在宅介護支援センターの予防的地域福祉機能

〜地域の社会資源としての機能と役割〜

福井県立大学看護短期大学部教授 久常 良

福井県立大学看護福祉学部助手  舟木 紳介

問題の所在

 

 平成2年に創設された在宅介護支援センター(以下「支援センター」と略記)は、平成6年の老人福祉法改正において老人福祉施設として位置付けられ、在宅で生活する高齢者やその家族等からの介護に関する相談に応じ、多様なニーズに対応した各種保健福祉サービスが総合的に受けられるよう、地域の保健・医療・福祉サービス実施機関との連絡調整などを行うことを目的として、平成11年度には約1万ヶ所を目標に(中学校区域を標準として)整備されてきた。さらに支援センターは、中学校区域という小地域で要援護者やその家族に関する状況を常時調査し把握することが容易であり、さらには相談協力員との連携・協力をはじめとして、近隣のボランティア等を含めた小地域ネットワークの形成を図る地域福祉機能持った社会資源としても重要になっていった[i]

 2000年4月の介護保険制度導入に向けて、1998年8月の改正通達(平成10年8月28日老発第550号、厚生省老人保健福祉局長通知)に基づき、各担当地域で個別に機能する支援センターを包括する連絡支援体制として各市町村に1ヶ所の「基幹型支援センター」を基軸とした「単独型支援センター」方式を成文化し[ii]、それまで各支援センターには介護職(看護婦又は介護福祉士)および福祉職(ソーシャルワーカー又は保健婦)の2名を配置基準としていたが、単独型支援センターにおいては1名を介護保険制度上の介護支援専門員(ケアマネージャー)として事業費補助方式に変更される予定である。この政策変更によって支援センターは介護保険において限定された対象者への居宅支援事業機関としての役割を一層強めていくと予想される一方で、これまで区市町村より委託を受け、それぞれの担当地域でのリーチアウトから相談援助へつなげ、的確なサービスに連携していく予防的地域福祉機能が弱まり、支援センターの固有の役割と機能が曖昧になっていく可能性がある。

 今日、介護保険導入に向けて高齢者の在宅福祉サービスについてのニーズや要介護認定に関する研究は、様々な地域で実施されている。支援センターについてもその在宅福祉サービスコーディネート機関としての重要性は指摘され、副田氏[iii]、白澤氏[iv]らによって支援センターのケースマネージメントの方法、援助技術、組織要因についての研究調査が実施された。また全国在宅介護支援センター協議会からは毎年支援センターの運営状況や相談活動状況について数値的調査結果が報告されてきた。しかし、支援センター設立後の10年間において地域住民における支援センターの役割およびその地域福祉機能についての実態調査はほとんど実施されてこなかった。また、全国の約54%の支援センターも各地域の要援護高齢者等の実態調査を実施しているが[v]、対象者はすでに何らかの介護を必要とし、サービスを利用している高齢者が中心であり、高齢者を含めた地域住民全体に対する地域福祉に関する調査や活動は、相談協力員への研修会を除けば、あまり実施されていない。

 

調査の目的

 以上の問題意識に基づき、本研究では、支援センターの公共性の高い社会資源としての予防的地域福祉機能に注目し、在宅福祉サービスコーディネートにおける役割と機能を再検討する。福井県内5か所において地域住民の支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度・理解度調査を通して、@調査項目に対する認知度(認知の度合)に関する要因の発見、A 支援センターに対する理解度(認知の質)に関する要因の発見、B認知度および理解度の要因についての分析を通して新しい要因の推測、に注目しながら、支援センターの地域における役割と機能の現状と課題を探りたい。

 

調査の概要と分析の方法

 調査対象は、地域性、母体組織、社会・人的資源特性などの異なった福井県内の支援センター担当区域5か所において、40歳以上を3段階(40〜64歳、65歳〜74歳、75歳以上)に分け、1地区1段階から30人ずつを選挙人名簿から無作為抽出した計450人である。調査の方法は、郵送によるアンケート調査(期間:1999年10月14日から10月28日)によった。調査対象地域の特徴については表1に示した。調査項目は、在宅介護に関する認知度、支援センターおよび相談協力員の認知の方法、支援センターに対する理解度、対象者の基本属性、介護経験等の計42問である。なお、支援センターおよび相談協力員の認知の方法については、有効回答数が少なく、統計上の差を見ることは困難であったので分析から除いた。調査結果の分析にはSPSS for Windows 7.5を使用した。

