沿岸環境関連学会連絡協議会

第1回 ワークショップ

『有明海の物理環境について』

話題提供者から

宇野木先生 外海の潮汐振幅が減少していることも事実であるが、湾口の振幅で正規化すると、湾奥の方が減少している。よって湾内部に振幅減少の原因がある。
大潮時の潮位差で見ると、1990年以後増幅率は一定。M2で 見ると減少している。 環境影響評価書の潮流計算結果(潮流楕円)では、湾央では実測と合っているが、湾奥では実測の方が小さい。干潟部の汀線移動の処理に問題があるのではないか?
湾口振幅で正規化した湾奥の増幅率について、当初4%減と推定したが、2.65%に修正。その内訳は、73%が湾内の地形 変化、27%が外海の潮汐減少。 諫早締め切り前後で大潮時最大流速の変化率が、湾外で23%異なる点がある。
−これは潮汐成分以外の残差流成分(吹送流、密度流)も含まれているので、調和解析を行い、成分ごとに比較する必要がある。単に風や淡水流量の変化による可能性がある。
滝川先生 開境界を湾口よりかなり沖に取らないと、共振周期が実測と合わない。 干潟部の地形、河口部、澪筋などの水深を正確に与えないと実測と合わない。 湾奥の増幅率は2.3%減少。
全体に水位が20cm上がると、増幅率は1.16%減少する。
−磯部先生 東シナ海の水位が1999年まで上昇しており、水位の上昇と増幅率の減少の関係が対応している
柳先生 倹潮所の調和解析データから、大浦(湾奥)では潮汐振幅は2.6%減少。外海(鹿児島、長崎など)では1%減少。
開境界の潮位振幅を1%減少させると、大浦で1.9%減少(質問―線形ではないのか)。
開境界振幅1%減+諫早締め切りで、2.6%減。
北太平洋には20年周期の水位変動がある。これにより東シナ海では10cm程度の水位上昇がある。東シナ海の共振周期の変化により外海の潮汐振幅が減少する。同時に水位上昇により有明海の共振周期も変化し、増幅率を下げる原因になる。
経塚先生 諫早締め切りによって諫早湾湾後部の残差流は小さくなるが、現在の水門も開けると元に戻る。
今後成層の効果を入れた計算が必要である。
上野氏 今日の検討を増幅率(大浦/口之津)で整理すると以下のようになる。
増幅率 計算領域
1.0%    小
   ↑
   大
上野 1.8%
滝川 2.5%
宇野木 2.65% (実測データ)

開境界は滝川先生の設定した程度に湾口から十分離す必要がある。

滝川先生の指摘どおり干潟部、河口部の地形情報が重要である。
今後密度流を含む三次元計算を実施するに当たっては、σ座標系が圧倒的に有利である。
灘岡先生 1960年代から検潮所のデータを解析した。M2の口之津に対する振幅比は1985年以前は上昇、以後減少している。
−(磯部先生 : 外海の水位変化と対応している。)
平均水位は、1970年代前半に高く、1980-85年頃低レベルで推移した後、1985年以降上昇に転じて1995年以降上昇が目立っている。

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