情報化農業の課題

 

 

 

世界の課題

圃場生産管理(精密農業)システム

生育予測,肥培管理,農薬散布,作業計画

 

地域生態環境システム

資源管理,リスク管理,環境負荷管理,土地利用

 

先進国と途上国の枠を超えた連携

乱立する情報化農業研究会の統一

 

 

日本の課題

  ひまわりネットの一ノ瀬正輝氏の論点・視点 (§36ミクロとマクロ)につきる.情報化農業を目指した氏の長年にわたる信念と努力が日本の現状を正確に捉え,解決策を提示している.

 

1.農業情報化に当って                  
  
(1) 農業の役割については国民共通の認識があります。
                  
    イ.消費者に安定して食糧を供給すること。
    ロ.農業生産を通じて、その地域の産業振興を計ること。
    ハ.その他、治山、治水、環境保全、教育等々です。

(2)農業と言う産業にコンピュータがどのような役割を果たせるか

    イ.コンピュータの特徴を生かして生産者の所得を向上させる。
    ロ.コンピュータを通じて生産者の意思決定を支援する。
    ハ.その他、生産現場の事務処理を効率化する。

(3)それでは果たして、現場でコンピュータが目的を果たしているか

    イ.メ ッ シ ュ 気 候
    ロ.収  量  予  測 
    ハ.生  育  予  測
    ニ.気象データ・ベース
    ホ.出  荷  予  約
    ヘ.市  況  情  報
    
     私達はその他多くの農業関連のソフトウェアを開発してまいりました。
    しかしながら残念なことに、あまり上手く運用されているとは思えません。

(4)その大きな原因は何か

     一言で申し上げるならば当事者である農家の所得が目に見えて向上してはい
    ない・・・ということにつきます。
    例えば、メッシュ気候というソフトウェアについて言えばメッシュ気候という
    ソフトそのものが開発目的であって、そのソフトウェアから得られた知見を使
    って、例えば大根の生育予測をし、収量を予測し、病害虫の発生を適格に予知
    し、その結果、安定した生産計画が立案され、出荷予測制度が確立され相対で
    の有利販売に結びついて、結果として、農家の所得が向上した・・・という話
    に結びつかなかったからであります。
    決して、メッシュ気候というソフトウェアそのものに誤りがあったわけではな
    く、農家の所得を向上させるための他の多くの要因が未整備である・・・とい
    うことであります。
2.農家の所得を向上させるための要因                  
  
(1)ここで言う農家とは
                  
    ここで言う農家とは一応の目安として以下のように意図して定めます。
    イ.焼畑農業としての自給自足又は芸術的農業は外します。
    ロ.ログハウス等を建設し、消費者と会話しながら地産地消型農業は外します。
    ハ.都市近郊の大型施設機械化農業は外します。
    ニ.花卉等の小規模高付加価値農業は外します。
    ホ.ここで言う農業とは大消費地に大量に安定して系統農協等を通じて生産し、
      供給している主に野菜生産者を指します。

(2)農家の心理のブレが価格を乱高下させている

    イ.野菜価格安定の最大の要因は一定量を一定期間安定して供給すること、こ
      れにつきると思われます。
    ロ.ある野菜がその地域で生産量が一定規模を越えると、そこには必ず庭先集
      荷業者が現れます。
    ハ.生産量がまとまることによって、そこの中央、地方市場には必ず転送業者
      が現れます。
    ニ.生産者はすこしでも高く買ってくれる所に自分の生産物を託します。当然
      のことです。
    ホ.その結果、野菜の価格の乱高下が発生し、それは農家の心理と密接に絡む
      ことになります。

(3)農家の一致団結のための仕組み作り

    イ.一致団結の最大の要因は人であり、参加であり、リーダであり、グループ
      であり、ネットワークであります。
    ロ.その為には農政が信頼されることであり、事業体としての農協が農民から
      信頼されることにつきます。
3. 信頼されるための条件                  
  
(1)改めてコンピュータが果たす役割
                  
    イ.農家台帳の整備
      戸別農家毎に完全にフォロー出来る農家台帳を整備すること。
    ロ.土地台帳の整備
      作物別、栽培面積、品種、作型、播種日、坪調査(定点観測)等であって、
      生育や収量が完全にフォロー出来る土地台帳を整備すること。
    ハ.必要な地点に微気象観測施設を設置すること
      EC、PF、PH、日照、降水量、気温を常時モニター出来る観測施設を
      設置し、病害虫予知、生育予測等のソフトウェアを活用すること。
    ニ.農家自らの意思による出荷予約制度を確立すること
      自らの予約量に対して過多でも過少でも若干のペナルティーを課すルール
      作りが必要でしょう。
    
    FAXやパソコンネットワークを活用すれば「参加と結果」が目に見えて現れ
    ます。

(2) 系統農協のやるべき仕事

    イ.労働力の確保と輪作体形の骨格作り
    ロ.競合他産地の気象や生育の把握による無益なバッテイングの回避
    ハ.価格安定のための中央市場に対する分荷計画と実行
    ニ. 生産技術、新品種情報、消費者情報等の農家へのフィードバック
    以下省略・・・

     

蛇足ではあるが・・・

 

OA化(農協の勘定系や販売事業等の電算化)≠情報化(農業の戦略的意思決定支援システムの構築)を認識すべきである.

情報化を促進するためには,日本独特の慣習を取り払う必要ある.即ち

分野間の障壁解消・産官学の協調体制(意思決定支援システムや生産技術の総合化には欠かせない)

生産者と消費者,世代・男女の連携(ネットワークが有効なコミュニケーション体制作り)

農業者はもちろん,消費者など多くの人々が,コンピュータネットワークに参加できる仕組み(情報インフラ,安価なハードウエア,利用教育)

 

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