72.9

介護予防活動をしている

72.8

 

 

地域調査などもしている

70.5

40.0

44.1

ボランティアの相談ができる

69.4

 

53.4

おおむね65歳以上が相談できる

66.9

56.6

86.4

保健・医療の専門家が相談にのる

65.8

 

 

独立した機関である

62.2

30.7

25.9

安否確認をする

58.1

36.3

79.7

24時間相談できる

44.2

27.7

93.1

平均

76.5

31.6

66.2

 

 

 

 

 

相談協力員の支援センターの役割と機能についての理解度は、平均理解度は76.5%であり、いずれの項目においても1999年住民調査結果よりも高かった。6項目(独立した機関、在宅福祉サービス紹介、ボランティアの相談、地域調査、ケアプラン作成、地域で広報活動)において昨年度職員実態調査結果よりも理解度の割合が高かった。支援センターのもっとも基本的で重要な機能である相談に関する項目は、おおむね高い理解度を示したが、 ‘24時間相談できる’に関しては職員実態調査では90%以上の割合を示しているにも関わらず、1999年住民調査27.7%と同様に44.2%でもっとも低い理解度であった。介護保険の影響もあり、ケアプラン作成の項目は高い理解を示す一方で、‘地域調査’‘安否確認’などの支援センター固有の地域把握機能はそれほど高い理解度を示していない。

ここで興味深いことは、相談協力員と住民の理解度に大幅な差がある一方で理解度の順位はおおむね一致していることである。相談協力員の理解度を高低順にし、1999年住民理解度調査、2000年職員実態調査のデータ順位と比較を試みた。相談協力員の理解度の順位と住民の理解度についていくつかの項目が異なっているものの、それらの順位には強い相関関係が見られ(相関係数0.918)、この結果から相談協力員の理解度と住民の理解度の間に何らかの関係があると推測できる。

協力員別、介護経験別でクロス集計を実施すると、協力員である、介護経験がある対象者の理解度平均が協力員でない、介護経験のない対象者より若干高かった。協力員であることや介護経験があることは支援センターの理解が高まる一つの要因と推測できる。地域別には相談は無料である、福祉の専門家が相談にのる、行政手続きをしてくれるという項目のみに統計的な有意差が表れた。

 

 

 

 

 

 

表4のA

地域別支援センターについての理解度

相談協力員別支援センターについての理解度

介護経験別支援センターについての理解度

(下記の事柄について‘そう思う’と答えた対象者(%)

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体(N=159)

A群(N=41)

B群(N=53)

C群(N=65)

協力員である(N=101)

協力員でない(N=57)

経験あり(N=91)

経験なし(N=65)

