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地域経済研究所 メールマガジンバックナンバー Vol.4

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      VOL.4/2005.7.26(THU)発行

       MSPゴシック・10ポイントでご覧下さい

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□■目次■□

▽ 特集1 中国の現場(1)

▽ 研究所ニュース

▽ 福井県立大学からのお知らせ

▽ 編集後記

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▽ 特集1 中国の現場(1)

今月21日、中国人民元が2%切り上げられた。中国経済は過去10年間、経
済成長率10%を下回ることなく推移し、2005年上半期も9.5%増と目を見
張るほどの成長をみせている。いまや「世界の工場・市場」と言われ、そ
の結果、世界各国から直接投資が集中し、また、日本企業の生産拠点が移
転することによる空洞化の進展や、中国製品が国際競争力を獲得し、アジ
のみならず、日本や欧米市場において、戦後、日本製品が築き上げた市場
シェアを奪われるのではないか、と懸念する声も台頭した。他にも、軍事
や外交政治における要因なども含まれるものの、こうした中国経済の躍進
伴い抱かれる様々な脅威から、『中国脅威論』が叫ばれたが、2003年以降、
日本経済を回復に向かわせた要因のひとつが中国経済の発展によるもので
あることが一般に認識されることにより、経済における『中国脅威論』は
沈静化した感もみられる。しかし、国際競争力を獲得した中国企業が誕生
し、高等教育を受けたエンジニアが多く輩出される現実などを加味し、依
然として中国を脅威とする見かたもある。そうした中、中国経済や企業事
情を探るため、去る6月末、福井県の企業経営者など26名と共に、上海、
杭州、義烏を視察した。中国に進出した日系及び台湾系の企業、中国系企
業、企業誘致に積極的に取り組む公的機関、計画的な都市形成を推進し確
立しつつある地域などである。そこで、これら企業や公的機関、地域をひ
とつひとつ取り上げ、そこで推進される戦略や取り組みの内容とその特徴
などを、ここで紹介していく。

■上海大金空調有限公司 〜ブランド戦略で勝ち組みに〜

上海市莘荘工業区に上海大金空調有限公司はある。『「世界的企業」「真
の一流企業」の実現をめざして』と高らかに掲げる大阪の住宅・業務用空
調メーカー、ダイキン工業株式会社が資本金70%を出資し設立した中国市
場向けエアコンの生産拠点である。1995年11月に設立、97年3月から本格
的に生産を開始し、現在、売上高400億円、経常利益率20%以上、従業員
1,200名を誇るまでに成長を遂げ、当社の製品は「エアコンのベンツ」と
も評価されるほどである。ちなみに、中国市場におけるルームエアコンの
価格帯は700?4,000人民元と幅が広く、当社の主要製品は最も高い価格帯
にある(1人民元=13.73円、2005年7月23日現在)。

中国では、15年程前までエアコンは存在せず、夏場は扇風機で過ごしてい
たという。
1992年、我が国メーカーでは上海夏普電器有限公司(シャープ)が先駆け
て中国市場にエアコンを投入し、その後、後を追うようにして続々と主要
メーカーが中国市場に参入を果たしたものの、現在、その多くは苦境に立
たされている。そうした中、同業他社と比較して後発的であった上海大金
空調有限公司が、なぜ現在の地位を確立できたのであろうか。その要因に
は多々あるが、そのひとつを挙げるならば、明確な「ブランド戦略」の推
進である。

進出当初、同業他社が家庭用ルームエアコンを中国市場に投入し続けるの
を尻目に、当社は、市場が未開拓であり、また、日本ダイキン工業が得意
とした最先端の天井埋め込み式業務用エアコンの分野に特化させ、大学や
金融機関、著名人などが多く集まる施設へ積極的に製品を納入し、エアコ
ンを売るのではなく、空調システムを売ることによって、ブランドの認知
浸透を図ることに成功した。

