土の意外な利用法
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〜薬の中に粘土が入っている!〜
胃腸薬の中には“粘土”が入っていて、有毒なバクテリアをくっつけたり、余分な水分
を吸収して下痢を止めたり、胃腸の粘膜を保護する働きがあります。また、特に重要な
働きは、pH緩衝能(ペーハーかんしょうのう)によって過剰の酸を中和することです
成分表には、“メタケイ酸アルミン酸マグネシウム”などと書かれてあり、主に、ベン
トナイト、カオリナイト、モンモリオナイトといった種類の粘土が使われます。
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〜紙の中にも!〜
紙の原料は、木材パルプだというのは有名ですが、パルプ繊維だけで紙をつくると、
表面はザラザラで隙間だらけになってしまいます。そこで、粘土が混ぜられるのです。
粘土は、充填剤(じゅうてんざい)やコーティング塗料として使われます。
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〜化粧品にも!〜
ファンデーションは、粉おしろいに油脂を加えて乳化したものですが、その粉おしろい
に粘土が含まれています。主に、タルクという最も軟らかい鉱物で、ろうそくのような
油脂感と滑らかさをもっています。
また、カオリン粘土を補うことによって、粘り気がでて肌の汗をよく吸収するのです。
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〜どろんこ美容〜
どろんこ美容には、酸性白土という泥を使います。
少し吸着力を弱めた酸性白土に、皮膚の栄養となるオリーブ油・卵・ハチミツ・果物な
どを混ぜ肌に塗ります。すると、粘土が皮膚の表面だけでなく、皮膚の深いところの余
分な脂やゴミを吸い取って、肌をきれいにします。また、粘土が乾いて縮みだすと肌に
強い緊張を与えるので、マッサージ効果もあるということです。
かの美女で有名なクレオパトラもどろんこ美容にはまっていたそうです。
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《pH》
pHとは、酸性とかアルカリ性などを表すもので、数字が小さくなるほど酸性が強くな
り、大きくなるほどアルカリ性が強くなります。
酸は、水に溶けると“水素イオン”を発生します。この水素イオンの数の違いが、pH
の数字の変化に表れます。つまり、数字が小さくなる=水素イオンの数が多くなるほど
酸性が強くなるということです。
(水素イオンが多い)小← →大(水素イオンが少ない)
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酸性 中性 アルカリ性
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《pH緩衝能》
緩衝能とは、読んで字のごとく“衝撃を緩める能力”です。
胃は、塩酸という強力な酸を出して食べ物を溶かします。この酸が出すぎると胃の粘膜
を痛めてしまい、胃潰瘍(いかいよう)という病気になってしまいます。だから、これ
を防ぐために“pH緩衝能”によって酸を中和するのです。
“中和する”とは、酸性を中性にするということです。つまり、多すぎる水素イオンを
イオン交換により、粘土がくっつけて減らしてしまうというわけです。
なぜ、水素イオンの数が多くなる(水素イオンの濃度が濃くなる)ほど、
pHの値は小さくなるのか?
これは、数式で表してみます。
水素イオンの濃度
0.001 mol/l → pH=−log10 =3
↑濃くなる
0.0000001mol/l → pH=−log10 =7
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《イオン交換》
粘土は、永久荷電という性質を持っています。永久荷電とは、粘土の表面が常にマイナ
スの電気を帯びていることです。よって、粘土の表面にプラスの水素イオンがくっつけ
られて、代わりに今まで表面にくっついていたカリウムイオンやマグネシウムイオンな
どのプラスイオンが放されます。
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《木材パルプ》
木材パルプは、アカマツ・クロマツなどの針葉樹やブナ・カバなどの広葉樹を砕き、
煮たり、薬品処理して作られる。
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《充填剤》
充填剤とは、パルプの隙間を充たす粉のことで、白い粘土の粉末が使われる。これに
より、紙の白さや不透明さが生まれる。
☆ 充填剤として使われる紙の中の粘土の量
紙の種類-------粘土の量(重量%)
新聞紙---------0〜5
筆記用紙-------5〜10
画用紙---------10〜15
高級印刷紙-----30〜40
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《コーティング塗料》
粘土を充填した紙の表面に、粘土や炭酸カルシウム・酸化チタンの粉末を、デンプン・
カゼインなどの接着剤と共に塗りたくる。その後、ローラーで圧縮すると光沢を持った
紙が出来上がる。
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《粘土》
製紙用の粘土には、主にカオリン粘土が使われる。カオリン粘土は、微細な六角板状の
みごとな結晶であるカオリナイトが主成分である。
☆カオリン粘土の特徴
@白くて不透明
A化学的にパルプを犯さず、変形・変質しにくい
B比重が小さい
C安価
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《酸性白土》
強力な吸着作用をもつ。
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《吸着》
色素や脂などの有機化合物の分子は、分子の片側が正に、反対側が負に帯電している。
酸性白土中のモンモリオナイトが持っている水素イオン(正)に出会うと、色素分子の
負の側が水素イオンに引きつけられる。