介護者も相談できる

96.8

90.2

98.1

100.0

95.0

100.0

97.8

96.9

相談は無料である 地域別** 協力員別*

95.6

92.7

100.0

93.8

97.0

93.0

96.7

93.8

在宅福祉サービスを紹介してくれる

95.5

95.0

96.1

95.2

95.9

94.7

95.6

96.8

福祉用具を紹介してくれる

94.9

97.6

90.4

96.9

94.0

96.5

95.6

93.8

ケアプランを作成している

89.2

85.4

88.7

92.2

87.1

93.0

87.9

92.3

福祉の専門家が相談にのる地域別* 協力員*

86.6

87.8

96.2

78.1

92.0

77.2

87.9

84.4

訪問相談している

80.9

77.5

90.6

75.0

85.0

73.7

78.9

83.1

要介護認定調査をしている

77.7

77.5

75.5

79.7

75.0

82.5

80.0

75.4

行政手続きをしてくれる 協力員別* 介護経験別**

76.3

82.9

84.6

65.1

83.0

64.3

81.1

70.3

住宅増改築相談ができる

75.3

61.0

81.1

79.7

72.3

80.7

76.9

73.8

地域で広報活動をしている

74.8

77.5

80.8

74.8

78.8

67.9

78.7

70.3

介護予防活動をしている

72.8

70.0

75.5

72.6

71.9

74.5

69.4

78.1

地域調査などもしている

70.5

70.0

71.2

70.3

72.7

66.7

73.3

67.2

ボランティアの相談ができる

69.4

58.5

80.8

67.2

72.0

64.9

68.1

71.9

おおむね65歳以上が相談できる

66.9

70.7

62.3

68.3

65.3

69.6

71.1

60.0

保健・医療の専門家が相談にのる

65.8

70.0

54.9

71.9

62.2

71.9

71.9

57.8

独立した機関である

62.2

67.5

65.4

56.3

66.7

54.4

61.8

64.6

安否確認をする

58.1

60.0

57.7

57.1

59.6

55.4

61.1

54.0

24時間相談できる

44.2

43.9

48.1

41.3

49.0

35.7

48.9

37.5

平均

76.5

75.6

78.8

75.6

77.6

74.6

78.0

74.8

 

 

5.相談協力員(民生委員を含む)の役割と機能に対する意識度および実施度

意識度調査は、対象者が地域で行っている福祉活動に関する項目(予防機能10項目、ネットワーク機能10項目)について、5(とても重要)、4(重要)、3(どちらかといえば重要)、2(どちらでもない)、1(重要でない)の5段階の中から1つを選択させたが、5〜3を重要群という1つのカテゴリーとして分析に利用した。また同様の項目について実際の状況とあてはまるかどうかを質問した。地域別の結果を表5の@に示した。

 

 

 

 

 

 

表5の@

地域別の重要度および実施度

(下記の事柄について‘重要である’‘あてはまる’と応えた対象者(%) 

#重要群=(どちらかといえば重要+重要+とても重要)と意識している#あてはまる=実際の状況・実態にあてはまる

(予)は予防に関する項目、(ネ)はネットワークに関する項目である。 

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体(N=159)

A群(N=41)

B群(N=53)

C群(N=65)

全体(N=159)

A群(N=41)

B群(N=53)

C群(N=65)

