<質問票 1>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
1980年以降、諫早干拓が注目されていますが、
有明湾沿岸およびそこへの流入河川などでは(大きなEVENTではない)小規模であるが無数の工事や地形改変が起きた。
それらが累積的に重なって影響が出ているとすれば、問題の核心は不明のままとなるだろう。
それらの現象は今後も続くので、全体的トレンドとしてはジリ貧にならざるを得ないが(どれほど研究したとしても)。

原因特定できず→対策打てず→このまま続く→?
       ↓            (破たん願望とrealityは違う)
     2001年5月

<回答:佐々木>
現在の認識は小規模工事の累積ではなく、筑後川河口堰、熊本新港及び諫早干拓が問題と考えられていて、
これらと有明海環境変化との関係解明がメインな課題と認識している。

 
<質問票 2>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体

☆内容
農業では、単一の作物を同じ畑で作ると生産量が減るのはよく知られています。
同様に限られた有明海(海水交換率も悪い)で現在のノリの生産量の維持は可能なのでしょうか?
一年間にノリが消費する栄養量と有明海が発生する栄養量のバランスは研究されているのでしょうか?
畑のように閉鎖された環境と違い海は、外海、河川からの補助があるために影響がでることが遅いと思いますし、
回復にも時間がかかるのではないでしょうか?

<回答:佐々木>
農地では肥料や該当作物の影響が残り、輪作障害などが生じるが海では常に海水変換が行なわれているので、
このことを心配する必要はない。
ノリ消費と栄養塩供給のバランスは十分研究されていないが、
毎年ノリが生産されているのを見ると栄養塩は、
今年のように赤潮が発生しなければ、十分と考えられる。

 
<質問票 3>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
1.問題の解決を目指すのであれば、陸上(農地)の研究者・行政を含めたシンポでなければならない。
そうでなければ"犬の遠吠え"になる。
2.この際「学」は研究を進めることになろうが、現地の水産業関係者は負債がたまっており研究者が研究し、
論文を書いている間にも破産する人が多い、その時「学」は状況を「利用している」に過ぎないのではないか。
3.現に潮受け堤防はほぼ完成している、これを考慮すると、次の3案が考えられるであろうか。
@このままとする。漁師の苦境は続く。→破たんへ、農地はOK
A開放する。漁師はいささかよくなるか?農地行政は破たん
B妥協案。切半。 痛み分け案
例)潮受け堤防は存置。干拓予定一部中止 一部の漁師は破たん
                        ↑
                      行政から支援(金)
4.陸小の流入、三池炭鉱のユウドウの掘削による海底地盤沈下、ノリ養殖における網にぬる酸の利用、
これらを総合的に検討しなければ問題の解決はむつかしい。「海だけのシンポ」の限界。

<回答:佐々木>
諫早干拓が農地のためと考えている人は、本当のところほとんどいない。
残された大義名分は防災であるが、調整池方式である必要がなく
農業か漁業かという対立軸は実際には存在しない。

 
<質問票 4>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
5.有明海における漁業生産量はlong-termで変化してきている(数十年スパン)。
これに対し、こと短期間のデ−タをもとに予測を行う手法には疑問される。特に生態がらみの点について。
6「ノリ養殖」→「陸のタンポ」と同じ.過剰な養殖があった可能性はどうか。
網の維持(フジツボは着防止)のため薬剤利用のeffectはどうか
                  ↓
        これが正しいとすると痛み分け案になるしかない

<回答:佐々木>
Long termの調査、予測は必要であるが、現在問題になっているのは、
近年急速に悪化した有明海の環境悪化である。
ノリ養殖が過剰であった可能性はあるが、それが環境悪化の要因とは考えられない。
薬剤の効果の可能性は考えられていて調査する必要はあるか個人的には重要でないと考えている。

 
<質問票 5>

☆対象
○個々の発表   ◎変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
アサリ 堤先生あて

☆内容
・韓国産のアサリがパーキンサスに感染しているようですが、
 アサリの蓄養の処理水等からの影響があると思われます。
 今後、輸入.蓄養の規則等は考えているのですか。

<回答:佐々木>
アサリ輸入により日本のアサリのある部分がパーキンサスに感染しているという情報はあるが、
これが有明海アサリ減少の要因とは考えにくい。

・砂まきの効果が2,3年という事でしたがその原因は?

