開催主旨
有明海環境異変の原因について今までに様々なことが述べられているが、まだはっきりとはせず、したがって環境回復の方策も定まっていない。環境異変の原因として疑われているのが諫早湾干拓事業である。ノリ不作等対策のために水産庁に設置された第三者委員会は、2001年12月に以下の見解を述べている。「諫早湾干拓事業が原因とされている有明海の環境変化の諸事象について、開門調査でその指摘の適否が検証可能か、との観点からその意義を捉えなおすこととした」として、検証すべき事象として6項目をあげている。
(1) 水質浄化機能の喪失と負荷の増大、(2)流動の変化(潮位、流速、流行)、(3)赤潮の増加、(4)
貧酸素水塊の発生、(5)タイラギ、アサリ等の減少、生育不良および稚貝の斃死、(6)諫早湾の底質の変化(細粒子化、浮泥の堆積)と底生生物の減少。
 その後この見解に基づいて2002年4月から5月にかけて潮位差20cmの短期開門調査が実施されて、報告書も公表されている。
 2002年12月には沿環連第8回ジョイント・シンポジウム「諫早湾締め切りが有明海環境に及ぼす影響の検討」が開催されて、潮受け堤防による負荷の増大、貧酸素水塊形成が示され、さらに有明海における赤潮発生機構に関する見解も出された。
 その後約1年が経過して、学会誌への投稿論文などで、有明海の潮位差を引き起こした要因についての潮受け堤防のかかわりやアサリ資源減少要因についてのいくつかの提案があり、有明海環境異変の要因解明は少しずつ進められている。
  有明海の環境異変を回復するためには異変を引き起こした原因を解明しなければならない。本シンポジウムではこれまでに得られた知見についての話題提供と論議によって、環境異変の要因に迫ることを目的とする。