n=159 %

重要群

重要群

重要群

重要群

あてはまる

あてはまる

あてはまる

あてはまる

(予)訪問による相談や声かけをしている。重要度*

97.4

100.0

92.3

100.0

89.3

97.3

91.8

82.5

(予)安否確認のための訪問をしている。

98.7

100.0

96.2

100.0

85.3

92.1

87.8

79.4

(ネ)民生委員・児童委員・福祉委員と定期的に情報交換している。重要度*

93.3

100.0

96.1

87.3

82.6

89.2

81.6

79.4

(ネ)定期的に協力員のための研修会に参加している。

94.4

93.8

89.6

98.4

80.5

70.3

81.6

85.7

(ネ)社会福祉協議会と定期的に情報交換している。

95.8

91.4

93.5

100.0

79.9

81.1

69.4

87.3

(予)各種在宅保健福祉サービスを利用者に紹介している。

96.6

97.2

98.0

95.2

76.0

78.9

73.5

76.2

(予)安否確認のために電話をしている。

93.2

97.1

92.0

91.8

73.2

70.3

79.6

69.8

(ネ)高齢者同士の交流促進のための活動をしている。実施度***

89.6

97.2

92.0

82.8

68.5

89.2

73.5

52.4

(予)担当地域で支援センターについての広報活動をしている。

94.4

100.0

93.6

91.7

67.3

68.4

77.6

58.7

(ネ)市町村担当職員と定期的に情報交換している。 実施度*

90.4

84.4

89.1

94.8

66.4

62.2

55.1

77.8

(ネ)支援センター職員と定期的に情報交換している。実施度*

89.9

93.5

91.8

86.0

63.1

56.8

79.6

54.0

(予)地域で協力員以外に福祉活動をしている。

86.8

91.4

81.3

88.7

62.4

81.1

65.3

49.2

(予)担当地域の福祉ニーズや課題発見のための調査している。

88.4

87.9

89.6

87.7

54.4

62.2

55.1

49.2

(ネ)担当地域住民と定期的に懇談や情報交換をしている。

86.5

91.2

84.4

85.2

49.0

64.9

44.9

42.9

(予)ボランティアに関する相談ができる。

84.9

89.3

84.8

82.7

44.3

45.9

53.1

36.5

(ネ)公民館と定期的に情報交換している。            重要度*** 実施度***

67.9

83.3

84.1

43.1

43.0

73.0

55.1

15.9

(予)利用者の権利擁護(虐待防止等)のための活動をしている。

85.5

92.6

81.8

84.9

38.3

35.1

40.8

38.1

(ネ)地域ボランティアグループ等と定期的に情報交換をしている。

69.8

80.6

71.1

62.3

37.6

43.2

46.9

27.0

(ネ)医療又は保健サービス機関と定期的に情報交換している。

77.6

83.3

79.1

73.1

28.9

27.0

34.7

25.4

(予)ボランティアのコーディネートを実施している。

73.9

81.5

77.5

67.3

25.5

24.3

36.7

17.5

重要群の全項目平均は87.8%であり、相談協力員(又は民生委員)の担当地域での多岐にわたる地域福祉活動についての理解の度合いが高いことを示している。これらの活動に対する重要度の意識が高い一方で、‘あてはまる’と答えた全項目の平均は60.8%であり、実際の活動とに大きなギャップのある項目もあった。次に、相談協力員活動の実施度を高低順にし、重要度のデータ順位と比較を試みた。それらの項目順位には強い相関関係が見られ(相関係数0.817)、この結果から相談協力員が活動に対して重要と意識している項目については、実際の活動の割合も高くなっていることがいえる。

いくつかの項目の結果に注目すると、相談協力員活動において予防機能を高めるもっとも重要な項目である‘訪問による相談や声かけをしている’、‘安否確認のための訪問をしている’が重要度、実施度の両方でもっとも高い割合を示していた。調査対象とした協力員及び民生委員は担当地域において積極的な地域把握活動を意識、実践の両方の面で展開している。一方で相談協力員と地域ネットワーク形成との関係に注目すると、相談協力員の多くが民生委員又は福祉委員を兼務しているということもあり、民生委員などの人的資源や社会福祉協議会との情報交換に対する重要度、実施度の割合は高い。しかしながら、協力員がもっとも連携をする必要のある支援センターとの情報交換については、実施度全地域平均63.1%のみであり、特に都市部の協力員の割合が56.8%と低かった。C群の実施度が低い理由は、C群に相談協力員制度がなく、対象者が民生委員であるからということが予想できる。さらに、担当地域における支援センターについての広報活動は、全地区平均実施度が67.3%で、これも都市部の割合が低く、協力員と支援センターとの情報交換を通した連携が実際の現場で機能していない可能性がある。

次に、地域別、相談協力員別、介護経験別でクロス集計を実施した。地域別では‘公民館との定期的な情報交換’が意識度、実施度とも顕著な有意差があり、‘高齢者同士の交流促進のための活動’が実施度で顕著な有意差がでた。また意識度、重要度の地域別平均をみるとC群がいずれももっとも低い割合となった。相談協力員別でも‘公民館との定期的な情報交換’が意識度、実施度とも顕著な有意差があり、‘高齢者同士の交流促進のための活動’が意識度、実施度で有意差がでた。また意識度、重要度の相談協力員別平均をみると‘協力員である’がそうでない場合よりも高い割合となった。介護経験別では、‘地域で協力員以外に福祉活動をしている’が実施度で顕著な有意差があった。‘公民館との情報交換’が協力員でない人及びC群の対象者は顕著に低い意識度、実施度であった理由は、小町村では社協の地域福祉活動が公民館ではなく老人福祉センターで実施されているからであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6.支援センタースタッフへの訪問聞き取り調査結果と相談協力員アンケート調査自由記述

2000年度支援センター職員実態調査結果一部含む)

自由記述全体のまとめ ○は肯定的表現、●否定的表現

介護保険制度に関して

協力員から

●利用料・保険料が高い(ホームヘルプ、介護用品)

 

●独居、老夫婦、家族同居介護/老老介護の困難性

 

●施設・病院寝たきり→行政が在宅サービスの充実を

 

●ケアマネが自己活動中心的、利用者中心でない

 

○サービス利用しやすくなった

スタッフから

○支援センターの母団体からの独立性●実態は独立していない

 

○専任+スタッフ増でセンター本来業務(訪問相談、実態把握)を充実

 

●施設入所待機者増加←在宅利用料が高いため

 