 

表1 調査対象地域

(平成11年度高齢者基礎資料調査結果より抜粋)

 

平成11年9月2日現在

 

支援センター名

地理的要因

母体組織要因

人口

高齢化率(%)

一人暮し老人

寝たきり老人

Tセンター(H6)

都市部

特養(社会福祉法人)

 10,952

18.0

115 (5.7%)

35 (1.8%)

Nセンター(H5)

都市部

老健(社会福祉法人)

 22,826

15.0

115 (3.2%)

61 (1.7%)

Mセンター(H4)

農村部

特養(社会福祉法人)

 7,644

23.3

49 (2.7%)

33 (1.8%)

Dセンター(H4)

農村部

老健(医療法人)

 31,571

17.1

194 (3.7%)

327 (6.0%)

Kセンター(H8)

農村部

社協(社会福祉法人)

 3,749

23.0

33 (3.7%)

33 (3.7%)

 

調査結果・分析

1.         対象者の基本属性とその特徴 

 有効回答数は、217(回収率48.2%)であった。性別、年齢階層、居住地区については若干の差はでたが、統計上有効な範囲であったと思われる。主要な結果は以下の通りであった。

@受介護経験者は約5%

 今回の対象者のうち受介護経験者は全体で5.1%と介護経験者(全体平均33.6%)に比べて少なく、その傾向は全地区にみられた。介護経験がある対象者については、統計的有意差はみられなかったが、K地区で44.7%、N地区で38.8%と全体平均より高い率、D地区で20.5%ともっとも低かった。K地区は高齢化率、寝たきり率とも高く、家族介護率が高いのは当然と思われるが、N地区は高齢化率、寝たきり率がもっとも低い一方、D地区は寝たきり率、痴呆性老人率はもっとも高い。

A在住年数は20年以上が84.8%を占めた。

 在住年数5年未満の対象者は全体で2.8%のみであり、D地区、K地区にはいなかった。5年以上20年未満でも9.1%であり、K地区、M地区の割合が他の地域と比較して少ない。

B           独居又は夫婦二人暮しは全体の23.5%

 全体の家族構成では、独居又は夫婦二人暮しは少ないが、地区別家族構成については、特に有意差がみられた。N地区の一人暮し比率は、県平均より低いにもかかわらず、調査対象者の独居又は夫婦二人の割合(42%)がもっとも高かった。統計上一人暮し率のもっとも低いM地区は、今回の調査全体の平均より高い25%を示した。

 

2.         支援センターおよび社会福祉関係施設・機関に対する認知度(表2)

@支援センターの認知度は46.9%

 調査項目中、社会福祉関係施設・機関については、市役所又は役場の認知度が96.2%でもっとも高く、次に特別養護老人ホームが82.9%で高かった。次いで、認知度は保健センター(80.8%)、社会福祉協議会(71.5%)、デイサービス・デイケア(70.0%)ホームヘルプ(67.3%)と続く。支援センターはもっとも低い46.9%であった。

A相談協力員の認知度は33%

 社会福祉関係の人的資源については、民生委員が85.8%で認知度がもっとも高く、相談協力員は福祉委員(43.3%)に続き、もっとも低い33%であった。

 

3.         支援センターおよび相談協力員認知別による認知度(表2)

@支援センター認知者の相談協力員認知度は52.7%

 市役所又は役場および町内会長(自治会長)以外のすべての項目において、支援センター認知別の各施設・機関・サービスの認知度の有意差は顕著であった。

民生委員の認知度は他の項目と比較すると差は小さい。支援センターを知らない対象者の相談協力員の認知度はたいへん低く、15.7%であった。

A相談協力員認知者の支援センター認知度は74.2%

上記の結果と同様の傾向を持ち、市役所又は役場および町内会長(自治会長)以外のすべての項目において、相談協力員認知別の各施設・機関・サービスの認知度の有意差は顕著であった。相談協力員を知らない対象者の支援センター認知度は32.6%であった。

 

表2 支援センター認知別によるサービス認知度(%)(支援センターを知っているか知らないか別)

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体

知らない

知っている又は相談したことがある

 

在宅介護支援センター  

46.9

 

 

 

特別養護老人ホーム   ***  

82.9

67.9

98.0

 

老人保健施設   ***

59.9

39.8

82.8

 