そのブランド力を裏付けるものとして、品質に妥協を許さない姿勢を生産
ラインから伺うことができた。購入部品は全数検査を行い、各生産工程に
はチェッカーマンと呼ばれる品質管理者が多数配置されている。徹底した
品質管理のもとに部品投入、アッセンブリー、検品、梱包と順に工程を踏
み、外部からは過剰管理ではないかとの指摘を受けるものの、ブランド力
や品質を維持し続けるためには必要不可欠な取り組みであるため、今後も
この姿勢を貫き通していくという。

同業他社が進出していない市場に特化し、徹底した品質管理によって差別
化を図った当社ではあるが、他にも中国市場における新しいビジネスデル
を構築している。今では、家庭用ルームエアコンの製造販売も行うが、こ
の分野における販売手法は、同業他社が量販店的な大型バイヤーを活用し
ているのに対して、当社は24ヶ所の営業所と約700ヶ所の特約店を活用し
ている。ちなみに、工場内にある研修所において据付工事研修を修了した
者のみが1年間の特約店契約を結ぶことが許され、年間の販売成績や据付
工事技術が基準に達しない場合、翌年は契約を更新しない。そのため、毎
年25%ほどは特約店から外され、この競争原理が、特約店の質の向上に結
びついている。

本来、ルームエアコンの場合、クレームの7割が製品不良、残り3割が据付
不良からなるものだが、ユーザー側の視点に立てば、すべて製品不良から
発生した問題としか認識されず、同業他社がシェア獲得のため、3割のク
レームに目をつぶり、据付技術が未熟な大型バイヤーを活用するのに対し
て、当社は高度な据付技術を習得した特約店が行うため、その3割を軽視
するか重視するかの違いが、ユーザーに与えるブランド力や品質面におい
て大きな格差となり、表面化してきたと思われる。

さらに付け加えるならば、多くの中国進出企業が抱える問題として挙げら
れる代金回収の面においても特徴をみせている。進出当初から、掛売はし
ない、つまり代金の振込みを確認するまで決して製品は納入しないという
現金商売の姿勢を貫き、金銭トラブルを回避しているのである。ブランド
力もなく認知度も低い当初は苦境に立たされたという。しかし、現金商売
が成り立たない市場には魅力がないという認識を持ちながらの進出であっ
たため、品質や先端技術に対して価値を認め、惜しまず金を使う顧客層に
絞り込みをかけ、品質に対する自信とシステムを売るという提案型の営業
スタイルを武器に、優良顧客を徐々に獲得し、彼ら彼女らの口コミ効果も
相まって、現在は多くの優良顧客によって当社は支えられているのである。

つまり、当社の成功要因は、明確な市場・顧客の絞り込み、徹底した品質
管理、リスクを回避した代金回収方法の確立などからなる「ブランド戦略」
の賜物であり、よく言われる、同業他社に追随しての中国進出、単に安価
な人件費を求めての進出、日本市場において役割を終えた製品を中国市場
に投入するといったケースとは異なっており、今後、中国市場進出を目論
む企業にとって、手本となる企業のひとつであろう。

(すぎ)

次回は、中国系金属プレス加工メーカー「上海奥偉集団有限公司」と、台
湾系食品メーカー「杭州頂益国際食品有限公司(康師傅)」を紹介します。

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▽ 研究所ニュース

■報告■

1. 7月12日(火)午後1時30分から第3回地域経済研究フォーラムを開催
いたしました。講師に株式会社林不動産鑑定所代表の林逸男氏をお迎えし、
「最近の県内不動産情勢」をテーマに講演をしていただきました。全国的
に見れば都市圏で地価の上昇が見られる一方で、福井県をはじめとした多
くの地方圏では未だ低迷から抜け出せないでいる現状を大変丁寧に説明し
てくださいました。36名の参加者があり、大変盛り上がったフォーラムに
なりました。