●母団体以外ケアマネとの連携困難(実態把握/訪問)

 

●センター業務がケアマネ業務兼任+介護認定調査兼任で困難

 

●利用者の主体性低下、制度理解不十分

 

●ケアマネの質低下(営利・効率主義)[13]

 

●行政が情報提供しない、実態把握加算へ非協力的

 

●認定後もサービス利用しない、利用抑制

(参考:福井市実態調査[14]

 

●地域ケア会議回数減少

 

介護保険制度以外の予防活動について

協力員から

●独居、日中独居老人、自立判定者の閉じこもり防止、声かけ、見守り重要

 

●独自の在宅サービス(デイホーム、雪かき、たまり場作りなど)重要

 

●災害時等の高齢者支援体制の整備必要

 

●介護者へのケア、サポートネットワーク作り必要

スタッフから

●都市部自立高齢者の隠れた生活問題

 

●独居(日中のみ含む)、自立判定者の訪問、総合相談、安否確認、調査重要

 

●介護保険以外のサービス重要(見守り、予防活動、デイホーム、配食)

 

●介護予防プラン 作成予定本年度ない

 

○独居老人の介護予防プラン作成予定

 

相談協力員、民生委員の活動について

 

●高齢者の情報入らず、状況把握困難

協力員から

●人的資源、ボランティア重要性PR・意識啓発活動望む

 

●支援センターとの話し合い・連携減少○センターとの連携OK

 

●ケアマネとの連携困難

 

●地域ネットワークづくりが必要

 

●高齢者のプライバシー問題あり

 

○共働き家族がサービス利用増加

スタッフから

○協力員との協力体制はできている

 

○実態把握うまくやっている

 

○介護予防プラン作成を予定している

 

●高齢者の情報提供及び実態把握協力できない

 

●協力員以外の人的資源との連携不足

7.ケーススタディ1 〜東京都東久留米市〜

 東久留米市は、東京都心から電車で約40分の郊外に位置する人口約113,000人のベットタウンである。市民参加を目標に福祉行政を進めてきた革新市政3期後、2002年2月に保守系市長が誕生した。当市の福祉行政は、介護保険制度において「自立」と認定された人を含めたすべての高齢者に対する総合的な介護予防・生活支援サービスシステム作りを全国で先駆けて実施してきたことで、様々な研究誌等でも取り上げられた[15]。本報告においては、東久留米市の地域生活支援システムにおける支援センターの役割と機能を中心に報告したい。

 

<東久留米市の概況及び高齢者生活支援システムの概要>

高齢者人口約17,000人、高齢化率が15.0%で毎年約1%ずつ上昇している。産業構造としては第1次産業が2000人以下、第2次産業としては小規模工場が数カ所あり、人口の約8割がサラリーマン世帯である。そのため、財政の54%は市民税により、市財政力は近隣都市と比較して弱い(財政力指数0.817多摩27市中23[16])。所得格差について他市と比較して生活保護率は低い。

 市内の在宅介護支援センターが3か所設置されており、すべて特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人に委託されている。中部在宅介護支援センターのみ市保健福祉センター内に設置されている。現在のところ基幹型支援センターを設置せず、市介護福祉課が自立支援会議、介護サービス事業者協議会(介護支援専門員連絡会議、サービス情報検討委員会、苦情処理委員会、介護サービス評価委員会の4つの委員会で構成)の事務局として基幹的役割を担っている。また、常勤・非常勤のケアマネージャー12人で地域全体の約1割のケアプランを作成している。

 東久留米市では公募市民4名が参加している介護保険事業計画等策定委員会での検討の結果、介護保険対象の要介護等になる前に総合的な支援が必要であるという見解にいたった。1999年介護保険制度スタート直前より、「自立」と認定された高齢者等に対して、「自立支援会議」が生活支援の必要性を判断し、必要と認定された利用者に介護予防・生活支援サービスを提供している。

 

 

 図7の@のとおり、申請者に対して、要介護認定調査と同時に、生活支援訪問調査を行い、「自立」と認定された高齢者に対して、自立支援会議によって介護予防・生活支援サービスが必要かどうかについて検討し、サービス提供につなげるシステム体制を行っている。