社会福祉協議会  ***

71.5

55.7

88.5

 

デイサービス・デイケア ***

70.0

48.1

92.7

 

ホームヘルプ   ***

67.3

51.9

82.8

 

ショートステイ    ***

52.4

27.8

78.7

 

訪問看護ステーション

53.6

 

 

 

保健センター

80.8

 

 

 

相談協力員  ***

33.0

15.7

52.7

 

民生委員   ** 

85.8

78.0

93.8

 

福祉委員  ***

43.3

29.5

57.1

 

福祉ボランティアグループ 

38.9

 

 

 

市役所又は役場

96.1

96.3

95.8

 

町内会長(自治会長) *

93.1

89.8

96.8

 

上記平均

68.7

54.6

83.6

 

 

4.         基本属性別の認知度

 性別、年齢階層別、地区別、家族構成別、介護経験別、受介護経験別、家族会認知度別にクロス集計を行った。年齢階層、家族構成、受介護経験、家族会認知度については、今回の結果分析では重要と思われなかったので省略する。在住年数別については、20年以上が80%以上であったので結果に統計上の差がでないと思われるため削除した。訪問看護ステーション、保健センター、市役所又は役場、福祉ボランティアグループ、町内会長(自治会長)のいずれの基本属性別においても有意な差はあらわれなかったので結果分析から除いた。また在宅サービス群(デイサービス・デイケア、ホームヘルプ、ショートステイ)、施設サービス群(特別養護老人ホーム、老人保健施設)、人的資源群(相談協力員、民生委員、福祉委員)の平均も結果分析に使用した。結果については表3〜5に示した。

 

@支援センター、在宅サービスについての女性の認知度が高い。

 性別でみた場合、支援センター、ショートスティ、民生委員、福祉委員の認知度について統計的な有意な差がみられた。民生委員を除き、女性の認知度が高かった。在宅サービス群平均について女性が67.4%で男性57.2%より高いが、施設サービス群平均については男性が72.4%の認知度で女性の70.7%より高い認知度を示した。人的資源群において民生委員の男性の認知度が女性より高いが、平均では女性が57.0%で男性の51.3%より高い。

 

A地区別では人的資源群および社会福祉協議会で認知度に有意な差がみられた。

 地区別にみた場合、人的資源群および社協以外では統計上の有意差がみられなかったが、支援センターについては、K地区(52.2%)のみが若干全体平均(46.9%)より高かった。M地区(46.5%)、D地区(46.2%)、T地区(45.5%)、N地区(43.8%)と続く。各地区支援センターの母体施設の認知度は、それぞれK地区(社協93.8%)、M地区(特養82.9%)、T地区(特養67.6%)、D地区(老健65%)、N地区(老健59.6%)の順であった。

 在宅サービス群平均、施設サービス群平均のいずれにおいてもK地区の認知度(74.5%、80.2%)がもっとも高く、T地区の認知度(52.5%、58.8%)がもっとも低かった。D地区の認知度は両群平均(64.3%、75.9%)とも2番目に高かったが、人的資源群平均(67.2%)のみK地区(64.7%)より高かった。社協についての有意差は顕著であり、K地区が93.8%に対して、N地区、T地区は、58.3%、48.5%であった。相談協力員に関しては、D地区、K地区の認知度が高く、N地区の認知度が16.7%と平均の半数の認知度であり、民生委員に関しても同様の傾向があった。福祉委員に関してもD地区、K地区の認知度が高いが、T地区の認知度が25%と低い(平均43.3%)。

 

B介護経験者の社会福祉サービス認知度は高い。

 介護経験別にみると社協以外のすべての項目において有意な差がみられた。有意差がみられたすべての項目において、介護経験がある対象者は経験なしの対象者に比べて高い認知度を示した。支援センターについては経験ありが63.8%、経験なしが38.2%であった。また特に老人保健施設、デイサービス・デイケアについての差が顕著であった。

 

表3 性別にみた認知度(%)#知っている又は相談したことがある

 

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体 (n=217)

男性 (n=96)

女性(n=121)

