経済・経営学関連
経済学部特別企画講座
「経済・経営の地平線」
〜現場の実践を掘り起こす〜
講師 | 経済・経営の最前線で活躍される企業人・研究者・コンサルタント ※講師は毎回変わります |
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日程 |
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時間 | 14時40分〜17時50分 |
場所 | 福井キャンパス 共通講義棟 大教室 |
対象 | 一般 |
定員 | 100名 |
備考 |
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講義内容
先の見えない不況の中でも、高いミッションを掲げて成長する会社があります。元気な経営者がいます。笑顔の組織があります。賑わいの絶えない地域もあります。そのような組織では、経済・経営の知識やスキルはどのように活用されているのでしょうか。これを解き明かしてみたいと思います。
このため、元気企業や新興企業、有力企業の経営者からお話をうかがいます。また、経営者等のお話を的確に位置づけるため、学界や専門家等による講義も入れ込みます。もって、講座全体として受講者と共に考える姿勢に立つのはもちろんとして、どうやって混迷状況の中から抜け出て、いかに生きたらよいかの指針を得る場にしてゆきたいです。学生の皆さん方には、さまざまな意味での現場実践にふれることで知見を広める機会にしてほしいです。講座を実りあるものとするためにも、多くの受講者の積極的参加を期待します。
第1回 現場から学ぶことの意味 5月7日(金)
- ■開講のあいさつ 14時40分
- 北川太一(福井県立大学経済学部長)
- ■オリエンテーション 〜15時00分
- 小倉行雄(福井県立大学教授)
- ■「大学生の学びと現場を結ぶ」 15時00分〜17時50分
- 米山喜久治氏(北海道大学名誉教授)
- 1990年代ソ連圏の崩壊に始まる現代世界の激動は、2010年の中国のGDPが世界第2位になるとか、地球環境問題の深刻化に象徴される。一方、日本は “積極性”はおろか、“自閉化”の傾向すら見せている。現代日本の閉塞感は、明治以降の目標であった欧米先進諸国へのキャッチ・アップを超える新しい目標を確立しえないことに起因するといえよう。
国家や社会レベルだけでなく、個人としての目標設定のためにも、新しい構想が不可欠である。激動する21世紀に生きる人々には、「変化」をその「現場」において正確に把握すると同時に、創造性を発揮して「臨機能動」に適応することが必要とされる。次代を担う大学生であるならば、「世界に開かれた公共空間」である大学で学ぶ機会を活かし、「異質の交流」を進めることが大切である。自らの五感・直観と知的好奇心により、新しい結晶(作品)を作り出す手作業こそ尊い。創造性の地下水脈は、足元に隠れている。
第2回 仕事から現場の意欲を引き出し、世界を広げる 5月21日(金)
- ■「現場の力を日本一引き出す経営」 14時40分〜16時10分
- 山田昭男氏(未来工業取締役相談役)
- 未来工業は電気設備資材という特別な強みを発揮しにくい商品分野を事業領域とする。こうした事業であるにもかかわらず、なぜ未来工業は好業績を上げ続けているのか。それは、社員を「常に考える」モードに持ち込む方策をとり、よそと違うものをつくる。よそと同じことはしない。これを徹底したからである。
こうした行き方は、社員のやる気をださせる数々の独自施策からも窺える。たとえば、未来工業の年間休日は140日であり、年末年始休暇は19連休ある。1日の勤務時間は7時間15分であり、残業はなし。タイムレコーダーはなし、育児休業は3年間で、定年は70歳。社員は全員正社員で、給料は地域平均を大幅に上廻る。営業ノルマや開発納期はない。ホウレンソウは禁止。本社に連絡なしで支店を開設してよい。海外社員旅行には会社が1億円を負担する。講義では、こうした話しを創業経営者から生で聞くことができる。 - ■「仕事をとおして世界が広がる」 16時20分〜17時50分
- 上野嘉蔵氏(日華化学監査役)
- 私は、今から33年前の1977年に大学の経済学部を卒業して大手機械メーカーに就職した。大学は経済学部に入ったのだが、文学の世界にのめり込んでいって、卒論も文学関係のものだった。5年後、周囲の反対を押し切って、機械メーカーから郷里福井の日華化学に転職した。以来、人の採用から人事全般、会計情報システムの構築、子会社の設立や清算、株式上場などの様々なプロジェクトをリード、40代で経営陣の一角に加わり、アメリカの子会社社長も経験した。日華化学の仕事は55歳で一線を後進に譲り、あらたなワークライフバランスにとりかかったところである。