市が提供している介護予防・生活支援サービスは以下のとおりである。

1.    自立支援型家事援助(生活支援ヘルプ) 週4時間限度

2.    ミニデイサービス           週2回を限度

3.    機能回復訓練・生活支援リハビリ    週2回を限度

4.    配食サービス             週4回を限度

 

<支援センターの役割と機能の実際>

 東久留米市の地域生活支援システムにおける支援センターの役割は、介護保険制度上のケアプラン作成業務が中心であり、2000年実績としてスタッフ1名が月6070のケアプランを作成し、市全体のケアプランの約6割を作成していた。市介護福祉課はこの状況に対応するために市独自に12名(常勤・非常勤)のケアマネージャーを採用し、市全体の1割のケアプランを作成し、支援センターのケアプラン作成業務削減が進められた。しかし、ケアプラン作成業務が減ったものの、スタッフは困難ケース、緊急対応ケースを中心としてケアプラン作成業務の負担を感じており、介護予防・生活支援サービスを中心とした自立者に対する支援や介護認定を受けていない大多数の高齢者の実態把握、訪問相談、地域のネットワーク形成等の役割を十分に果たせない状況にある。相談協力員制度も設置しているが、10名(4名は民生委員)のみであり、2か月に1回の情報交換だけでは一人暮らし、二人暮しの高齢者などの実態把握でさえ十分に出来ていない。相談協力員活動の充実のみならず、その他の人的資源(民生委員、自治会、老人会、NPOなど)の連携を基本とした地域ネットワーク形成は今度の大きな課題となるだろう。

 

<自立支援会議>

 当市の地域生活支援システムの大きな特色であるのが介護予防・生活支援サービスの認定・調整を行う自立支援会議である。介護保険制度スタート前に介護保険制度では対応することが難しい自立と判定された高齢者に対しても、ほぼ同等の負担によって生活支援ヘルプ、配食サービスといった日常生活を支援するサービスを調整・提供するために自立支援会議を立ち上げた。公募市民4名が参加している介護保険事業計画等策定委員会の成果として、市が介護保険制度のサービス対象・内容における限定性の問題を認識し、公的責任として独自の地域生活支援システム体制を進めたことは市民主体の地方分権行政の先進例であるといえる。

 一方で、自立支援会議で対象となる高齢者は、介護保険に申請した高齢者のみに限定されており、介護保険に申請していない高齢者全体の約9割の高齢者については対象となっていない。高齢者全体についての実態把握及び地域ネットワーク形成については今だ未整備の状況といえる。しかし、当市ではNPO法人や民間ボランティアを中心として自宅を利用したミニデイサービスは市全体に展開しており、介護保険に申請していない高齢者の地域における予防活動の展開を進めるために地区ごとのネットワーク形成の可能性は存在している。自立支援会議が、単なるサービス認定機能にとどまることなく、市全体の高齢者地域生活支援のための地域把握、ネットワーク形成のために社会福祉協議会、NPO、民間ボランティア、高齢者を含めた市民との連携協議を進める会議に発展していくことが必要であると思われる。支援センターはその際中心的な役割と機能を持つ可能性がある。

 

<民間福祉オンブズパーソン事業>

2000年スタートした市民(元施設長、元行政職員、ボランティアなど)による市民に開かれた福祉オンブズパーソン制度で事務局を社会福祉協議会に設置している。自由登録制であり、団体ごとに登録料を支払う(加入18団体、50団体中)。メンバーは公募したが、定員を満たさなかったのでボランティア2000人にアンケート調査を行い、回答者から75名を組織委員会が応募依頼し、書類審査をして、18人を決定した。

