講演要旨
「有明海の変遷と現状」 座長・日野東大教授
@ 物理環境特性について 滝川熊本大教授
−諫早締め切り以前から有明海の環境は悪化の一途をたどっており、海苔の問題は有明海全体の環境問題として 捉えるべきである。
−既に平成9年に「有明・八代海沿岸域環境研究会」を発足させ有明海再生に取り組んでいる。
A 底生生物の変化 菊池九州ルーテル学院大教授
−有明海の水産生物の変動は基本的に諫早干拓と関係ない。
−底生生物のデータ取得には注意が必要であり、短絡的に生物量の変動を議論すべきではない。
−タイラギを例にとると、諫早締め切りの10年程度前に一旦急激に落ちて、再び上昇し、締め切りの後再び減少した。
 
したがって、減少の原因は基本的に締め切りと関係無い。
−タイラギ、アサリなどの激減の原因を探るためには、生活史のどの段階に問題があるかを突き止めることが肝要である。
B 赤潮発生の状況 板倉氏 水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所
−昨年秋赤潮が発生した。この赤潮の種類は珪藻赤潮でRhizosoleneaである。これが海苔不作の原因と推測される。
−昨年の環境特性は、大雨の後日照、高水温。
−昭和33年に同じ珪藻赤潮が発生し、海苔不作があった。そのときの環境特性は昨年と酷似
−赤潮と海苔不作の因果関係を明確にするためには栄養塩循環の定量的評価が必要。
C 熊本有明地区の干潟におけるアサリの生息状況 堤熊本県立大教授
−この地区はかつて日本のアサリ漁獲の1/4を誇っていた。
−1978年のピーク以後1990年までに激減。
−この地区では埋立も何も開発行為がされていないにもかかわらず、アサリがいない。
−沖の砂を撒くと一時的にアサリが増えるが、3年程度でいなくなる。
−親貝をまくと生き残るが稚貝が死ぬ。

−全く原因がわからない。
D 海苔養殖 藤田長崎大教授
−養殖海苔は歴史的に様々な病気によって不作の年が度々あった。

−その予防策として一つとして「酸処理」が行われているが、それが他の生物に及ぼす影響は不明である。

「有明海の再生に向けて」
第三者委員会の委員として以下の2名の先生から報告があった。−特に新しい情報なし。
@ 有明海の調査と評価の現状 磯部東大教授
A 生態系の再生−物質循環からのアプローチ 松田広大教授

総合討論-「これからの課題と展望」
* 有明海の個々の環境問題を局所的に見るのではなく、湾全体の問題として捉える事が必要、との共通認識。
* 今後
−4省庁「有明海海域環境調査」

−行政対応特研
−関連4県の研究所、水試が中心