科学研究費助成事業 研究成果報告 研究種目名:基盤研究(C)(一般)
補助事業期間:平成29年度~平成31年度
介護予防を推進する地域包括ケアシステム構築をめざした公衆衛生看護活動と評価の方法

自助の課題

地域で暮らしている高齢者がその人らしい健康な生活を送るために必要なこと

量的調査対象の概要 n=2,807

項 目 人数
性 別 男性 1,271 45.3
女性 1,536 54.7
年 齢 平均年齢(SD) 75.0(±7.0)歳 
最低~最高年齢 65歳~99歳
前期高齢者 1,400 49.9
後期高齢者 1,407 50.1
家族構成 同居家族あり 2,544 90.6
独居 263 9.4
受療状況 受療あり 2,356 83.9
受療なし 451 16.1
IADL得点 13点満点 677 24.1
12点以下 2,130 75.9
経済的ゆとり ゆとりあり 2,067 73.6
ゆとりなし 740 26.4

主観的健康感と各項目との関連 :χ2検定

  健康群
全 体 74.8%
基本属性 性 別 男性 75.1% 0.815
女性 74.7%
年 齢 前期高齢者 79.7% 0.000
後期高齢者 70.0%
家族構成 同居あり 75.4% 0.044
独居 69.6%
受療状況 なし 94.2% 0.000
あり 71.1%
IADL得点 13点満点 84.8% 0.000
13点以下 71.7%
経済的ゆとり あり 78.4% 0.000
なし 64.9%
社会参加状況 近所づきあい あり 78.1% 0.000
なし 67.0%
友人知人と会う頻度 週に何度か以上 81.1% 0.000
月に何度か以下 70.4%
1か月に会った友人知人の人数 6人以上 82.8% 0.000
5人以下 69.7%
ボランティア活動 している 87.9% 0.000
していない 73.5%
就 労 あり 84.0% 0.000
なし 72.2%
保健介護予防事業 健康診査・検診 受診あり 79.9% 0.000
受診なし 68.8%
健康相談事業 利用あり 82.1% 0.000
利用なし 72.7%
健康づくり事業 利用あり 79.1% 0.008
利用なし 73.7%
介護予防事業 利用あり 81.6% 0.001
利用なし 73.8%
健康習慣実践状況 高実践群 77.3% 0.000
低実践群 60.0%

※高実践群:3つ以上/7、低実践群:2つ以下/7

量的調査

2,807人(回答率60.1%)を分析した。男性1,271人、女性1,536人、平均年齢75.0±7.0歳であり、性別以外の項目と主観的健康感は関連が認められ、社会参加状況の良好群、保健・介護予防事業の利用群、健康習慣の高実践群の方が健康群の割合が高かった。

質的調査対象8人の属性

性 別 男性4人、女性4人
年 代 60歳代2人、70歳代2人、80歳代4人 
家族構成 独居4人、高齢夫婦のみ2人、2世代以上2人
要介護認定の状況 要支援2人、総合事業対象者2人、認定なし2人
いつまでも健康な生活を送るために必要なこと
重要カテゴリー サブ重要カテゴリー
1.健康状態・運動機能の維持 健康の維持・疾病予防
疾病の早期発見
要介護状態の予防
家族の協力
2.認知症の予防・進行予防 日常生活での予防
外出し、人と喋り笑う
介護予防事業の利用
3.仕事を通した健康維持 仕事をすることで健康を維持
仕事をするために健康を維持
4.楽しみ・生きがいをもつ 人との交流
趣味、好きなことを楽しむ
人に役立つ喜ばれることをする
与えられた役割を果たす
5.目標をもって生きる 目標のために健康維持
6.家族が仲良くする 家族と仲良くする
家族の役に立つ
7.仲間と支え合う 家族に代わって支える
辛い時に支え合う
8.健康障害があっても前向きに生きる 自分でできることを増やす
前向きに生きる心の維持

質的調査

「健康状態・運動機能の維持」「認知症の予防・進行予防」「仕事を通した健康維持」「楽しみ・生きがいをもつ」「目標をもって生きる」「家族が仲良くする」「仲間と支え合う」「健康障害があっても前向きに生きる」の8カテゴリーが抽出された。

結論

地域で暮らしている高齢者がその人らしい健康な生活を送るために必要なことは、心身の健康状態を維持・改善するための保健行動や介護予防行動、友人近隣との交流や支え合い、ボランティアや仕事の社会参加は両調査結果に共通していた。加えて、質的調査から楽しみ・生きがいをもつ、目標をもって・前向きに生きることが明らかになった。これらは、他者との関わりの中で可能となることから、高齢者の健康な生活を支援するためには、人とのつながりや交流を促進することが重要だと考えられた。

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