苦情受付:東久留米市内のサービスを利用しているすべての人々を対象。実績1件のみ。苦情は登録施設以外からも受付可能で調査依頼も可。登録施設には期限付き改善要望。

3者サービス評価:定期訪問調査を実施。報告書を作成し、社協にて公開。第3者評価

の専門性を向上させるために、メンバーに対する研修強化。客観的評価は専門性が不足している。

東久留米市では、行政の第3者チェック機関としての苦情処理委員会(介護福祉課内)、市民第3者チェック機関としての民間福祉オンブズパーソンがそれぞれの特徴的な機能を活かしながら、福祉サービスの質に対するチェック機関としての役割を果たしている。課題として、民間オンブズパーソンは第3者機関としての専門性の低さ、法的権限の弱さがあるが、行政主導のチェック機関の機能とのバランスを持つことで、市民が中心であるという機能を最大限に活かすことが可能であろう。2年間の実績をみると、利用者からの苦情申し立てがほとんどない状況が続いており、利用者(利用者に関わる家族、介護者、隣人等を含め)の多くが自らの権利を認識し、アドボカシーを行うことが困難にある現状が表れているといえる。行政、市民オンブズパーソンは、そのような利用者のアドボカシ―力を高めるための施策を行うと同時に、地域において自ら権利主張を行うことが難しい市民を社会的に支援するためのアウトリーチ型の専門的な相談、地域把握、ネットワークの活動を積極的に進める必要があるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

V調査結果の考察 

 

1.介護保険制度における相談機能の変化

地域生活支援システムにおける支援センターのもっとも重要な機能は、‘相談援助’機能である。特に、支援センターはわが国の高齢者福祉サービス機関において、唯一の小地域単位のアウトリーチ型公的総合相談窓口として、中心的な役割と機能を担ってきた。本調査(第1次調査)結果でも、住民(40歳以上)の認知・理解はやや低かったが、スタッフ及び相談協力員(民生委員含む)の支援センターの相談援助機能に対する認知・理解・実施の度合いは高かった。しかし、支援センターの相談援助機能の重要な特徴である‘24時間対応’、‘公的機関としての独立性’が住民、スタッフ、相談協力員に十分に理解されておらず、ソーシャルワークとしての相談が地域の高齢者一人一人の権利として理解されていない現状を表しているともいえる。このような状況において、介護保険制度の登場による政策変更は権利としての相談を保障する支援センターの役割と機能を弱体化させ、多くの高齢者にとっての地域生活の権利が侵害されつつある。介護保険制度スタートと同時に、運営費削減による人員削減及びケアマネージャー兼務・介護認定調査兼務等で支援センタースタッフの仕事量は増大し、支援センター固有の相談援助機能の充実どころか、ますます曖昧な形として相談援助機能が位置付けられているのである。

介護保険制度において高齢者福祉サービス・コーディネート量が増大したのは事実である。しかし、サービス内容は全国的にあらかじめ種類が限定され、対象者であるかどうかさえ要介護認定といった専門職側からのニーズアセスメントにおいて決められている。つまり、現制度は、利用者のニーズに合わせてと提唱しながらも、必ずしも高齢者一人一人の人権を積極的に保障することを前提として高齢者自身の判断によるニーズに対応するサービスを提供し、地域生活支援をしているとは限らないのである[17]。このような制度上の問題を解決するためにも、支援センターは、高齢者の地域生活権を保障し、生活全体(家族、介護者を含めて)の自己決定プロセス支える総合的な相談援助機能を発揮できる社会福祉機関として中心的役割を担っていく必要がある。

 

2.支援センター及び相談協力員の役割の不明確化 

地域における支援センターの相談援助機能を有効に発揮させるために‘地域把握機能’と‘ネットワーク形成機能’は不可欠な機能である。しかし、それぞれの機能に関わる社会資源、人的資源の役割はそれぞれの認知・理解によって大きく変わってくる。

すでに論じた先行研究では、相談協力員が高齢者のニーズ把握(特に痴呆性高齢者、社会的孤立者等)を行うことは専門性の不足、プライバシーといった問題もあり、支援センター等の専門職がその役割を果たすべきであるという指摘があった。一方、今回の実態調査結果は、相談協力員が(調査を除いて)地域における訪問活動、安否確認活動を展開するとともに、民生委員を中心とした人的資源ネットワーク形成において積極的な活動を行っていることが分かった。反面、支援センターの地域把握活動(調査、安否確認、訪問など)に関する住民の認知、理解の度合いは低く、地域把握機能及びネットワーク形成機能に関するスタッフの活動状況も積極的とは言い難い。スタッフの多くは、調査、訪問、安否確認、地域組織化、福祉組織化、人的資源の連携といった上記の機能を発揮するための活動が重要であり、積極的に展開したいという意識は高いが、人手が足りないという制度的な理由から実際の活動にはつながっていない。

