========地域経済研究所 eメールマガジン=========

     VOL.52/ 2 0 0 9.7 .31 (FRI) 発行

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 ▽地域商業活性化に関わる商店街の役割とリーダーシップ

 中心市街地の賑わいなどの地域活性化のためのまちづくりで、商店街の
役割が重要であることは異論がないところであろう。商店街活動について
改めて見てみると地域祭事の参加、地域イベント、リサイクルなどの社会
活動等のように広く活動し、地域活性化、地域環境保全などの重要な役割
を果たしている。商店街が社会的存在であるとする見方の背景である。そ
の意味では、町内会や PTAなどのようなボランティア活動である側面を持
っている。ただ、商店街活動はそこに立地する商店にとって結果として売
上に貢献する活動でもある。すなわち商店街が商店街活動として地域社会
活動することは地域住民から支持され、商店を知ってもらうことになる。
特に商店街活動で中心的である共同売り出しは各店の売上増加の相乗効果
を期待するものでもある。このような視点からは商店街は経済組織と見る
べき側面もある。それでも安定的で継続的な地域活性化には魅力ある個店
と商店街が欠かせないのである。
 商店街活性化のためには商店街組織の運営にはリーダーシップと構成メ
ンバーである各店の協働意識が欠かせないのは他のいかなる組織も同様で
ある。ただ、商店街と構成メンバーである各商店の実態は大きな課題を内
在している。また、商店街立地についてみてみると商店経営にとって商店
街に立地していることはメリットがあるはずであるが、商店街立地店舗は
全国的に半数以下である。
 2009年 3月に中小企業庁が商店街のリーダーに関する実態調査結果を発
表した。調査対象の「小売業、飲食業、サービス業の店」(以下商店)は商
店街に加入しているかという設問に対して「加入している」という回答は
42.4%であるのに対して、「加入していない」という回答は56.0%である
 (無回答1.6%)。加入していない理由で最も多いのが「近隣に商店街がな
い」(61.0%)という理由である。半数以上の商店が、加入したくとも商店
街がないのである。次いで「加入するメリットを感じない」(27.4%)であ
る。福井県の調査対象の「加入している」という回答は 30.0 %であり、
「加入していない」という回答は70.0%で、 全国よりも加入していない割
合が高い。理由は全国とほぼ同様である。
 次に、商店街リーダーである。加入している商店街にリーダーがいるか
という設問の回答は、「いる」20.3%、 「いない」29.4%である (ほかに
「わからない」24.6%「不明」25.7%) 。商店街リーダーが「いる」とい
う回答は「いない」という回答より少ない。福井県の調査対象の回答は、
「いる」15.8%、「いない」36.8%で、全国よりも「いない」という回答割
合が高い。
 現在の商店街リーダーの評価についてみると「リーダーシップを発揮し
商店街活動に貢献している」と高い評価をしているのが約半数である。ま
た、「やる気は感じられるものの商店街をまとめきれているとはいえない」
という評価が3分の1である。福井についてはサンプル数からは明確にはい
えないものの、加盟している商店街のリーダーシップについて高い評価が
見られる。
 商店街活動はボランティア活動の要素だけではなく、自らの経営の向上
のために商店街活動により積極的に参加すべきである。商店街活動につい
て役員を「仕方がなく」順番でするのではなく、積極的に関わり、自店の

       現在の商店街リーダーの評価    (単位:)

評価項目

全国

福井

リーダーシップを発揮し商店街活動に貢献している

48.7

80.0

やる気は感じられるものの商店街をまとめきれているとはいえない

33.5

20.0

積極的な活動が見られず、リーダーシップが形骸化している

13.4

0.0

やる気が感じられない

4.0

0.0

その他

3.1

0.0

経営力向上を通じて地域の賑わいに貢献すべきである。よく使う例を挙げ
ておく。ある商店街で「自店の売上が少ないのは商店街が人を呼んでくれ
ないからだ」という会員に対して、商店街のリーダーは「商店街を構成す
るのは個々の店だ。商店街の顧客吸引力が弱いのはあなたの店がだめだか
らだ。商店街に何をしてもらうかではなく、商店街に何ができるかを考え
ろ」という。地域活性化の賑わいは各商店の活性化に他ならないのである。


               (地域経済研究所准教授 小川 雅人)



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