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     VOL.54/ 2 0 0 9.9 .30 (WED) 発行

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 ▽夏季ダボス会議に出席して

 本年9月9日から13日までの日程で中国の大連市で開催された夏季ダボス
会議へ出席してきた。スイスのジュネーブに本部を置いている世界経済フォ
ーラム(World Economic Forum:WEF)は、毎年 1月、スイスの観光リゾー
ト地・ダボスで年次総会を開催しているが、それは通称「ダボス会議」と
呼ばれている。ダボス会議には、世界中の経営者、政治家、学者、ジャー
ナリストなど約 3,000人が出席し、地球上で生起する主要な社会問題や経
済問題について対話と議論を通じて問題認識と解決への糸口を探るとされ
ている。今年 1月のダボス会議には、日本の麻生太郎首相(当時)が出席
して話題となった。
 2007年からは、 WEFの創始者であるクラウス・スクワブ氏と中国の温家
宝首相との共同提案によって夏季ダボス会議が毎年中国で開催されること
になった。第 1回の夏季ダボス会議は、2007年 9月、中国の大連市で、第
2回は2008年 9月、中国の天津市でそれぞれ開催された。第3回は今年再び
大連市で開催されたが、次回以降は、大連市に開催地を固定して開催され
る予定である。
 今回の夏季ダボス会議には、世界80の国と地域から 1,400人あまりが参
加して、「成長に向けた再出発」というテーマを巡って議論が交わされた
(※ 1)。日本からは約80名程度がエントリーしていた。会場に設けられ
た大小会議室では、科学技術と革新、生産と持続可能な消費、金融と投資
などの具体的なテーマについて議論が交わされた。議論自体は英語で行な
われたが、大きな会場には、英語、中国語、日本語、ベトナム語の同時通
訳が準備されていた。同行した株式会社メルコホールディングスの牧誠社
長が果敢にも日本語で討論されたのは、なんとも心地よい響きであった。
とはいえ、日本人の発言は全体から見ればきわめて少数だった。
 印象に残ったのは、 9月10日の開会式で行われた王家宝首相の演説であっ
た。王首相は、「中国は引き続き積極財政と適度な金融緩和政策を揺るが
ず遂行し、パッケージ・プランを全面的に実行に移し、不断に拡充・改善
して、安定した比較的速い経済成長と社会の調和・安定を促していく」
(※2)と強調された。
 とくに中国経済は今後も安定的で比較的順調に成長する見込みであり、
世界経済が低迷する中で、経済成長率 8%の達成は可能であるとの見解を
示した。王首相のゆったりとしてはいるが力強い語り口には他を圧倒する
迫力を感じた。この演説を聞きながら、中国経済の著しい発展を実感した
ばかりでなく、パワフルな指導者を擁していよいよ中国を中心とする経済
圏ができつつあることを改めて感じ取った。
  3日間の会期はあっという間に過ぎ去ってしまったが、国際会議で論理
的にかつ時には激しく力強く討論できる人材が日本にはまだまだ不足して
いて、グローバル時代にあって「国際人育成」という大きな課題を背負っ
ていると感じながら帰国したしだいである。


                 (地域経済研究所所長 上總康行)


※1『21世紀経済報道』2009年9月11日付参照
   (福井県立大学大学院生・李ケイナ訳)
※2 http://j.peopledaily.com.cn/94474/6755048.html



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