<回答:佐々木>
提さんの講演では不明であるが、アサリ稚貝への有害物質の存在の可能性が考えられている。

・高密度が稚貝の死因と考えられないか。

<回答:佐々木>
有明海のアサリは高密度ではない。

 
<質問票 9>

☆対象
◎個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体

☆内容
「有明海はにごってあたりまえ、との発言がありましたが
諫早湾排水門の開放では「浮泥のまき上げ外洋への流出が漁業に悪影響を与える」という声もあります。
はたしてそれが本当か「浮泥のまき上げ」は特に悪影響がないのではないか、教えてください。

<回答:佐々木>
通常の有明海浮泥によるにごりは、
栄養塩濃度の調節、ベントス餌料確保その他で有明海生産が寄与していると考えられている。
しかし調整池の泥はN2量が多すぎること(堆積して底生物へ悪影響)、
過多に栄養塩を含み富栄養化の原因ともなる。
しかし、長期的に考えれば、一時の悪影響をがまんして干潟の再生を実現した方が良いと考えている。

 
<質問票 11>

☆対象
○個々の発表   ◎変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
物理要因として潮汐や潮流の振幅、流速の減少が云々されているが
量的により大きく作用しているものとしては海面の上昇が特に最近数年間異常に高まっていることの方が
干潟の減少に大きく作用していると思います。
また有明海における最近の水温の異常な上昇も大きな影響があると思はれますが
こちらの方への観点薄いと思われます。(海面上昇はほぼ全体的な現象)

<回答:佐々木>
このことは物理関係者は気づいていて検討課題のひとつとしている。

 
<質問票 12>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
問題となる現象が起きてから研究が始まることをどなたも指摘されると思いま
すが、沿岸環境の長期モニタリングステーションを設けている動きはないでし
ょうか?森林生態学の分野では行われているようですが

<回答:佐々木>
おっしゃる通りで、とくに有明海の環境研究はほとんどがノリのためのもので、
有明海全体の海洋生態系を把握するモニタリングはほとんどありませんでした、
今回のことを契機にモニタリングが継続することを期待します。

 
<質問票 13>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ◎再生に向けて   ○全体
☆内容
物質循環の上からは二枚貝による有機物の分析、再生が最重要テーマと考えられるが
そのための改善、施策についてご意見をいただきたい。
覆砂の有効性、その規模、稚貝の放流等々

<回答:佐々木>
覆砂の有効性、稚貝の放流の前に、何故アサリ、タイラギなどの漁獲がなくなったのかの原因解明が必要です。

 
<質問票 14>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ◎再生に向けて   ○全体
☆内容
第三者委員会では水門を閉め切って調査を最近でも1年行うとしています。
@調査を行えば「有明海異変の原因」を特定するデータが本当に取れるのでししょうか?
A「根拠を調査している間に(水門を閉め切って)有明海が助かるものも助からなくなるのでは?
緊急性と重視していないならば、原因を特定する事が出来ない。
調査を続けるよりも、諫早干潟を再生させる手段をとる(水門を空ける)ことが必要ではないでしょうか?
一般市民はそう考えています。

<回答:佐々木>
水門を開ける前の状態を把握するということだと思います。
しかしこの調査は早急に行って、干潟を再生すべきだと考えています。

 
<質問票 15>

☆対象
◎個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
アサリの繁殖戦略、初期減耗を見込んで膨大な受精卵を放出しているのではないでしょうか?
☆内容
「漁業−アサリ」
アサリ個体群の体長組成で熊本有明地区干潟産とされる10mm前後の個体数が減少しているのですか。
稚貝が少ないとしたら、アサリ採捕の禁止地域を設けるなど貴重な親貝を大量に残すべきです。