在宅介護支援センター  *

47.1

38.0

54.3

特別養護老人ホーム

82.9

84.8

81.4

老人保健施設

59.9

60.2

59.6

社会福祉協議会

71.5

72.0

71.1

デイサービス・デイケア

70.0

65.6

73.5

ホームヘルプ

67.3

61.5

71.9

ショートステイ  *

52.4

44.6

58.6

相談協力員

33.0

27.5

37.4

民生委員  *

85.8

91.5

81.4

福祉委員  *

43.3

33.7

51.4

在宅サービス平均

63.2

57.2

67.4

施設サービス平均

71.5

72.4

70.7

人的資源平均

54.4

51.3

57.0

 

表4 地区別にみた認知度(%)

 

 

 

 

 

 

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体 (n=217)

D地区 (n=40)

K地区 (n=48)

M地区 (n=44)

N地区 (n=50)

T地区 (n=35)

在宅介護支援センター  

46.9

46.2

52.2

46.5

43.8

45.5

特別養護老人ホーム

82.9

87.2

91.7

82.9

81.3

67.6

老人保健施設

59.9

65.0

68.8

52.6

59.6

50.0

社会福祉協議会    ***

71.5

83.8

93.8

68.3

58.3

48.5

デイサービス・デイケア

70.0

69.2

83.3

70.7

66.7

55.9

ホームヘルプ

67.3

75.7

76.1

63.4

66.7

51.5

ショートステイ  

52.4

48.7

63.8

46.3

51.1

50.0

相談協力員  *

33.0

47.4

42.6

30.0

16.7

30.3

民生委員    *

85.8

95.0

93.8

81.0

74.5

85.7

福祉委員    *

43.3

57.9

56.8

37.5

36.2

25.0

在宅サービス平均

63.2

64.3

74.5

60.2

61.5

52.5

施設サービス平均

71.5

75.9

80.2

68.4

70.5

58.8

人的資源平均

54.0

67.2

64.7

50.0

42.3

48.0

 

表5 介護経験別にみる認知度(%)

 

 

 

 

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

全体 (n=217)

経験あり (n=72)

経験なし (n=142)

 

在宅介護支援センター  **

46.9

63.8

38.2

 

特別養護老人ホーム     *

82.9

91.3

78.3

 

老人保健施設   ***

59.9

76.5

50.7

 

社会福祉協議会

71.5

77.9

68.4

 

デイサービス・デイケア ***

70.0

88.6

60.6

 

ホームヘルプ    **

67.3

83.8

59.7

 

ショートステイ    **

52.4

68.6

43.7

 

相談協力員  **

33.0

45.6

26.7

 

民生委員     *

85.8

92.9

82.0

 

福祉委員  **

43.3

57.8

36.3

 

在宅サービス平均

63.2

80.3

54.7

 

施設サービス平均

71.4

83.9

64.6

 

人的資源平均

54.0

65.4

48.3

 

 

5.         支援センターについての理解度

 理解度の単純集計および各施設・機関・サービス認知別、地区別、家族構成別にクロス集計を行った。この調査結果については‘わからない’と答えた対象者については分析から除いた。結果を表6、7に示した。

@理解度60%以上は4項目。

支援センターの理解度を15の変数について質問をしたところ、介護者も相談できると思った対象者が74.9%ともっとも多く、福祉用具を紹介してくれる(67.3%)、相談は無料である(66.2%)、在宅福祉サービスを紹介してくれる(65.2%)と続いた。

A24時間相談できると思うが27.7%。

安否確認をする(36.7%)、独立した機関である(30.7%)が40%以下であり、24時間相談できると思っている対象者が27.7%でもっとも低く、思っていない対象者の割合(27.7%)は項目中もっとも高い割合を示した。また全項目についてわからないと答えた対象者も多く、平均すると32.2%わからないと答えている。

B支援センター認知者の理解度は不認知者より高い。

支援センター認知別に理解度をみた場合、各項目にそう思うと答えた割合は、支援センターを知っている対象者は全体の平均で65.8%であり、知らない対象者は平均38.1%であった。またどの項目においても統計的な有意差は顕著であり、他の施設・機関での結果と比較しても有意差は大きい。相談協力員認知者の理解度平均は64.3%で不認知者の理解度平均45.6%より高かったが、統計上の有意差は支援センターよりも少なかった。

C家族構成別および地区別の理解度についての有意差はなかった。

 家族構成別にみた場合、3人以上の世帯構成の対象者が独居又は二人暮し夫婦と比較して、平均して若干理解度が高いが、統計的な有意差はいずれの項目においてもでていない。地区別に理解度をみた場合、D地区、K地区の平均のみが全体の平均理解度よりも高くなっているが、統計的な有意差はない。