このような支援センター事業の展開における住民、支援センター、相談協力員の認知、理解の相違は、地域生活支援システム全体における役割の相互理解が不十分であることが推測できる。支援センターの他の社会福祉機関と異なる固有の役割は、アウトリーチ型公的総合相談援助窓口である。支援センターが発揮すべき地域把握機能、ネットワーク形成機能は相談援助機能を専門的に拡大した形であり、現在の職員体制では社会福祉協議会と同じような組織化活動のあり方を実施するのは制度上困難であろう。

相談協力員が第1に果たすべき役割は、支援センターの役割の機能を十分に理解し、地域の中で高齢者一人一人に対話を通した説明をすることである。統計上、相談協力員からの照会は5%未満であるが、それが不十分であるかどうかは検討する必要がある。なぜなら、相談協力員活動によって(家族を含めて)高齢者一人一人が支援センターの固有の役割と機能を理解することができれば、専門的な相談援助窓口への距離は近くなり、十分に予防的な効果を持つ可能性があるからである。地域において専門的ニーズ把握を協力員という一般住民が行う必要はない。これまで行ってきた独居、日中独居、自立判定者等への見守り、安否確認活動をより効果的にするためにも支援センターの役割をあらためて相互確認、理解することが重要である。介護保険制度では協力員の多くが兼務している民生委員に対して行政が高齢者の情報提供を行わなくなったため、高齢者の生活状況等を把握することが困難になってきていると苦情がでているが、支援センターは安易に地域把握活動を協力員に委ねてしまうのではなく、支援センターと相談協力員の間においてそれぞれの役割に対する相互理解を進めることが必要であろう。

 

3.地域における予防につながる支援センターの課題

介護予防・生活支援の体制づくりに関しては、地域型支援センターを統括する機関として、基幹型支援センターが市町村単位で保健・医療・福祉サービス調整・指導を担う「地域ケア会議」を設置することになっているが、予防という一般住民を含めた広範囲な対象者への支援体制作りをたった2名の専門スタッフによって実践することは容易でない。ましてや地域型センターにおける地域把握機能、ネットワーク形成機能が十分に発揮されなければその支援体制づくりはさらに難しくなる。逆にいえば、地域における予防こそ地域福祉の視点から中学校区域という地域型センターの範囲において行うべき業務であろう。地域における予防、特に発生予防という観点においてみると、近年の支援センター運営費削減および介護保険制度上の居宅介護支援機関としての業務増は「予防」機能を高める効果的な施策とはいい難い。

一方、政府は介護予防事業として介護予防プラン作成事業等をスタートさせているが、現場スタッフは上記の政策変更の影響から実務的にも時間を取ることができない状況にあった。また予防プラン作成以前に、市町村の多くが介護予防・生活支援事業を選択せず、自立支援サービス提供体制を構築していない実情があった。現在の職員体制における介護予防プラン作成事業はあくまでも2次予防、つまりなんらかの在宅福祉サービスを必要としている人を早期に発見することを目的としており、地域における生活問題の発生予防を目的とした1次予防を行うには十分な施策ではない。

地域には介護保険を申請していない高齢者、申請後自立と判定された人が高齢者の約9割を占めている。その9割の高齢者の中には、要支援、要介護状態にありながら何らかの事情で申請していない高齢者、介護保険自体を知らない高齢者、自立と判定されたが生活問題を抱えた高齢者、介護保険制度上のサービスでは当てはまらない生活困難、生活不安を抱えた高齢者が少なからず存在する。一人暮し、二人暮し等で社会的に孤立しやすい生活状況にあれば、社会的に認知されない間に問題がさらに大きくなる危険性を持っている[18]。高齢者の地域生活支援システムとは、介護保険制度上の要支援、要介護状態と認定された約1割の高齢者のみを支えることでなく、すべての高齢者の地域生活権を保障するために経済的・社会的・心理的支援が総合的に実践されることである。そして、支援センターは、一人一人の高齢者の地域生活権を保障するための相談援助システム作りにおいて重要な役割と機能を担うと同時に、地域における予防機能を促進する大きな可能性を持っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