<回答:佐々木>
堤氏の報告ではアサリ幼生はそこそこ存在しているのに着底稚貝が少ない、
すなわち親貝が不足しているのではなく、稚貝の成長を阻害しているものがあるということでした。
そうならば親貝を大量に残しても効果は小さいと考えます。

 
<質問票 16>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ◎再生に向けて   ○全体
☆内容
@かつては、諫早湾内でかん流していたがセキ止によって湾の奥行きが浅くなった。
でかん流が有明海全体の流れに取り込まれてしまったこと。
毎日セキ堤の両端から内部に閉じ込まれた汚染海水が毎日放流されていると聞くが
これが本当なら有明海の水産業の壊滅は時間の問題ではないのか。

<回答:佐々木>
簡単には結論づけることはできない

A有明海のノリ不作対策問題で第3者委員会を作る際、水産庁関係者を除外したとのことだが、
このため20年?前に南西海区水研資源部長が有明海全域に亘る一斉調査を指摘した青山恒雄博士等が除外されているのは
納得が行きません。

<回答:佐々木>
個人的には私はそう思います

 
<質問票 17>

☆対象
◎個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
干潟の浄化機能について、環境条件によってもちろん差はあるか、砂質干潟と比べ泥質干潟の方が
浄化機能が高いように見受け荒れるが、フィールド調査からみて、そのように考えてよいか。
そのことは泥質干潟の生物学特性と関係しているように思うが、そう考えてよろしいか。

<回答:佐々木>
砂質干潟の浄化機能はある程度解明されている。泥質干潟についてはほとんど研究されていないので、
今回に泥質干潟の浄化機能の研究を精力的に行なうべきだと考えています。

 
<質問票 18>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
干潟は天然の浄水(化)場といわれていますが、諫早湾干潟の干拓により、
それだけ有明海、特に諫早周辺の浄化能力が低下したことは否めません。
夏期の海水成層期には前以前に低層で嫌気層が発達し、それがベントスの存在に影響を与えている事は明白です。
ノリはアンモニアを非常に嫌います。秋口に底層形成されたアンモニアが充分硝化しないうちに、
ノリ養殖期になり(アンモニアに対しノリより強いと思われる)ケイ藻が先にN源を横取りし、
ノリの生育期にはN不足になったとも考えられます。
東京湾では昔、夏に台風がくると、その年のノリは豊作といわれてきました。
これはアンモニアの硝化が底層までの攪拌で促進された結果でしょう。
水産と有明海の生物との関係をもっと研究する事が必要ではないでしょうか。

<回答:佐々木>
ノリがアンモニアを嫌うということはないと思います、ただアンモニアは高濃度になると毒性があります。
有明海で有毒になるほどアンモニア濃度が高いのかどうか調べる必要があります。

 
<質問票 21>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
参考になる多数のお話しを有難うございました。複合的な要因によってさまざまな問題が発生しています。
解決した様に思えても逃げ水のように次々から問題が発生するだろうと予測します。
そこで英知をつくしたこの学会の意識として具体的改善の仮説を打ち出し何らかの検証を重ね,
経験則をダイナミックに打ち出してみませんか?例え間違えても最高の改善が出来ると思います。

<回答:佐々木>
海洋学会環境問題委員会では原因についての仮説を発表していますが
改善の仮説を出すに至っていませんので、検討してみます。

 
<質問票 21>

☆対象
○個々の発表   ◎変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
サロマ湖のような管理漁業をやっていたらどうだったのでしょうか。

<回答:佐々木>
重要な視点だと思います、そのためには有明海全体を物質循環、生物、漁業とこれを支える流れなどを把握する必要があり、
今日を契機にそのように発展することを希望します。