 

表6 支援センターについての理解度(%)

 

 

 

 

支援センターは

そう思う

そう思わない

わからない

独立した機関である

30.7

24.8

44.6

相談は無料である

66.2

4.4

29.4

24時間相談できる

27.7

27.7

44.6

在宅福祉サービスを紹介してくれる

65.2

4.4

30.4

行政手続きをしてくれる

48.8

20.9

30.3

福祉用具を紹介してくれる

67.3

6.4

26.2

住宅増改築相談ができる

41.3

17.9

40.8

ボランティアの相談ができる

51.0

10.7

38.3

おおむね65歳以上が相談できる

56.6

19.0

24.4

介護者も相談できる

74.9

0.5

24.6

福祉の専門家が相談にのってくれる

59.1

8.9

32.0

介護の専門家が相談にのってくれる

56.9

9.9

33.2

調査などもしている

40.0

16.0

44.0

安否確認もする

36.3

20.4

43.3

訪問してくれる

55.1

12.7

32.2

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

 

 

 

表7 支援センター認知別でみたセンター機能の理解度(%)

 

支援センターを

全体 (n=217)

知っている人 (n=98)

知らない人 (n=110)

独立した機関である  ***

30.7

41.7

21.8

相談は無料である  ***

66.2

83.3

48.5

24時間相談できる  ***

27.7

40.2

15.8

在宅福祉サービスを紹介してくれる  ***

65.2

86.6

44.6

行政手続きをしてくれる  ***

48.8

59.4

38.0

福祉用具を紹介してくれる  ***

67.3

81.3

54.0

住宅増改築相談ができる  ***

41.3

58.9

24.8

ボランティアの相談ができる  ***

51.0

69.9

33.3

おおむね65歳以上が相談できる***

56.6

61.9

49.0

介護者も相談できる  ***

74.6

89.6

60.4

福祉の専門家が相談にのってくれる  ***

59.1

74.2

44.6

介護の専門家が相談にのってくれる ***

56.9

70.5

44.6

調査などもしている  ***

40.0

53.7

25.7

安否確認もする  ***

36.3

44.8

27.0

訪問してくれる  ***

55.1

71.1

39.8

平均

51.8

65.8

38.1

*** p<.001 **p<.01 *p<.05 (カイ二乗検定の結果)

 

 

 

考察

1.  支援センターおよびその他の社会福祉施設・機関の認知度について

 調査項目中、在宅サービスは施設サービスと比較して認知度が低い傾向にある。特に在宅サービスコーディネートおよび相談業務の中心であるはずの在宅介護支援センターの認知度は低い。しかし、支援センターおよび相談協力員認知別のサービス認知度をみると、在宅サービス、施設サービス、人的資源のいずれにおいても統計上の有意差は顕著であり、他の社会福祉サービスへの連携機関としての役割は大きく、その機能の必要性は高まってきているといえる。一方でデイサービス・デイケアの認知度は、全国の認知度調査結果[vi]と比較すると高い認知度を示しているが、福井県及び北陸地域では在宅で実施するサービスより通所型サービスの利用度が高いことが影響しているものと思われる。また人的資源に関しては、支援センターの認知度が低いと同時に相談協力員の認知度も低い。一方、社会福祉協議会の認知度は比較的高いが、その地域ネットワーク形成の役割を担う福祉委員の認知は民生委員と比較しても相当低い。

 

2.         社会福祉サービスの認知と性差について

 在宅福祉サービスの認知に関して、他の地域における認知度調査においても同様に、今回の調査においても女性の方が男性よりも認知度が高かった。しかし、施設サービスに関しては、男性の方が高い認知を示した。介護経験者のうち女性の割合が高いことを考慮すると依然として在宅介護が女性中心に行われていることが予測できる。

 

3.         支援センターおよび在宅サービス認知要因と地域性について

 支援センターの認知度を地区別にみると統計上の有意差はないが、認知要因としては、地域性そのものよりも母団体の認知度の影響が強いと思われる。支援センターの認知度の地域別順位は、K地区、M地区、D地区、T地区、N地区である一方、母体施設の認知度の順位は、T地区、D地区の順位が入れ替わる以外は同じである。支援センター認知度についてD地区の順位がT地区と入れ替わった理由としてD地区には2つの支援センターがあり、地区割は行っておらず、今回対象となった支援センターとは別の支援センターの認知度がプラスされていることが予想される。

