経済学を学ぼう お勧め図書2
■■■現代資本主義を読み解く
1 ダニエル・ピンク
『フリーエージェント社会の到来』〜「雇われない生き方」は何を変えるか〜
池村千秋訳ダイヤモンド社
2002年
米国クリントン政権下で労働長官の補佐官、ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めたダニエル・ピンクが、ホワイトハウスを抜け だして1年間にわたり全米をヒアリング調査して纏めた現代社会論、同時に未来社会論でもある。現在米国には、企業に雇用されない自立して仕事をするフリーエージェントが3300万人に達しているという。これは米国の労働人口の4人に1人に該当する数字である。(個人的には、ピンクのいう「フリーランス/起業家」と「臨時社員」一般を 同次元で括ることはできないと考えるが)
20世紀 、特にニューディール政策以後は、米国社会は「オーガニゼーション・マン」(組織人間)が規範とされたが、21世紀は組織に距離を置く「フリーエージェント」の占める位置が大きくなるという。フリーエージェントとは、組織に雇われない働き方をする人々のことで「インターネットやIT機器を使って、複数の顧客を相手に自宅で働き、特定の企業(組織)に属さず、独立したビジネスを営む一群の人々」のことである。
この背景に、ピンクは以下の4つの重要な変化
(1)従業員が忠誠心と引き換えに会社から安定を保証してもらう関係(終身雇用)の崩壊。
(2)IT機器など生産手段が小型で安価になり、個人で所有できるようになった 。
(3)繁栄により、生活の糧を稼ぐ事だけが仕事の目的ではなくなり、やりがいを求めるようになった。
(4)組織の寿命が短くなり、勤め先の組織より長く生きるようになった。
ことを指摘している。内容は5部構成(19章)で
第1部 フリーエージェント時代の幕開け
第2部 働き方の新たな常識
第3部 組織に縛られない生き方
第4部 フリーエージェントを妨げるもの
第5部 未来の社会はこう変わる
となっている。ところで、ピンクは、「コンピュータが安価になり、携帯型の端末が普及し、どこにいても地球規模のネットワークに接続できるようになったおかげで、労働者は再び生産手段を手にすることができるようになった」記し、これをデジタルマルクス主義と呼んでいる。
資本の原始蓄積、産業革命を経て労働者と生産手段は分離し、労働者は朝に家庭を出て職場(工場)に出、夜に家に戻るというパターンが日常的なものなったが、情報革命のもとで、労働者は安価に生産手段を獲得し、再び産業革命前の状態(仕事と家庭のブレンド)に戻ろうとしているというわけだ。
情報革命がこのような一面を有していることは是認できるが、同時に「資本」がどのようの変貌しているのかも考え合わせて読む必要があるだろう。
読みやすい内容なので、自分なりに「情報資本主義」の意味を考えながら読むといい。