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ペプチドホルモンを介した細胞間コミュニケーション

動物や植物は、数多くの細胞が集まった多細胞生物として、その生命を維持してます。

我々ヒトの場合、約37兆個の細胞が集まってひとつの個体をつくっています。これらの細胞は、ただ単に寄せ集まっただけの集団ではありません。個体が生命を維持できるよう、細胞同士が、様々な方法で互いにコミュニケーションをとっています。

ひとつひとつの細胞は、しゃべることができません。ではどのようにコミュニケーションをとっているのでしょうか。コミュニケーションの方法は多岐に渡りますが、そのひとつに、ペプチドホルモンとその受容体を介した細胞間コミュニケーションがあります。

何らかの情報を発信したい細胞の核から、ペプチドホルモン前駆体遺伝子の転写・翻訳が起こり、ペプチドホルモン前駆体がつくられます。

ペプチドホルモン前駆体は細胞内器官であるゴルジ体に運ばれ、その中で翻訳後修飾やプロセシングを受けて成熟型となり、細胞の外(細胞間隙・アポプラスト)に放出され、拡散移動します。

ペプチドホルモンは親水性が高いため、脂質できた細胞膜を透過することができません。そのため、細胞膜に存在する膜タンパク質である受容体に結合し、自身の情報を他の細胞に伝えます。

ペプチドホルモンは細胞のことばとして、受容体はことばを聞く耳として機能し、双方が共存する場合、細胞同士のコミュニケーションが成立します。

ペプチドホルモンは様々な種類が知られています。植物では、植物細胞の分裂や分化を正に制御するPSKやPSY1([link][link])、茎頂メリステム活性を制御するCLV3/CLE([link])、窒素飢餓を伝えるCEP([link])、根端メリステム活性を制御するRGF([link])、根の拡散障壁であるカスパリー線形成を行うCIF([link])、花粉管ガイダンスを担うLURE([link])、気孔形成のパターンを制御するEPF1/2やSTOMAGEN([link][link][link])など、植物の生育に不可欠な多彩な機能を有していることが知られています。

また個々のペプチドホルモンを特異的に認識・結合する受容体も続々と同定されており、ペプチドホルモンと受容体のペアを介した細胞間コミュニケーションが、多様かつ重要な機能をもっていることが明らかになってきています。

私たちは、細胞のことばとして機能するペプチドホルモンとその受容体のペアに焦点をあて、分子生物学的、生化学的、および分子遺伝学的手法を駆使し、目にはみえない細胞同士のコミュニケーションを理解することに挑戦します。