私は特別な専門的技術や資格があったわけではない。これからも普通に仕事ができる身体と漠然とした想いを大切にしていきたいと思う。学生諸君が変化が激しいこの時代環境に適応しながら自分らしい人生を送るため、参考になりそうな話しを紹介したい。
第3回 現場力を引き出す経営、事業創造の経営 5月28日(金)
- ■「現場力を高める社員教育」 14時40分〜16時10分
- 相澤賢二氏(ホンダカーズ中央神奈川会長)
- ホンダカーズ中央神奈川は、自動車ディーラーの世界では顧客満足度の高い会社としてよく知られており、有名な存在である。過去には日本経営品質賞も受賞している。そうした会社をつくりあげたのは、相澤賢二会長の現場力を引き出そうとする倦まずたゆまぬ働きかけに与ることが大きい。たとえば、長年に渡る店舗前道路の清掃活動、社員によるトイレの美化、商談オフィスの快適さの追求、毎月の読書感想文の提出、先輩を後輩の生きた手本にさせる「先輩マニュアル制」、30の項目からなる行動指針の徹底などである。
今回の講義は、普通の能力の社員をいかにしてかけがえのない社員力をもった人材に育て上げるか、奮闘努力の物語に接することができるよい機会になる。 - ■「新しい教育ビジネスの星を目指して」 16時20分〜17時50分
- 平石 明氏(スプリックス社長)
- スプリックスは、新しいかたちの教育ビジネスを志向する企業である。社名は、つまずいている子に「人生の春」をもたらしたいという想いからつけた。1997年に設立し、わずか13年で年商25億5千万円(2009年9月期)の企業となった。
スプリックスの事業の新しさは、読書活動にゲーム性を持ち込み、読書を楽しい営みにしようとする読書教育プログラム「グリムスクール」によく現れている。グリムスクールは、教育産業大手のベネッセと提携したこともあるが、全国で1000教室以上にまで伸びた。日本で最大規模の読書教育プログラムである。他にもスプリックスには、楽しく学べるユニークな教育コンテンツがある。こうしたスプリックスの事業と歩みについて、講義においては、人に依存しがちな「サービス」をいかにマネジメントするか、事業展開でもとめられるフレームワークに力点を置いて紹介してゆきたい。
第4回 企業を見る目の向上が地域を育てる 6月11日(金)
- ■「企業の見方を深めて個人の進路選択に生かそう!」 14時40分〜17時50分
- 松宮利裕氏(シャルマン常務取締役)
- 荘 浩介氏(日本政策投資銀行北陸支店調査役)
- 竹中章浩氏(野村證券福井支店長)
- モデレーター 小倉行雄(福井県立大学教授)
- この講義では、全体的に財務の視点を軸とするが、狭い意味の財務論にはしない。たとえば、財務から見て地域経済や地域産業はどうあったらよいか検討する。あるいは、企業と企業、さらに企業と学生や個人との間でどのような関係性をつくると、より活力のある望ましい地域となるか考察する。
このため、日本政策投資銀行からは、地域産業振興という観点で見た地域産業や企業に関する育成事例の報告を受ける。野村證券には、直接金融の担い手の立場で見た北陸地域の企業特性や、中堅・未上場企業で発展可能性の高い企業について紹介してもらう。講義全体は松宮が統括し、以上の話しに加えて学生として企業を見る目はどのように育てていったらよいのか。そのことと自分のキャリアデザインを描くことが、どうつながってくるか解説する。これにより、学生諸君の漫然とした常識や思い込みを覆す場にしたい。
第5回 企業経営と企業人生から得たもの 6月25日(金)
- ■「一番星を目指して」 14時40分〜16時10分
- 吉野浩行(福井県立大学客員教、本田技研工業特別顧問)
- 福井県立大学の2009年版大学案内を見ると、冒頭に学長メッセージがある。これは、私が個人としても、また半世紀近く勤務した企業ホンダが目指してきたこととも驚くほど酷似している。そのメッセージに則り、いつでもどこでも試練はあろうが熱い想いで前進すれば、未来は拓かれる。このことを私が体験した多くの実例により、若い学生諸君に伝えたい。
講義のキーワードは、次のようなものである。夢、志、高い目標、世界、地球(環境、資源、エネルギー)、社会性(世のため、人のため)、鍛える(レースは技術・人を鍛える道場)、チャレンジ、オリジナリティ、個性、ヒトの能力は無限など。講義ではパワーポイントを使って説明する。 - ■「かわってみせよう!−私の転進物語−」 16時20分〜17時50分
- 大鹿 隆(福井県立大学教授)
