第三回目のプラズマ研究会を来る4月15・16日に神奈川県相模原市の宇宙
科学研究所で行います。第一回目「Lower Hybrid Waves」、第二回 目「Shock
Waves」にひきつづき今回は「Astro Plasma」という主題を予定し ています。いわゆるSpace
Plasmaの業界ではなかなか聞けない興味深い話題を 中心に、われわれの視野を広げるような内容になればと思っております。
世話人
星野真弘(東京大) hoshino@sunep1.geoph.s.u-tokyo.ac.jp
中村匡(福井県立大)tadas@fpu.ac.jp
4月15日〜16日
於:相模原市宇宙科学研究所A棟5F会議室
4月15日 座長:星野真弘(東京大学)
13:00-13:40
寺沢敏夫(東京大学)
宇宙線変調衝撃波の観測的研究
13:40-14:00
杉山徹(東工大)
cyclotron 共鳴なき衝撃波での粒子加速
14:00-14:40
鷲見治一(湘南工科大)
天体プラズマにおけるトロイダル磁場の効果
14:40-15:00
坂野正明(京都大)
銀河中心の高温プラズマの謎に迫る
15:30-16:10
羽田亨(九州大)
ダストプラズマ中のジーンズ不安定性
16:10-16:50
C. Z. Cheng (プリンストン大学プラズマ研究所)
Kinetic Effects on MHD Phenomena in Space Plasmas
16:50-17:30
中村匡(福井県大)
無衝突系の統計力学
〜Lynden-Bellはどこを間違えたのか?
4月16日 座長:中村匡(福井県立大)
09:30-12:30
柴田晋平(山形大学)
宇宙の巨大加速器:パルサー磁気圏
12:30-13:30 昼休み
13:30-16:30
服部誠(東北大)
1 銀河団の熱伝導度抑制の観測的必要性と理論的研究の現状
2 東北大学天文グループで開発した宇宙論的
MHD数値計算コードについて
*)この研究会では時間をとって十分議論することを目的にしてい
ますので、上の時刻はあくまで目安です。
講演者 :寺沢敏夫(東京大学)
タイトル :宇宙線変調衝撃波の観測的研究
概略:
過去20年間は衝撃波による統計的粒子加速機構の基礎理論が確立して広く受け入れられ、さまざまな天体現象へと応用されていった時代であった。一方、被加速粒子(以下、宇宙線粒子=CRと略称)のエネルギー密度が高まり、背景のプラズマ粒子の持つエネルギー密度と同程度かそれ以上となってCR集団が背景場へ及ぼす反作用が無視できない場合(いわゆる宇宙線変調衝撃波
Cosmic-ray-modified shocks、以下、CRMSと略称)の物理は十分理解されているとはいえない。最近の地球周辺での人工衛星観測により、その解明の手がかりとなるデータが得
られた。その例について紹介し、今後の研究の方向を探りたい。
講演者:杉山徹(東工大)
タイトル:cyclotron 共鳴なき衝撃波での粒子加速
大振幅波動中での粒子の運動変化に、サイクロトロン共鳴条件は、必要ではない。この観点から、プラズマ現象を解析してみた。例として、衝撃波近傍にこの非共鳴運動を適用することにより粒子の加速現象が起こることを報告する。粒子は、衝撃波面上に捕捉され、また、頻繁に、上、下流域を往来できるようになることで、加速効率が上がることが見い出された。
講演者 :鷲見 治一(湘南工科大)
タイトル:天体プラズマにおけるトロイダル磁場の効果
概略:
一般に物理量は、密度にせよ磁場強度にせよ、星からの距離が遠くなるほど小さくなる。ところが、トロイダル磁場強度は単に、減少の割合がゆっくりであるというだけでなく、恒星風が衝撃波面通過に伴う恒星風速度の急激な減少にともない、磁場強度の顕著な増大が起きる。これに伴い磁気圧の効果が働き、天体ガス構造に大きな影響を与える。このこと及び関連の問題について、太陽圏及びSN1987Aを例にとり、紹介したい。
講演者:坂野 正明(京都大)
タイトル:銀河中心の高温プラズマの謎に迫る
概略:
我々の銀河の中心領域には、1億度にも達する高温プラズマが、100pc以上の広い領域に亙って広がって存在していることが知られている。その温度、全エネルギーとも、通常の天体物理現象で説明するのは