2. 7月13日(水)に2005年度第1回本研究所企画評価審議会が開催されま
した。審議会では本年度の研究所事業が審議されました。なお、本年度の
事業計画につきましては、eメールマガジン5月号(http://www.s.fpu.ac
.jp/fukk/mailmgz/n2.html)をご覧ください。

3. 7月20日(水)午後4時30分より、平成17年度短期ビジネス講座(経営
革新コース)が開講いたしました。本講座は、企業の経営幹部や幹部候補
者を中心としたエグゼクティブ層を対象とした内容となっており、多くの
事例を取り上げそれぞれの抱える問題を討議する中で、自らの企業の経営
課題を認識するとともに、幹部として体得するべき経営手法を習得してい
ただきます。本講座はお盆休みを除く毎週水曜日の開催となっております。
(注;本年度の受講者募集は既に締め切っております)

4. 6月末日をもって本研究所事務の佐野まなみさんが辞められ、後任とし
て7月1日から渡辺かおるさんが就任いたしました。フォーラム等で皆様の
お目にかかることがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたしま
す。また短い間でしたが佐野さん、どうもご苦労様でした。この場を借り
て感謝申し上げます。

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▽ 福井県立大学からのお知らせ

■インターネットによる特許検索の方法を学びませんか■

福井県立大学ではオープンカレッジ事業の一環として、9月3日(土)午後
1:30から『すぐに使える特許電子図書館利用のコツ』―発明・デザイン・
トレードマーク―と題しまして、インターネットによる特許や発明の検索
方法についての講義をおこないます。講師は本学情報センターの田中武之
先生で、場所は本学福井キャンパス第1情報演習室を予定しております。
特許取得を考えている企業の方、特許に興味のある方
などの参加をお待ちしております。

参加を希望されます方は、下記までお申し込みくださいますようお願い申
し上げます。また講義内容の詳細につきましてはホームページ
http://www.s.fpu.ac.jp/openfpu/をご覧ください。

■問合せ・申込み先

福井県立大学 事務局総務課 交流・研究支援グループ
TEL 0776-61-6000 (内1016・1017) FAX   0776-61-6011
E-mail openfpu@fpu.ac.jp

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▽ 編集後記

あの忌まわしい福井豪雨からはや一年、今年もまた熱い夏がやってきた。
このシーズン、我々サラリーマンにとっては、期待に胸が膨らむボーナス
支給時期でもあるが、その支給額をみると、今夏は景気の戻りと併せて、
大企業を中心に復調の兆しがみられたものの、大多数を占める中小企業は、
いまだその恩恵を受けるまでには至っていない。

ところで、本年4月、「中小企業の新たな事業活動を促進する法律」が制
定された。国は、この新法に基づき、それぞれの強みを持ち寄り従来にな
いビジネスを行う中小企業グループを「新連携」事業として認定し、様々
な支援を行う。

具体的には、新たなビジネスモデルで踏み出そうとする中小企業グループ
(「新連携」事業)に対し、最終ステージ、つまり金融や販売支援等を通
じた事業化までをバックアップするもので、任意グループの金融支援に目
を向けた制度であることや、川下重視の実践的支援を目指していることな
ど、中小企業にとって評価に値する施策であることは言うまでもない。し
かし、その半面、全国での年間認定枠が200案件と少なく、この認定枠か
ら推測すると、地方までの支援が十分行き届いた事業内容となるか否かは
疑問の残るところである。これをカバーするには、国家施策としての「新
連携」事業に対し、地域の特色を最大限活かした地方版の「新連携」事業
を、県単位或いは自治体単位で独自施策として打ち出すことが必要となろ
う。

ともあれ、この「新連携」事業がバネとなり、地方圏においても元気印の
中小企業が数多く登場することを期待してやまない。

(なんぼ)

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地域経済研究所メールマガジン

編集長;地域経済研究所長 中山義壽

発 行;福井県立大学地域経済研究所(0776-61-6000 内線6202)

ホームページ;http://www.s.fpu.ac.jp/fukk/index.html

事務アドレス;keiken@fpu.ac.jp

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