(すてきな高齢社会をつくる会会報 NO.7 掲載)
オーストラリアはすでに真夏。こちらの春から高齢者福祉の研究をはじめ、4か月が過ぎようとしています。今回は、この4か月の間で本当に驚いたオーストラリアの高齢者福祉の状況をお伝えします。
最初にこちらのコミュニティーサービスの充実度を知ったとき、この国では日本のように家族が介護する文化がないのだろうなと思いました。ところが、シドニー大学社会政策学部長で高齢者福祉・医療専門のジャネット・ジョージ博士に日本の家族介護の悲惨な現状を話したときに、「オーストラリアでは家族が介護しないと思ってるでしょ?日本と同じように80%以上の高齢者は自宅で家族、親戚等に介護されているのよ。」と言われ、びっくり。さらに「オーストラリア人にとって、自分の家を持ち、住み続け、家族とともに最後を迎えることはもっとも大切なこと。それをどんな人にも可能にすることがコミュニティケアの目的です。」と付け加えられました。
オーストラリアでも20年前は、公的コミュニティサービスがあまり充実しておらず、痴呆または衰弱した老人はナーシングホームに入れられていました。しかし、施設収容型ケアでは高齢者の人権が守られてないという反省から、1985年よりホームアンドコミュニティケアプログラムが国、州政府財源でスタートし、よほど重度介護が必要でない限り最後まで自宅で生活できるよう、様々なサービスが年金のみで十分受けられるようになりました。(オーストラリアは年金は税金より支出。医療は基本的に完全無料)
建国200年あまりのこの若く自由な移民の国に、これだけ家族、親戚、そして地域の絆があるとは想像していませんでした。しかし、この深い絆も、充実した公的サービスがすべての高齢者、介護者に平等な権利として供給されるからこそ、生まれているように思います。
実はもう一つ驚いたことがありました。老人専用病院に日本のように何か月も寝たきりでいる人がいないのです。その理由は次回にお伝えしたいと思います。