 在宅サービス全体の認知要因についてみてみると、支援センターの認知度同様K地区において認知度が高いが、それ以外は支援センターの認知度とは必ずしも関連がないと思われる。農村部であるK地区、D地区における在宅サービス認知度は都市部であるN地区、T地区より高く、その傾向は施設サービス平均、人的資源平均についても同様である。農村部であり、高齢化率もK地区と同様高いM地区において支援センターの認知度はD地区より高いが、在宅・施設サービス認知度はDK地区より低い。M地区とDK地区の相違点は、社会福祉協議会と人的資源の認知度である。統計的にも社協と人的資源群には有意な差がみられた。その相違がM地区とDK地区の認知度の差を出していると予想できる。

 家族構成別の認知度をみると、独居又は夫婦二人暮しの対象者の在宅サービス認知度が高いが、ホームヘルプについては3人以上世帯の対象者の方が高く、家族構成×地区別でみた場合も統計的有意差はでなかった。また介護経験別みると介護経験者の認知度が高い結果がでており、統計上の有意差が顕著であったが、認知度のもっとも高いK地区の介護経験者率がもっとも高く、認知度のもっとも低いT地区のの介護経験者率がもっとも低いこと以外は、地域別認知度と介護経験者率の関係は少ないだろう。

 

4.         支援センターの業務内容および機能についての理解度とその要因について

 ‘介護者も相談できる’と答えた対象者が74.6%で、各地区別にみても有意差がないことから、在宅介護支援センターのもっとも基本的な機能である相談機能についてはおおむね理解されているといえるが、24時間相談できることへの認知が低いことに課題が残る。その他いくつか高い理解度を示した項目もあるが、特に‘調査などもしている’、‘安否確認をする’という支援センターの予防的地域福祉機能の中心となる項目の理解度が低かった。また、全項目平均32,2%がわからないと回答し、その傾向は地区別にみても大きな差はないと思われる。このことは支援センターの認知が低いということに加えて、その業務内容および機能についての住民の理解も低いことを表している。

 支援センターの認知度と他の施設・機関・サービスの認知度に関係があることは、統計的な有意差が本調査結果で示された。また他の施設・機関に比べて支援センターの認知度が理解度に強く影響していることも分かった。しかし、支援センターと関係が深いと思われる相談協力員の認知度と理解度の関係は、有意差はでているが、項目によっては支援センター認知度と理解度の関係よりもその差が比較的少なかった。一方、支援センターの認知と理解に強い関係があるとしても、支援センターを認知している対象者でさえ、’24時間相談できる’、’独立した機関である’’安否確認もする’に関しては理解度が50%以下であった。特に、’安否確認をする’という支援センターの地域福祉機能の中心となる業務があまり認識されていないことは危惧される結果である。

 また、家族構成別の支援センターの認知度は、有意差はないものの、独居又は二人暮し夫婦の方がそれ以上世帯の対象者よりも10%以上高かった。しかし、理解度の平均を見ると、3人以上世帯が若干高い。つまり、独居又は二人暮し夫婦の対象者の認知度が高いとしても、実際の支援センターの機能や役割についての理解度が高いわけではなかった。一方、支援センターの地区別認知度・理解度についても統計上の有意差がなく、本調査結果の支援センターの認知度と理解度は地域性と強い関連性がないことが考えられる。

 

まとめ

1.         支援センターの認知・理解の現状と地域福祉政策の課題

 本調査結果は、高齢者への在宅福祉サービスコーディネートおよび相談業務の中心であるはずの支援センターの認知度が他の社会福祉施設・機関と比較して低いことを示し、支援センターが地域の公共性の高い社会資源としての役割と機能を未だ十分に発揮していないと考えられる。理解度調査結果をみても、在宅福祉サービス推進においてもっとも重要な地域福祉活動の中心である安否確認や訪問活動が地域住民に十分に理解されていないという現状であった。このことは地域福祉活動の中心である訪問活動を通して、それぞれの担当地域でのリーチアウトからニーズ発掘し、相談援助へつなげ、的確なサービスに連携していくという支援センターの予防的地域福祉機能が達成されていないことを示しているだろう。また、在宅福祉サービスの認知度を地域別に分析すると影響している要因として社協、人的資源が浮かび上がり、在宅福祉サービスの認知において地域福祉機能の重要性が示された。つまり、支援センターの中心的機能である相談援助機能、ネットワーク形成機能、サービス提供機能を地域で向上させるためには、社協、人的資源等の住民認知度増加のためにさらに連携・協力を進め、予防的地域福祉機能を充実させなければならないと考えられる。