困難であり、その起源は未だ謎に包まれている。X線衛星「あすか」による近年の観測により、その性質の理解が大いに深まったが、同時に謎も深まった。本講演では、我々の「あすか」による観測結果を中心に、銀河中心高温プラズマの性質を述べ、その起源について議論する
講演者 :羽田亨(九州大)
タイトル: ダストプラズマ中のジーンズ不安定性
概略 :
星の進化・形成を議論する上で、星間ダストの自己収縮であるジーンズ不安定性の議論は重要である。その非常に初期の段階では、もしもダスト粒子周辺にプラズマが存在すれば、系の発展を議論する際に重力だけでなく、負に帯電したダスト粒子間のクーロン力も考慮することが必要となる。ダスト粒子を超粒子として、プラズマを周辺場として扱うハイブリッドシミュレーションの結果をまじえて、ジーンズ不安定性の発展過程を議論する。
講演者:C. Z. Cheng (プリンストン大学プラズマ研究所)
タイトル:Kinetic Effects on MHD Phenomena in Space Plasmas
概略:
Particle kinetic effects involving small spatial
and fast temporal scales can strongly affact the global and long time behavior
of plasmas. Because of the disparate scales of kinetic physics and
MHD phenomena, global scale phenomena are generally studied using the MHD
framework, while microscale phenomena are described with kinetic theories.
Description will be given for the limitation of MHD model and major kinetic
effects on MHD phenomena. A kinetic-fluid model that naturally describes
the coupling between the MHD and microscale physics will be presented.
Specific examples of multiscale coupling space plasma phenomena based on
the kinetic-fluid model will be demonstrated.
講演者 :中村匡(福井県立大)
タイトル:無衝突系の統計力学〜Lynden-Bellはどこを間違えたのか?
概略:
銀河中の星や希薄プラズマなど、ブラソフ方程式で記述される系の統計力学的平衡状態について考える。これについてはLynden-Bellの1967年の理論、いわゆる「Lynden-Bell統計」が有名であるが、のちに指摘されているようにこの理論には多くの不備がある。とくに、平衡状態が初期の位相空間密度に依存するフェルミ分布の重ね合わせになるという、常識に反する結果をあたえる問題は深刻である。
本講演では、E. T. Jaynesの提唱した最大エントロピー原理に基づいて平衡分布が普通のマックスウェル分布であることを示し、Lynden-Bellの理論のどこが誤りかを考える。
講演者 :柴田晋平(山形大学)
タイトル:宇宙の巨大加速器:パルサー磁気圏
概略
表面磁場が1012 G の中性子星が周期十ミリ秒 から数秒で自転しているのがパルサー。終端Lorentz因子が
106 に達すると考えられているパルサー風や1012 eV までの光子のパルスが観測さている。
現在考えられているパルサー磁気圏のモデルを紹介しようと思う。磁気圏には、MHD的にプラズマを加速してパルサー風を作る部分と、沿磁力線電場によって粒子加速する部分が共存しているらしい。しかし実際のところパルサー粒子加速に定説はなく、基本原理にたち戻って研究する余地がたくさんあると思うので多くの方に感心を持っていただけると嬉しい。
講演者
服部誠(東北大)
内容 :
1 銀河団の熱伝導度抑制の観測的必要性と理論的研究の現状
2 東北大学天文グループで開発した宇宙論的MHD数値計算コードについてとそれを用いた宇宙の磁場の起源に関するシミュレーションのpreliminary
results