- 私の場合、出身大学は東京工業大学工学部が最終学歴です。工業大学ですから、経済学・経営学の教員は1人もいませんでした。1972年卒業当時の就職先は、土木・建築系企業とコンピュータ系企業の求人が多かった記憶があります。コンピュータ・エンジニアになりたかったので、結局住友電気工業という会社に就職してコンピュータセクションに配属、6年間ソフトウェアを作っていました。ところが、28歳のときに中央官庁の経済企画庁(現在内閣府)に出向を命ぜられて、神戸大学経済学部教授から、3年間経済学・経営学の1対1の教育指導を受けました。このときの経験が、民間企業の三菱総合研究所での、24年間のコンサルタントという仕事の基礎になったと思います。
講義のキーワードは、次のようなものです。思考の柔軟性、レベルの高い専門性、自分の性格と友人との感度、グループ研究体制、マン・ツー・マン教育など。講義は吉野客員教授の授業を受けて、私の経験を交えて話しますので、パワーポイントは使わない予定です。
第6回 病院における経営実践から学ぶ 7月2日(金)
- ■「医療サービスの質を向上させる」 14時40分〜16時10分
- 齋藤哲哉氏(福井県済生会病院経営企画課長)
- 福井県済生会病院では、医療サービスの質を向上するために済生会クオリティー・マネジメントシステムを導入している。理念・バリューに共感した組織風土と働きやすい職場環境、継続的な質の改善が行われることにある。システムが動くことで様々な課題が浮かび上がってきた。システム全体の話と課題の一つであった職員満足度を向上させる取り組みについて解説する。
- ■「病院における経営実践を巡って 」 16時20分〜17時50分
- 齋藤哲哉氏(福井県済生会病院経営企画課長)
- 徳前元信(福井県立大学教授)
- 福井県済生会病院の経営実践の意味について、講師とコーディネーターの討論により理解を深める。
第7回 新しい時代を担う産業、新しい経営モデルの追求 7月9日(金)
- ■「観光は国際競争力のバロメーター」 14:40分〜16:10分
- 新町光示(福井県立大学客員教授、日本旅行業協会特別顧問) 14時40〜16時10
- 世界の秩序がかってない規模で変動している中、日本は内向きの議論が多く、ナショナル・コンセンサスも形成されないまま漂流している。物の交流が貿易、通商であり、人と人の交流が観光である。人の交流が旺盛な国は栄え、乏しい国は停滞する。今こそ、日本は再び「開国」の気概で現状を打破すべきである。
- ■「新たな時代を導く電力経営の創造」 16;20分〜17:50分
- 大磯眞一氏(原子力安全システム研究所主任研究員)
- 日本の電力会社は、国際的に見ても大会社であり、基幹産業に属する事業を営む。したがって、電力自由化後の経営環境が厳しいとはいえ、傍目にはその基盤に揺るぎはないかのように見えるであろう。しかし、日本経済を取りまく少子高齢化、人口減少というトレンドに加え、あらゆる分野で市場の飽和化が見られる状況にあっては、電力需要の伸びは期待できず、電力会社の存在基盤も静かに浸食されつつあるといわざるを得ない。
こうした中で、電力会社の新たな方向性を探るには、どうしたらよいか。それは電力事業の特性を深くとらえ、環境状況の適切な読みとりから得られる。電力経営の構造要因をつかみ、環境状況と突き合わせる中で、見えない方向性を浮かび上がらせるのである。こうして、電力会社の新たな方向性として、環境基軸型経営、地域密着経営、需要創造型経営、ブランド価値創出型経営の4つを打ち出す。
第8回 経営的思考法と企業の本質のとらえ方 7月16日(金)
- ■「現場体験から得た企業の本質把握法」 14時40分〜17時30分
- 山口揚平氏(ブルー・マリン・パートナーズ代表)
- 企業の価値は、時価総額などにより表現されることが多い。しかし企業が持つ本当の価値は、株価だけで計れるものではない。それは、技術や人材の価値はもちろんとして、組織として持つノウハウや、組織文化、組織成員の行動の仕方、さらには卓越したマネジメントが生み出す戦略的資源配分の集大成として生み出されてくるものである。これらは数字には表れてこない。
M&Aのプロには、この「目に見えない」価値の本質を見抜く訓練を積むことが要求される。本講座では、カネボウの企業再生などを含む講師の豊富な現場体験を元にし、多くのケースも使い、企業価値の把握の仕方、企業の本質把握の方法について臨場感をもって紹介する。 - ■「講座全体のまとめ」 17時30分〜17時50分
- 徳前元信(福井県立大学教授)
- 福井キャンパス 教育推進課
- 電話:0776-61-6000(代表) 内線 1021
- ファクシミリ:0776-61-6012