農業関係者は情報についてどんな考えをもっているのか.「農業情報利用に関するシンポジウム」における農業者の声をキーワード的にまとめた.日本の農業と,その情報化の意義を理解し,考える材料としてもらいたい.
![]() | 情報社会で重要なこと |
- キー:双方向,自己確立,情報の解釈,情報発信(人〜地球のためにの精神)
- 情報は,組織や制度を超えて公開しないと価値がない.
- 情報を送受信するなかで,自分の考え方,経営の仕方をどう変えていくかが重要
- 情報社会における情報の意義は,自己の成長と変革にある.
- 情報時代には人のため,地域のため,地球のための精神が必要.競争から協同へ.
- 情報化はコンピュータを導入することではなく,双方向通信を可能にすること.情報発信を可能にすること.受信ならCATVで十分
![]() | 情報社会における農業・農村 |
- メディア論から実践へ(電算化ではなく,情報によって農業・農村をどのように変えるか )
- 現在の情報:東京発地方行き,農業論があったとして,それは東京で語る農業論
- 耕作放棄地が全国で21万ha(全耕地の5%)を超えた.これに対して,@医療や娯楽などの水準を都会なみに上げるのか,A都会にないものを重視して魅力ある農村を形成するのか,こんな基本的なところすらコンセンサスがないのが現状.
- 農村と都市の共存・共栄を考える時期:都市の情報化を農村に波及させ,グリーンアメニティを都市にお返しする.このやりとりも,行政的にやるのではなく,フラットなネットワークを使ってこそ実現できる.
- 21世紀の情報社会:都市も農村も,町も田舎も,平地も中山間地も関係ない一つの新しい軸をつくる必要がある.コンピュータネットワークはそれを可能にする.
- 農家が一番欲しがっている情報とは,都会で生活している人が何を考えて,また農業に対してどういう見方をしているかという情報
- 生産者,農業改良普及所,農協,農業試験場,行政,大学が,それぞれの役割を演じながらフラットなネットワークを築く
- グリーンハウスオートメーション:高齢化社会の農業にフィット
![]() | 双方向通信の意義 |
- 情報ネットワークは, 過酷な環境に点在する中山間地農業のキーをにぎっている
- 消費者ニーズをつかむには生産者と消費者との交流しかない.現在は,流通段階やマスコミによって,消費者ニーズができているのでは?
- ヒューマンリレーション,新しい人の輪ができ,新しい活動の場ができる
- 「うちのトマトはこの時期にこのような状態で生長しているが,お前のところではどうか」.この種の情報交換は有効だが,従来農協まかせである.
- コンピュータ通信は,産地直送には有効(直接顔を合わすよりコミュニケーションがとれる.「ミカン届きました.輸送中に一部が崩れていました.」などは直接言いにいけないし,また行っても言えない)
![]() | 農業技術の情報化 |
- 農家が必要とする情報:営農技術情報,生産技術情報,品質・流通・市場に関する情報,農作物災害防止情報(気象を含む),経営分析情報.以上に関する単なる情報と,意志決定支援システムが必要.
- 情報の範囲: 気象情報はアメダスなど広域情報ではなく,自分の圃場や村といった微気象や局地気象情報が必要であり,逆に市況情報は,近隣の市況情報は手に取るようにわかるので,他府県や都会,あるいは国外といった広域の市況情報が必要.
- 情報の解釈:数値情報(データ)から何を読みとるかが重要.問題意識のないとデータからなにも引き出せない.
- データは農家から:農業情報は統計データベース(事例データベース).役所がつくるのではなく,農家の庭先からリアルタイムに発生する(作柄,病虫害等).
- 長い経験と感覚で作物をみる目は重要だが,曖昧なところが多い,その一部を数字で表現(施肥成分や労働日数)し,蓄積して利用できないか.
- 豊富に出る情報は,改良普及所,営農指導者,生産者の代表が議論して貴重な情報に加工する.規則性のあるものについては意志決定支援システムとしていく.
- 事例データベースの知能化が今後の情報社会における重要課題である.
- 農業は人口,食糧,環境,資源,エネルギーの各問題と深く関わっている.篤農家というのは,先祖からの長い歴史のなかで豊富な経験と観察眼をもっている.その知恵と知識を普遍化することは,知能化の過程で重要であり,これは単に農業・農村の問題ではなく,地球と人間の将来に関わる問題でもある.