 
<質問票 24>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
☆内容
今回はノリ養殖不作の原因となった珪藻Rhizocscleniaが、何故卓越したのか?
日照等、通常の植物プランクトンに共通した作用する要因での説明は説得力がない。
もっとも増殖の強い種は別に沢山いる。捕食者(二枚貝、動物プランクトン、小型魚類)といった生物的制御者について、
もっと情報を集め研究を進める必要がある。あと濁りの位置づけが必要。

<回答:佐々木>
難しいが正しい指摘だと思います。

 
<質問票 25>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ◎再生に向けて   ○全体
☆内容
これまでの議論を通じて、有明海の干潟の減少による浄化機能は低下が今日の不作の一因という印章を受けました。
滝川先生の報告の中に各干潟の浄化能の表がありましたがこの計算に従った場合、
かつての諫早干潟の浄化能はどの程度あったと推測されますか?
よく一色干潟の例が出されますが砂干潟泥干潟の違いをどのように計算すればよいのでしょうか?
さらに諫早湾干潟の再生を目指す場合現在干陸化している西工区の復元が重要ですが、
この可能性はどの程度あるのでしょうか?(現在西工区は干陵化し陸生の雑草がおい茂っています)
諫早だけでなく有明海全体で失われた干潟再生の可能性をお示しください。

<回答:佐々木>
泥質干潟の浄化能はまだ未知です、滝川先生の示した脱窒能はあまりに大きいと思います。
有明海調査で泥質干潟の浄化能の解明を最重点課題のひとつとしてもらいたい。

 
<質問票 26>

☆対象 磯部先生、松田先生
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
潮汐及び平均水面が変わると干潟面積などが変わるという話があったが、
河川流入の形状や分析がどのような変化するのが河川と海(特に流れ)の関係はどのように変化するのだろうか

<回答:佐々木>
岩波の科学7月号 宇野木論文に述べられている。

 
<質問票 21>

☆対象
◎個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
  赤潮
☆内容
1)Rhizosclenia inbricataについて諫早湾周辺の漁師の話だと、
今年の1〜3月親指ほどの大きさの塊が諫早湾内、特に潮受堤防付近で多く見られたそうです。
これはRhizosolenia inbricataのマットだったのでしょうか?情報を持っていたら教えてください。

<回答:佐々木>
今年は伊勢湾でもリゾソレンア赤潮でノリが不作とのこと、
しかし有明海では何故大被害となったのかが重要だと思います。

2)夏の赤潮発生のメカニズムとして、底泥の濁流→底層の嫌気化→(栄養塩の回帰増)、
ということが一般的にいわれていますが、この事はまさに諫早湾内の現状と良くあてはまるのではないでしょうか?

<回答:佐々木>
可能性は大きいと思います。

 
<質問票 28>

☆対象
○個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ◎全体
流域の下水道整備と下水処理場の数、規模、処理方法
☆内容
相模川口の下水処理場。排水口付近の水質を簡易キットを使って調査しているが、極端に大腸菌の数が少ない、
塩素処理が影響を推測できるか?そういう視点じゃ研究はされているのですか

<回答:佐々木>
塩素処理が沿岸生態系へ及ぼす影響の調査はないと思います。海にはNaClの型で多量にCl(塩素)があるので。

 
<質問票 30>

☆対象
◎個々の発表   ○変遷と現状   ○再生に向けて   ○全体
☆内容
 滝川
  ↑
・基礎的な物理量(水温・塩分・00分布等(経時変化))を示してほしい。
・潮汐周期より長いスケールの流水はどうなっているか

・のり生産量がアサリの生産量に影響を及ぼすことはないのか
(のりはアサリの天敵?)       ↓
                ツツミ タキガワ両方

<回答:佐々木>
生態学的にはない(両立している干潟が沢山ある)。
ただ両方が一緒にできないので、場所の取り合いはある。