[1]久常良・舟木紳介(2000)「在宅介護支援センターの予防的地域福祉機能〜地域の社会資源としての機能と役割〜」『福井の科学者』81 17-26

[2]舟木紳介・久常良(2001)「在宅介護支援センターの地域福祉における予防機能」『2001年度日本社会福祉学会発表2001.10.21

[3] 月刊福祉編集部(2000)「「自立」判定者への支援と介護予防事業の展開−国の動向と地方の取り組みから−」『月刊福祉』83(13) 38-45

[4] 介護保険制度におけるケアマネージャーの二面性の問題については、吉本光一(1999)「介護保険制度における最適給付と最低給付―最低給付への後退に対する歯止めとしての行政課題―」『地域公共政策学会第1回研究大会介護保険制度分科会報告』に詳しい。

[5] 全国在宅介護支援センター協議会(2000)「平成11年度在宅介護支援センター相談業務状況調査報告書」全国在宅介護支援センター協議会

[6]労働科学研究所(1999)「在宅介護支援センターの地域ネットワークの形成等に関する調査 研究報告書」.3 176

[7]藤原苗(2000)「在宅介護支援センターのケアマネジメント実践―介護保険の影響による変化と課題―」『関西学院大学社会学部紀要』88,47-57.

[8] 副田あけみ(1999)「在宅介護支援センターのケースマネージメント」中央法規

[9] 原田重樹「介護保険導入後の在宅介護支援センターの機能について〜ソーシャルワーカーの役割を中心に〜」日本社会福祉学会2000年第48回全国大会高齢者保健福祉分科会報告において、愛知、三重、岐阜県での調査によると支援センターのケアマネージャー兼任スタッフは介護保険上のケアマネジメント業務が最優先になり、本来の相談援助、地域活動機能が低下していると指摘している。

[10]根本博司等(1999)「社会的孤立状態にある要介護独居高齢者へのソーシャルワーク実践に関する研究」『研究助成論文集(安田生命社会事業団)』34,152-161.

[11]藤松素子(2000)「地域生活形成支援システムの現状と課題―在宅介護支援センターの役割を中心に―」『佛教大学社会学部論集』33,91-108

[12] iiiの実態調査では、相談経路は、本人や家族から69.1%、関係機関からの連絡21.5%、相談協力員から3.1%であった。1995年に青森県内で行われた実態調査において、相談経路は、本人や家族から55.3%、関係機関からの連絡33.5%、相談協力員から3.7%であった。大和田猛(2000)「高齢者ソーシャルワークの媒介機能としての相談面接」『愛知県立大学社会福祉研究』1(2)1-25

[13]介護保険制度におけるケアマネージャーの二面性の問題については、吉本光一「介護保険制度における最適給付と最低給付―最低給付への後退に対する歯止めとしての行政課題―」地域公共政策学会第1回研究大会介護保険制度分科会報告、1999年に詳しい。

[14] 福井市介護保険課によるサービス利用60%未満対象者へのアンケート調査(2001年1月)によれば、自分でやれることもありできるだけ自分でやりたい(21%)、生活を考えてなるべく自己負担額を抑えたい(18%)、家族の介護を受けたいから(17%)、家族の介護で十分(12%)という結果であった。

[15] 森川玉枝(2000)「介護保険事業計画はどう策定されたか―自立支援を決めた東久留米市―」『月刊ゆたかなくらし』217,17-23

[16] 財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値をいう。東京都は全国平均でもっとも高い財政力を示しており、東久留米市も近隣都市との比較では低くなる。

(社)東京自治研究センタHP http://www.jca.ax.apc.org/tokyojic/参照

[17] 権利とニーズの関係についてはIfe, Jim(2001)”Human Rights and Social Work-Towards Rights-Based Practice”Cambridge University Pressに詳しい。

[18] 介護保険制度施行後の高齢者の生活実態については、自治労連編(2001)『地域介護調査から高齢者の実像―「高齢者介護に関する住民生活調査」報告書―』萌文社において詳しく論じられている。