研究とは、何かの問や疑問点を立てて、その問・疑問に対する答えを探求する活動である。
大きく理論研究・方法論研究と、探索的研究・実証的研究の2つの軸がある。これらは問の立て方が異なる。
理論研究:ものごとの理(因果関係等の関係性)を明らかにする研究。現実にすでに存在する現象を解剖し、現象についての理解を深めるのが目的。問は「なぜそうなっているんだろうか」というものになる。
方法論研究:現実に存在する課題に対応するための方法を模索する研究。課題を解決する方法を開発・提案するのが目的。問は「どうすればいいんだろうか」というものになる。ちなみに企業での開発研究は基本的にすべてこちらを志向しており、このため英語ではResearch and Development (R and D)と呼ばれることが多い。
探索的研究:そもそも、まだ問がクリアになっていない状態から問をクリアにすること、あるいは問に対する答えの仮説が立っていない状態から仮説をクリアにすることを目的に、現時点での(抽象的な)問に関する物事を網羅的に・質的に観る研究。創造的・発散的思考と全体把握を志向する。
実証的研究:問に対する答え(仮説)が実際に答えとなるのかを明らかにすることを目的に、対象に対して実験や調査を実施し、各種の科学的手法により仮説を検証する研究。論理的・収束的思考と厳密性・詳細性を志向する。
論文とは、自身がたてた問と、それに対する答えを示すとともに、それが問いに対する答えとして妥当であることを論証する文書のことである。
研究の背景:
まずは、どういう問題を取り上げるのか。その研究を実施しようと思った動機や経緯。個人的な理由でも構わない。自分がなぜそういうことに興味を持ったのかを述べる。
次いで、その研究テーマが「ほかの人もその点に興味があるんだ」「社会的にもその点が問題とされているんだ」といった、テーマの一般性を述べる。(研究の社会的背景)
一般性が高い問題であればあるほど、間違いなく、ほかにも同じ関心ごとをもつ人が存在している。そういう先行研究をレビューして、すでに明らかになっていること・すでに提案されている方法を確認する。そのうえで、まだ明らかになっていない点を指摘する。これが研究の目的にもつながる。(研究の学術的背景)
研究の目的:
自分が研究を通じて、何を明らかにしようとしているのか。何を達成しようとしているのか。これを考えるときには「~~~を明らかにすることを本研究の目的とする」や「~~~というものを開発・提案することを目的とする」といった述語の文に落とし込むこと。
場合によっては、目的が非常に大きく、1つの研究ではその目的をすべてカバーしきれない、目的を完全に達成しようとする場合にはほかのことも研究をしないといけない、ということも起こりえる。その場合には、「研究の範囲」を設定する。
例:「日本人の男女でコミュニケーションのスタイルにどのような違いがあるのかを明らかにする」
このような目的を設定した場合、目的を完全に達成しようと思えば、全年齢帯の人を調査しないといけない。しかし、現実には大学でのゼミ研究では、せいぜい身近な大学生の中での男女の違いしか調べられないだろう。そういう場合には、目的としてはそういうことを目指すが、本研究では特に明らかにするものの範囲として、「大学生の間でのスタイルの違い」という点に絞って研究をする、という言明をする。
研究の意義:
研究の目的とセットになるもので、その目的が達成されると、明らかになった知見、開発されたモノがどういったことに役立つのかを述べる。
研究の方法
その目的を達成するために、どういうったことを行うのか。研究の中で何をやって、その目的を達成しようとするのか、ということ。
研究のスケジュール
ガントチャートを使って研究のスケジュールを描く。重要なことは「〇〇までに~~~という状態になる」という締め切り設定と、「~~という状態に到達するために、・・・ということをする」というタスク設定おきちんと分けておくこと。状態設定だけでとどまる計画が多いが、その状態に到達するために具体的にすべきことまで描いておかないと実際にはなかなか体が動かず、締め切りをずるずると後にずらしてしまい、あとあと苦しむことが多い。
大学での研究は、とにかく「そもそもどうなのか」をキチンと考えていくことが大切。中学や小学校の夏休みの宿題で出されている自由研究のように、思い付きだけで研究してはいけないし、当然のこととして「調査をすること」「実験をすること」が目的になってもいけない。あくまで調査や実験は手段であり、目的とすべきなのは「何かを明らかにする」ということである。また、「明らかにする」という点についても、何かの調査や実験をすると、何かの結果が出てくる。しかしながら、その何かが「価値のあるなにか」でなければ、その調査や実験は失敗と言える。実験や調査では「大きくはこんなことわかるはずだ」という見通しをもって行うはずであるが、その「わかるであろうこと」が本当に価値があるものなのかを批判的に見ていくことが大切。
発表には何かをレスポンスをすること!マナーでもあるし、相手に対して何も返せないと、相手の自分に対する印象が悪くもなる。なので、ゼミ内発表でも必ず発表に対してレスポンスを返すこと!!
以下をよく読んで、論文を書くようにしてください。
段落の中ではその1つの「言いたいこと」を詳細に説明したり,根拠を示したり,例示をしたりといったことを書く。 論文は複数の章で構成され、章は複数の節で構成され、節は複数の項で構成され、項は複数の段落で構成される。つまり段落が論文の最小単位である。意味の塊ごとに段落を区切ることを意識せよ。
日本語は得てして最後に主張が来がちである。なので、一度段落を書いたら、改めてその段落を読み直し、その段落で主張したいことが何かを確認し、それを冒頭に持ってこれるように文を書き直すこと。
「研究の目的」は、あくまでその研究のゴールを述べることであり、研究がゴールに達したかどうかを評価できる物になっていないといけない。従って、基本的に「○○○を明らかにする」という書き方をする。よくあるのは「~~を検討することを目的とする」とする書き方である。検討するのは手段であって、検討することを通じて何を明らかにするのかを書かないといけない。
一つの文に主張は1つだけにするのが基本。
複文(接続助詞を使って複数の文を1つにつなげたもの)になると主張したいことが何かが不明瞭になることが多い。
文章は極力単文で書き、接続助詞ではなく接続詞を使ってつなげていくこと。
一文で200字を越えるような文は、情報を盛り込みすぎであり、上の悪い例にあるような論理構造や主張が不明瞭な文章になっていることが多い。
でないとそれらの図表をどのタイミングで見れば良いかわからない
学生が提出してくる論文を読んでいると、よく「この主語にこの述語はないやろ!」という文や「この文の主語は一体どれやねん!」という文にぶち当たる。そうなっていないかを自身できちんとチェックしながら書いていくようにすること。
接続詞の誤用も頻繁に見かける。以下のリンク先を参考に適切な接続詞を使うように心がけること。
特に、話し言葉だと接続詞を誤用していても前後関係から脳内で正しく意味が受け取られるが、論文という書き物になると、接続詞の誤りは致命的になる可能性がある。
接続詞について (一覧と解説)
よく「~出来る」や「~する事によって」といった形で「できる」や「こと」を漢字で書く人がいるが誤りである。
こういう書き方は間違い:「AにはB、CにはDを行う」。