有機物
分
解を担う真核微生物に関する研究
近年、陸上生態系から沿岸
域生態系への物質供給の重要性が大いに注目されています(「里海」という言葉で記憶している方も多いかもしれません)。
河川を通して大量に供給される陸源有機物も重要な要素の一つです。落葉などを起源とするこれらの有機物は、微生物の分解を受けて沿岸域生態系
に組み込まれ、その生物生産に大きく寄与していると考えられています。しかし、これらの陸源有機物がどのように分解され、沿岸域生態系に組み込まれ
て
いるのかについては、十分に理解されているとは言えないのが現状です。陸上生態系においてこのような有機物の分解を行うのは細菌類と菌類(カビ)
であることは皆さんよくご存じだと思います。では海は?海洋生態系では、このような役割を果たす分解者は細菌類のみが注目されてきました。しかし近
年、
陸上生態系におけるカビのような役割を果たす真核微生物(菌様原生生物といいます)の重要性が認識されはじめています。
私たちはその中で、「ラビリンチュラ類」と
いう、陸源有機物の分解を得意としDHAなどを大量に蓄積する真核微生物に注目して研究を行っています。
小浜湾におけるラビリンチュラ
類の動態 小野くん (2008年度卒業生)
小浜湾底泥中における有機物分解者ラビリンチュラ類の動態 稲垣さん (修士1年)
小浜湾に出現するラビリンチュラ類の生理生態学的研究 村上くん (4年生)
水圏ウ
イルスに関する研究
水の中には驚くほど
たくさんのウイ
ルス粒子が存在しています。その量なんと1ccあたり数百万から数億個を以上にな
る場合があります。
「ウイルス」と言うとすごく危険なイメージがあるか
もし
れませんが、実は殆どのウイルスは宿主にできる生物の範囲がとても狭く、
水
の
中のウイルスの大部分が微生物にしか感染できないと考えられています。
私
たちの知っているウイルスの殆どが陸上生態系で進
化
してきたものですが、海洋に地
球で初めての生物が現れたのは今から35-40億年前、
そ
して生命が上陸を果たしたのは約4億年
前だということを考えれば、水圏環境は未知の性質を持ったウイルスの宝庫かもしれません。
事
実、私が研究に携わってきた微生物ウイルス達は、
とて
もユニー
クなものばかりです。
新規アオコ溶藻因子の分離
松尾さん (4年生)
三方五湖に生息する微生物生態系に関する研究
私達の所属する福井県立大学小浜キャンパスはラムサール条約指定湿地である三方五湖に近接しています。
三方五湖は、塩水湖、汽水湖、淡水湖がそれぞれ水路でつながっており、連続した環境勾配が存在する世界的に見ても希少な
研究フィールドです。このような環境に生息する微生物の生態系はどのように繋がり、また独立しているのでしょうか。
少しずつ、調査を進めはじめています。