 

2.介護保険制度における支援センターの機能と役割変化とその予想される影響

 今回のアンケートの自由記述欄で、多くの高齢者たちは複雑になっていく在宅福祉サービスに対しての困惑と不安を表した。そのような住民の不安を解決するのためにも公共性の高い社会資源として在宅介護支援センターのコーディネート機能が重要になり、特に在宅福祉サービスにおいては地域福祉機能が小地域で十分に発揮されているかどうかが重要な課題になっている。

 しかしながら、2000年4月より導入される介護保険制度において、支援センターの機能と役割は、総合相談窓口事業を中心とした予防的地域福祉型コーディネートから居宅支援事業を中心とした事業型コーディネートへの転換が予想され、在宅福祉サービスコーディネートシステムへの予想される影響は未知数である。そして、介護保険制度上の介護支援専門員(ケアマネージャー)が実施する居宅支援事業は、要援護者への専門的相談援助と母団体サービスの利用者確保という2面性を持ち、支援センターの役割と機能において利用者の権利養護、地域住民の主体形成といった利用者志向の地域福祉機能が予算内でのサービス供給の調整を目的としたシステム志向マネジメントへ変化していく可能性もある[vii]つまり、介護保険制度上の支援センターは、本来の役割と機能の充実のためには予防的地域福祉機能の向上が必要であるにもかかわらず、事業型コーディネートという保険制度上のニーズ発掘に目的が集中し、本来の高齢者の自立および予防するための地域連携の強化やニーズ発掘といった予防的地域福祉機能が低下していく可能性を持っているのである。

 

今後の課題

 本研究では、支援センターの在宅福祉サービスコーディネートにおける役割と機能を再検討を試みるために予防的地域福祉機能に注目した。アンケート調査方式という限界から、実際に介護を必要としている後期高齢者の在宅福祉サービス認知・理解度の実態把握および認知と理解の方法と方向の実態についてのデータは不十分であった。地域住民の支援センターおよび在宅福祉サービスに対する認知と理解について明らかにし、支援センターの役割と機能を検討するためには、認知・理解の度合いだけでなく、その方向性と地域福祉的要因について実態を深く把握するための社会統計学的アプローチおよび質的調査アプローチによる分析がさらに必要であろう。

 また本研究は、2000年の介護保険制度導入直前に実施されたものであり、限定的ではあるが、介護保険制度導入前の支援センターに対する地域住民の認知・理解の変化をタイムリーに把握することができた。今後さらなる支援センターを中心とした社会福祉施設・機関および人的資源についての調査を通して支援センターの地域福祉機能についてより多面的な視点から分析、考察し、在宅福祉サービスコーディネートシステムの再構築につなげたい。そして、あらためてこれまでの支援センターの地域福祉活動の意味やコーディネートの方法および地域住民の認知と理解について、現状と今後の変化を分析、考察することは、今日の高齢者コミュニティケア全体の方向性を探る上でたいへん重要であろう。

 



[i] 全国社会福祉協議会「在宅介護支援センター事業運営の方法」全国社会福祉協議会、1997

[ii] 市町村は、あらかじめ連絡体制の基幹となる支援センターを1ヶ所定めるものとする。ただし指定都市にあっては、2か所以上定めることができる。

[iii] 副田あけみ「在宅介護支援センターのケースマネージメント」中央法規出版、1997

[iv] 白澤正和「ケースマネージメントの理論と実際」中央法規出版、1992

[v] 全国在宅介護支援センター協議会「平成8年度在宅介護支援センター実態調査報告書」、1997

[vi] 在宅サービス3本柱の利用度をみた場合、大都市ではホームヘルプの利用度が高いが、福井などの北陸地方では特にデイサービス・デイケアの通所型サービスの利用度が高い傾向を示している。

[vii] 介護保険制度におけるケアマネージャーの二面性の問題については、吉本光一「介護保険制度における最適給付と最低給付―最低給付への後退に対する歯止めとしての行政課題―」地域公共政策学会第1回研究大会介護保険制度分科会報告、1999年に詳しい。