開催趣旨


沿岸域のみならず陸域を含む水域において、底質の環境は一次生産の基盤、分解の場あるいは底生生物の棲家として、極めて重要であるにも関わらず、生態系研究の中でもとりわけ未解明な点が多い対象である。特に底生生物の環境に直接かかわる土砂動態については、多くの課題が残されている。河川及び海岸の土砂動態の物理過程については主に土木工学の分野で研究されてきたが、その目的が主に防災及び利用にあったために、生物環境としての重要な粒径別(ウォッシュロードを含む)の土砂動態特性に関しては十分研究されていない。一方、我国の海岸の底質材料の多くは山地から河川を通じて供給されており、その動態を議論するためには、流域全体を視野に入れる必要がある。最も重要な課題は、河川の土砂が砂利採取やダム、堰によってせき止められた(ダム堆砂)ことによって生じる沿岸への土砂供給量の減少や粒径特性の変化が生態系に与える影響である。特にダム堆砂は、ダムの貯水機能を維持する上で処理しなければならない問題と同時に海岸浸食の根本的対策の観点からも、解決が急がれる課題である。ただし、そこには現状の河川環境への影響を含めた十分な検討が必要であり、細粒分(ウォッシュロード)の環境影響、河床材料の粒径変化、河床変動の防災上の問題など様々な検討課題がある。
 本ジョイントシンポでは、流域から沿岸までの土砂動態が生物生息環境に及ぼす影響について、ダム堆砂を軸に、陸域からの海域への土砂供給変化が生態系に及ぼす影響に着目して、その研究の現状を把握し、今後の課題を明確にしたい。

       

 
→第12回ジョイント・シンポジウム →プログラム